なんてこった!まるでサウンドボードみたいなオーディエンス録音じゃないか。思わず叫びたくなるほどの極上ディラン・ライブ音源を初来日公演と同時にリリースいたします。それが1989年6月10日のオランダはハーグ公演。何しろ凄まじいまでにオンな音像。GE・スミスをリーダーとした絶頂期バンドならではの力強いパフォーマンスはもちろん、ディランの歌声も生々しいほどに近い。ただでさえマニアの間で高い人気を誇るGE・スミス在籍時、これまでも1989年の極上ライブ音源をいくつかリリースしてまいりましたが、今回は初夏に行われたヨーロッパ・ツアーの一日を捉えた素晴らしいオーディエンス録音をリリース。もっとも今回リリースされるライブですが、初登場ではありません。1990年代の半ばに「HUNTED (LIKE A CROCODILE)」というタイトルが登場し、その音質と演奏の素晴らしさから高い評価を受けていた一日なのです。海外のファンサイトなどでも「ディランの声が非常に近い」などと絶賛されていたもの。それほど優れた音源ということから、当然の如くアイテムが生み出された訳ですが、それも今や二十年前の話。かろうじて「HUNTED (LIKE A CROCODILE)」の存在は知っていても、実際にそれを聞いたマニアも今となっては少ないのでは。この決定的なアイテムの存在感が強すぎて再発やコピー盤が登場しなかったこともそんな状況に拍車をかけたのではないでしょうか。つまり初来日公演の大阪初日と同じように、90年代に優れたアイテムが生み出されたせいで、それ以降の新たなアイテムが登場しないまま現在に至ってしまったのです。よって今回のリリースは「HUNTED?」以来のアイテム登場となる訳ですが、ここでもオリジナル・マスターを元にしたことから、それを上回るアッパー版のリリースが実現します。確かに名盤の「HUNTED?」ではあったのですが、90年代にリリースされたアイテムの宿命とも言うべき、カセットへのコピーを最低でも一回は経てしまったゆえの劣化が生じており、今回のマスターからの収録ならではの鮮度と比べると見劣りしてしまいます。元々が非常にオンな音像で捉えられたオーディエンス録音ですので、なおさら違いが解りやすい。アナログ・ダビングによってヒスノイズが増えた半面、低域と高域の両方が減退気味なのが「HUNTED?」でした。その点、今回は今から30年近く前にアナログ機材で録音されたとは思えないほど抜群の鮮度とクリアネス、それだけも聞く者を圧倒させます。そしてサウンドボードの域に達しそうなほど近いディランの歌声のバランスには言葉を失ってしまうほど。繰り返しますが今回のリリースに当たっては、ネット上に出回っていながらも近年は入手が難しくなってしまったマスター・カセットからダイレクトにデジタル化したバージョンを元にしていますので状態が抜群に良く、イコライズやピッチ調整の必要すらないという完璧なバージョンです。唯一、手を加えた個所としてはアンコールの「To Ramona」演奏開始時に生じていた音量のムラをアジャストしただけ。こういう音源にこそ「極上」という言葉が当てはまるのではないでしょうか。そして以前からマニアの間で定評のあった演奏は文句の付けようがない。GE・スミス在籍時バンドならではのシンプルで力強い演奏は前年から引き継がれたものですが、ディランがアコギを多用したことからバンド演奏でもいい感じのコントラストが生まれている点がこの時期の魅力で、その最たる例が「Knockin' On Heaven's Door」。ディランが独りアコギで歌い始め、途中からクリストファー・パーカーのドラムを合図としてバンドが加わるというアレンジが効果抜群。おまけにこの日はディスク一枚に収まる長さのショーだったので、一気に駆け抜ける様な演奏も素晴らしい。極めつけは初めてバンドを従えたエレクトリック・バージョンで披露された「Trail Of The Buffalo」。前年のツアーではディランとGEの二人によるアコースティック・バージョンで知られたトラディショナル・カバーですが、89年のステージでは初披露となったこの日、突如としてそれまでにないエレクトリックなアレンジで披露されたのです。非常にスパルタンで力強いウエスタン・チックな演奏は「HUNTED (LIKE A CROCODILE)」リリース時からマニアに高く評価された名演でしたが、今なおこのワイルドな演奏のインパクトは色褪せません。ちなみに「I Don't Believe You」が二分を過ぎたあたりから「I Shall Be Released」の間奏辺りまでの間、周期的に「ジリッ」っというノイズがたまに入ってしまいますが、これはドラムを収音していたマイク経由でPAから発せられていたトラブルの音であり、テープの問題ではありません。実際にこのツアーでは演奏中に同様のノイズが発せられる現象が何度も起きていたものです。幸いにも「Trail Of The Buffalo」演奏中にはエンディングだけでノイズが起きるに留まっていました。この日は別音源も存在するのですが、そちらでも同様のノイズが入っています。コアなマニアであれば古の名盤「HUNTED (LIKE A CROCODILE)」と同じ音源のアッパー版というだけでも見逃せないリリースとなるだけでなく、これまで本音源を聞かれたことがない方にはその圧倒的な音質の良さとパフォーマンスの充実度の両方で全体に満足できるアイテムであると断言いたします。これまでも秋の「MERCY FOR POUGHKEEPSIE」、真夏の「HOT AUGUST NIGHT 1989」と充実した1989年タイトルを生み出してきましたが、今回もそれらとはまた違ったディランとバンドの壮絶ライブを完璧な音質で封じ込めています。しかもディスク一枚だから聞きやすさがまた抜群! Live at Statenhal, The Hague, The Netherlands 10th June 1989 TRULY PERFECT SOUND (77:51) 1. Announce & Intro 2. Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine) 3. Ballad Of Hollis Brown 4. Masters Of War 5. I'll Be Your Baby Tonight 6. Shelter From The Storm 7. Highway 61 Revisited 8. Mr. Tambourine Man 9. Don't Think Twice, It's All Right 10. Knockin' On Heaven's Door 11. I Don't Believe You (She Acts Like We Never Have Met) 12. Trail Of The Buffalo 13. I Shall Be Released 14. Like A Rolling Stone 15. To Ramona 16. All Along The Watchtower Bob Dylan (vocal, guitar, harmonica), G. E. Smith (guitar), Tony Garnier (bass), Christopher Parker (drums)