「栄光の歴史を締めくくる“真の最終作”」……言い切るには、あまりにも重い命題ですが、そうとでも表現するしかない究極のスタジオ・アルバムの登場です。もちろん、PINK FLOYDの最終作と言えば『THE ENDLESS RIVER』。1993年に行われた『THE DIVISION BELL』セッションから生まれたアルバムですが、大元のアイディアでは『THE DIVISION BELL』と『THE ENDLESS RIVER』は、1つの作品になるはずでした。実際、ニック・メイスンも『THE ENDLESS RIVER』のリリースに際して「私たちは『DIVISION BELL』をダブル・アルバムにしようって考えていたんだ。半分が歌物で、半分がアンビエントのね。『THE ENDLESS RIVER』は、そのアンビエントの方なんだよ」と発言している。この言葉を受け、PINK FLOYDの研究家がチームを組み、「本来の2枚組THE DIVISION BELL」に挑戦し、その研究と情熱が粋となって完成したのが本作なのです(タイトルは「High Hopes」の歌詞“The water flowing / The endless river / Forever and ever”から)。大ざっぱに言えば、本作は「THE DIVISION BELL+THE ENDLESS RIVER」。しかし、ただ単に2枚のアルバムを並び替えて繋げたものではありません。もちろん、2つのアルバム全編こそが主軸ですが、それらを繋げるに当たって様々な材料を駆使。ボーナストラックのオマケテイクや『PULSE』のサウンドスケープ、流出デモ、12インチ・シングルやカセット版の別エディット・テイク、さらには『THE COLOURS OF INFINITY』のサウンドトラック等々……現存する1993年セッションの痕跡をすべてかき集めている。そして、その編集も凝りっ凝り。「6つの組曲」に再構成されているのですが、もちろん無根拠でテキトーに組んでいるのではなく、様々な素材から同じフレーズや類字の効果音を1つひとつ検討し、歌詞を読み解き、様々な発言から意図を汲み取って「オリジナル・セッションのアイディア」を再現しているのです。その研究ぶりは、いわゆる“曲順”のレベルを超えている。冒頭の「Cluster One」からして『PULSE』のサウンドスケープを加え、アルバムより1分以上長くなっていますし、続く「Allons-y」では2014年のオーバーダブのないバージョンを繋ぎ、中間部には(アルバム未使用の)流出音源で拡張しています。また、曲目を眺めてみると「Surfacing」がない事に気づかれると思いますが、これもカットされたわけではない。「Poles Apart」の中間部を取り除き、そこに差し込んで本来の姿を再現。取り除かれた中間部は「Carnival Relations」として新たに再配置されている。その「Carnival Relations」と同じく見慣れないトラック「First In Space」もありますが、これは『PULSE』のサウンドスケープから起こされたもの。その曲名もいい加減ではなく、ツアーTシャツに印刷された「still first in space」のスローガンから採られている……。曲目で目立つ箇所だけご紹介しましたが、これらはあくまでも一例。こうした処理が全編・随所に凝らされていて枚挙に暇がないのです。さらに編集技能も超絶。研究家チームも最初は「並べ替えるだけ」と考えていたようですが、差し替えにあたって欲が出ていったそう。アルバム同士の20年に及ぶサウンド差を埋め、流出音源ではズレていたピッチを宇宙船のランデブーのごとく精緻に揃えていく……。その結果、繋ぎ目がどうこうなどという次元を超えて「完成品」としか聞こえない仕上がりになっているのです。どうやら、作業を担当したのはLED ZEPPELINの『THE SONG REMAINS THE SAME EXPANDED』を創り上げたマニアのようですが、繊細なスタジオ録音でもここまでやるとは……。全霊の敬意を込めて「偏執狂」と呼ばせて頂きたい完成度です。そうして完成した「6つの組曲」から成る2枚組は、『THE DIVISION BELL』『THE ENDLESS RIVER』とはまた別の次元、別の音楽世界。アンビエントな曲は『THE DIVISION BELL』のヴォーカル曲に一層の“深み”・“流れ”を加え、『THE ENDLESS RIVER』の世界はヴォーカル曲によって“核”を得ている。同じセッションから生まれた曲・フレーズたちが“新たな物語”を語り、違う音楽世界を魅せてくれるのです。世界にその名を轟かせる研究家がチームを組んで実現した“本来、こうなるはずだった2枚組『THE DIVISION BELL』”。「本当に本来通りか?」の命題は浅学非才の身には測りかね、皆さまの慧眼におすがりするより他にない。しかし、それでも間違いなく分かるのは、本作に注ぎ込まれた研究心の厚さ、探求心の深さ、熾烈なまでの作業量。冒頭に掲げた「PINK FLOYDの“真の最終作”」はあまりに畏れ多い言葉ですが、それ以外に表現しようのない絶世の1本。
Forever and Ever, a mashup of The Division Bell and The Endless River designed to make The Division Bell less radio-friendly and The Endless River less avant garde. It is intended as a true final Pink Floyd record, an alternate reality version of what should have been released in 1994.
Disc 1(63:35)
1. Cluster One 2. Allons-y 1 3. Spring '69 4. Allons-y 2 5. What Do You Want From Me? 6. Unsung 7. Anisina 8. Poles Apart 9. The Lost Art of Conversation 10. On Noodle Street 11. Night Light 12. Keep Talking 13. Talkin' Hawkin' 14. Lost For Words 15. Calling 16. Eyes to Pearls 17. Wearing the Inside Out
Disc 2(61:52)
1. Take It Back 2. Sum 3. Skins 4. Coming Back To Life 5. First In Space 6. Carnival Relations 7. Louder Than Words 8. Things Left Unsaid 9. Ebb & Flow 10. A Great Day for Freedom 11. TBS9 12. It's What We Do 13. Marooned 14. High Hopes





























