ツアー人生からの引退を表明したポール・サイモン。現在、彼のラスト・ツアーとなる“HOMEWARD BOUND - THE FAREWELL TOUR”が行われています。その現場をレポートする極上ライヴアルバムが登場です。本作に刻まれているのは「2018年6月16日フィラデルフィア公演」。まずは、最後のツアー全容の中からショウのポジションを確認してみましょう。 ・5月16日-6月20日:北米#1(21公演)←★ココ★・6月30日-7月8日:欧州(6公演)・7月10日-15日:英国(4公演)・9月5日-22日:北米#2(11公演) これが現在までに公表されているスケジュール。当初、7月15日のハイドパーク公演が最後とされましたが、その後になって「北米#2」が追加。9月22日のクイーンズ公演がラスト・ショウとアナウンスされています。その中で本作のフィラデルフィア公演は「北米#1」の終盤、19公演目にあたるコンサートでした。そんなショウを収めた本作は、キラめくように美しいオーディエンス・サウンド。手がけたのは現代の名手として話題の「edtyre」氏。彼はポール・マッカートニーやロジャー・ウォーターズ、THE MOODY BLUESの録音が世界的に絶賛を集めた人物で、名機「Schoeps MK41v」による美音に定評のある人物。本作もサウンドボードと間違えるタイプではないのですが、真っ直ぐに届く演奏音はディテールまで克明で、芯もしっかりと逞しい。公式ライヴアルバムよりも少しエコー感を強めたような感覚で、その中を貫く演奏は極めてクリアなのです。そして何より、ポールの歌声。ほんのりとまとった会場音響がしっとりと彩り、深い滋味を醸している。アップテンポでは生声を力強く支え、スローでは深い情感を会場の隅々にまで届ける。繰り返しになりますが、その音響がクリスタル・クリアに透き通っているからこそ、機微が隠されることなく一層倍加するのです。さらに、暖かい臨場感も素晴らしい。現場となった“ウェルズ・ファーゴ・センター”は、約2万人収容のスタジアムで、その空間が沸き立つリアルな感覚。力強い演奏や歌声を遮るようなことはないのですが、長いキャリアの名曲に贈られる惜しみない喝采がわき起こり、2万人がぶ厚いコーラス隊と化す大合唱のスペクタクルが素晴らしい。この旨みは、芯が丸裸のサウンドボードでは決して味わえない。「どれだけラインに近いか」ではなく、「オーディエンスだからこその美」を追及したような気品のサウンドなのです。そんなクオリティで描かれる“HOMEWARD BOUND - THE FAREWELL TOUR”こそが素晴らしい。最後を飾るだけあってソロもSIMON & GARFUNKELも交えた集大成的なステージ。デビューから半世紀を超えるキャリアが走馬燈のようにフラッシュバックしていくのです。おおよそは近年のツアーで演奏されてきた曲が多いのですが、その中で耳を惹くのは、5年ぶりの「Kodachrome」や19年ぶりとなる「Can't Run, But」。特に極めつけなのが「Rene and Georgette Magritte With Their Dog After the War」。『HEARTS AND BONES』の名曲ですが、この曲がステージで演奏されたのは当時以来。実に34年ぶりとなる復活なのです。 最後を宣言した“HOMEWARD BOUND - THE FAREWELL TOUR”。その第一報レポートにして、早くもツアー代表作の呼び声も高い名録音です。半世紀を超えるキャリアを約2時間半・26曲に濃縮したコンサート。その現場を現代の名手が腕によりをかけて記録した美音の銘品です。 Live at Wells Fargo Center, Philadelphia, PA. USA 16th June 2018 PERFECT SOUND Disc 1(71:26) 1. America 2. 50 Ways to Leave Your Lover 3. The Boy in the Bubble 4. Dazzling Blue 5. That Was Your Mother 6. Rewrite 7. Mother and Child Reunion 8. Me and Julio Down by the Schoolyard 9. Rene and Georgette Magritte With Their Dog After the War 10. Can't Run But 11. Bridge Over Troubled Water 12. Wristband 13. Spirit Voices Disc 2(74:32) 1. The Obvious Child 2. Questions for the Angels 3. The Cool, Cool River 4. Diamonds on the Soles of Her Shoes 5. You Can Call Me Al 6. Graceland 7. Still Crazy After All These Years 8. Late in the Evening 9. Homeward Bound 10. Kodachrome 11. The Boxer 12. American Tune 13. The Sound of Silence