『WISH YOU WERE HERE』&『ANIMALS』、その2枚のアルバムのスタジオセッションで何が起きていたのか。その現場に立ち会い、空気を直接吸い込んだマスター・カセットの登場です。今回、独自ルートでもたらされたのはスタジオ作業の現場で使われていたという大元カセットの現物。本作は、それをそっくり1音残らず、CDに移し替えた2枚組のスタジオ・アルバムなのです。数年前、この2枚のスタジオデモ/アウトテイク集が登場しており、世界中に衝撃を与えたのも記憶に新しいところ。そちらは完成品アルバムを意識してキッチリと構成されていましたが、本作はまったく違う。スタジオでの作業が生々しく記録されており、曲の体を成していないものや繰り返しの録音もあり、当人達が聴き直すために整えてもいない。まさに“スタジオ録りっぱなしの音”だったのです。では、思いつきフレーズがメモのように並んでいるのかというと、そういうわけでもありません。未完成ながらも、ミックスはされており、各曲はしっかりと分かる……と言うより、既発デモに酷似したテイクも登場する。今回もたらされたマスターと既発デモとの関係は不明なのですが、恐らくは今回のカセットこそがスタジオで回されていた現物ではないかと思われます。既発デモとテイクのダブリは断言は出来ないものの、作業段階、サウンド、演奏があまりにも似たトラックがある。その上で、既発デモにはない音や“間”までもたっぷりと存在している。既発デモより多くても、足りないものが見当たらない。これまた完全に憶測で申し訳ありませんが、このカセットから何者かが完成品アルバムに近い部分だけを抜き出し、それが巡り巡ってデモとして世に出たのではないか………そんな謎解きにまで心奪われる1本なのです。さらに、あまりに生々しくてナチュラルなサウンドからも、“これこそが源泉・出発点”と確信できる。今までのデモ・タイトルは編集痕やイコライジング痕が見受けられましたが、本作にはまるでない。極々うっすらと入るヒスノイズまで40年前の時代感を醸していますし、何よりも一連の流れがあまりにも無編集。公式アルバムに似せていた既発デモとは違い、曲順も現物カセットに封入されていたそのまんまで、思いっきり間が空いたり、同じパートが繰り返されたりもする。スタジオ内の試行錯誤がそっくり再現されるのです。1つ例を挙げるなら、ディスク2の「Dogs」。中間部に差し掛かったところで演奏が終わると、シンセ音の断片やクリック音が挟まりつつ、無音になる。この“断片”や“間”に「ここで何か入れようか」といった思惑や迷いまでもが匂い立つ。メンバーの会話まであれば最上だったのですが、そうでなくても、フレーズ1つひとつ、音の1つひとつ、むしろ無音でさえもがスタジオでの呼吸感を伝えてくれるのです。正直に申しまして、本作は今までのデモ/アウトテイクスほどの音楽的な完成度はありません。むしろ、スタジオ内の空気を現場に居合わせたカセット、ロジャーやギルモアも触れたであろうカセットから蘇らせたマニアックな2枚組です。名作『WISH YOU WERE HERE』&『ANIMALS』が生まれていったスタジオで何が起き、メンバーは何を思っていたのか。本作に詰まっているのは、本来制作に携わった人間にしか触れることの許されない“音”・“息吹”・“匂い”なのです。フロイド研究に生涯を捧げる方々はもちろん、“あのスタジオ”をのぞき見してみたい方にも体験して頂きたい古文書。ロンドンの密室へ、あの名盤たちの現場へ、そっと忍び込む2枚組。
Unissued Alternate Studio Recordings 1975 - 1976: Raw & Unprocessed Versions STEREO SBD(from Original Masters)
Disc 1(44:10)
Wish You Were Here
1. Have A Cigar (partial) 2. Have A Cigar 3. Welcome To The Machine 4. Shine On You Crazy Diamond (Parts 1-8) 5. Welcome To The Machine
Disc 2(48:23)
Animals
1. Dogs (Part 1) 2. Synth/Click/Space 3. Dogs (Part 2) 4. Sheep Sound Effects, Synth/Click/Space 5. Sheep (Raving And Drooling) 6. Pigs (Three Different Ones)





























