ほとんど顧みられない事実ではあるのですが、1972年のアメリカ・ツアーにおいてローリング・ストーンズは初めてスモール・ギグ、つまり小会場を使ったライブを行っていました。69年のツアーを大成功させたストーンズが72年において、より規模を拡大させたツアーを行うことは必須条件。しかし意外なことに、ツアー序盤においては収容人数が5,000人クラスの会場を使ったスモール・ギグを立て続けに敢行しています。その締めくくりとなった6月9日のハリウッド・パラディアムに至っては3,000人クラス。ここでのギグが懐かしのLP「BURNING AT HOLLYWOOD PALLADIUM」としてリリースされ、ツアー序盤の攻めモードな演奏と小会場らしい盛り上がりに圧倒されたマニアが多かったのではないでしょうか。72年ツアーと言えば「フィラスぺ」や映画「LADIES AND GENTLEMEN」で見聞きできたスピーディーな演奏のイメージが強いのですが、それ以前の荒削りな勢いでギグを行ったストーンズの姿を捉えた隠れ名盤でした。ハリウッド・パラディアムの前でもスモール・ギグが行われており、それが先に触れた5,000クラスのコンサート・ホールだったウインターランドです。この会場はジミ・ヘンドリックスやデビュー当時のZEPなど、フィルモアと並んでそうそうたるアーティストやグループが出演した会場(いわゆるボールルーム)としてロック・ファンにも馴染み深い場所。ただし、会場の大きさからも察しが付くように、スーパースターやスーパーグループが出演する場所ではない。そこへ72年のストーンズが出演したことは、今振り返ってみても十分に特筆すべきことだったのです。彼らとしても、アリーナばかりの大会場ツアーではなく、そうした会場でごきげんなギグを行うことは好ましい事態だったはず。この時のウインターランドでは都合四回のギグが行われました。二日間それぞれで一日二回のライブを行ったのです。しかしチケットの入手が難しいスモール・ギグという性質上、すべての公演の音源が存在している訳ではありません。それどころかウインターランド一連のギグでステージを完全収録しているのは最後のステージである6月8日のセカンド・ショーだけ。その貴重な音源をリリースしてみせたのがVGPの「MIDNIGHT MAGIC」でした。しかし音像的には距離感のあるモノラル音質なオーディエンス録音だったこともあり、大きな話題を呼ぶには至りません。マニア的な見地からすれば、ハリウッド・パラディアム以来となる72年ツアー、スモール・ギグの発掘は歴史的発掘に等しく、本来であれば多くの注目を集めるべき音源だったように思います。おまけにこの日は「Loving Cup」を演奏という、大きなレア・ポイントまで存在します。マニアの間ではよく知られているように、この曲はバンクーバーとシアトルというツアー最初の二日間で演奏された後、一旦セットリストから外されたレパートリー。中でも初日のバンクーバーは世紀の名盤「メインストリートのならず者」収録曲を大フィーチャーしたセットリストとなっていたものです。ここではキースがエレキを弾いていた「Loving Cup」、翌日のシアトルでは彼がアコギに持ち替えています。そのことからも察することができるように、キースはこの曲をライブ・レパートリーとしてどのように扱うか試行錯誤していたのでしょう。非常に魅力的な楽曲だったのですが、残念なことに今回のウインターランドで「Sweet Virginia」に続いて演奏されるアコースティック・ナンバーとして最後のトライを試みたのを最後として、このツアーで演奏されることはありませんでした。他にもメンバー紹介なしで始まる「Bye Bye Johnny」にチャーリーがスティックを落としてしまったのではと推測される「Street Fighting Man」のハプニング。そこでは曲が始まりながらも彼がなかなか演奏に入れず、挙句の果てにはミックまでもがそんなチャーリーに気を取られて歌うのを止めてしまうのですが、これこそストーンズのツアー序盤ならではの場面かと。そして間髪入れずに演奏されてライブの幕を閉じた「Honky Tonk Women」。こちらもバンクーバーではセット前半に演奏された後で姿を消し、このステージから今度はクロージング・ナンバーに昇格して演奏されたもの。他のツアーとは違うアップテンポな演奏が独特な雰囲気をかもしだしていたのですが、これほど有名な曲が72年ツアーでは数回しか演奏されなかったという意外なレア・ナンバーでした。このウインターランドは1973年ヨーロッパ・ツアーと並んで栄光に満ち溢れた時期に行われた貴重なスモール・ギグというだけでなく、ここまで挙げたような聴きどころも満載な音源だと言えるでしょう。今回の限定のプレスCDリリースに際しては、近年新たに登場したバージョンを収録。そこに元音源のジェネレーション表記はなかったのですが、先に挙げた「MIDNIGHT MAGIC」と比べてヒスノイズが格段に減少していたことで今回のリリースと相成りました。そこではヒスが演奏に迫るようなレベルで聴かれたのに対し、今回はすっきり「演奏が聴き込める」状態である違いがとても大きいのです。それがイコライズなどではなく、ジェネレーションの違いから来たアッパーな状態であることは、聞き比べてもらえれば簡単に感じてもらえるでしょう。もちろん元来距離があった音像が近くなるような変化まではありません、その点に関してはスピーカーから鳴らして聴かれることをおすすめしたい音源だと言っておきます。そして「You Can’t Always Get What You Want」ではテープ・チェンジ的なカットが生じていますが、この部分を「MIDNIGHT MAGIC」では見事にエディットしていたのですが、今回はあえてそのままの状態で収録。それによって以前は聴かれなかったテイラーのフレーズもわずかではありますが登場します。マニアであればこの聴きやすさに驚かされることは間違いなし。
Live at Winterland Arena, San Francisco, CA. USA 8th June 1972 (2nd Show) *Upgrade
Disc 1 (49:45)
01. Introduction 02. Brown Sugar 03. Bitch 04. Rocks Off 05. Gimme Shelter 06. Happy 07. Tumbling Dice 08. Love In Vain 09. Sweet Virginia 10. Loving Cup 11. You Can't Always Get What You Want
Disc 2 (32:54)
01. All Down The Line 02. Midnight Rambler 03. Bye Bye Johnny 04. Rip This Joint 05. Jumping Jack Flash 06. Street Fighting Man 07. Honky Tonk Women





























