1970年にいったん解散したサイモン&ガーファンクルはその後もイベントやテレビ収録などで顔を合わせていたものの、本格的な再始動は1981年まで実現しませんでした。それだけに1981年から1983年にかけて行われた再結成ライブツアーは歴史的にも重要な意味を持ちます。その三年間において、もっとも幸福な時期だったのが日本公演だったのではないでしょうか。鳴り物入りのセントラル・パーク・コンサートで復活の狼煙を上げたものの、最後はアルバム制作の頓挫と喧嘩別れという幕切れだった三年間。それだけに1982年の来日公演がなおさら輝かしい日々に映るのです。現在では少し位置が変わってしまった感が否めませんが、当時の日本人にとってS&Gと言えば輝かしき1960年代青春ポップス(ロックという表現はあまり使われない時代)の象徴であり、イギリス代表がビートルズだとすればS&Gがアメリカ代表。リアルタイムでの来日が叶わず、それでいて解散を経て十年以上が経過し、なおさら影響力や人気がリバイバルで膨れ上がったタイミングでの再始動と来日公演の実現。それは日本中を大フィーバー(これも今は使わない表現ですよね笑)に巻き込んだ盛り上がりを見せました。それだけにS&Gの訪日に対する歓待はVIPレベル。既にソロでの来日を経験していたポール、実はプライベートで70年代末に来日していたアートそれぞれにとっても、そのおもてなしに悪い気はしなかったはず。おかげで空港到着時はもちろん、何と大阪から東京までの新幹線での移動時のホームまで取材が許可されていたというから驚き。彼らほどの大物であれば今なら考えられないことですが、当時はまだ大人の事情がうるさくない時代でしたし、先の歓待ぶりを前に彼らも気をよくしていたのでしょう。実際二人の表情も意外なほど和やか。この再結成において栄光の日々と呼べる1982年の日本公演に関しては、現在までにすべての公演の音源がアイテムとしてリリースされており、初日の5月7日以外はすべてリリースの実績がある。現在でも入手可能 Daysなのは8日の大阪二日目アイテム(後で触れます)だけで、当時の様子を追っかけ状態で報じていたマスコミに「よりリラックスしていた」と報じられていた東京三日間に関しては、10年前にリリースされた三公演すべてを極上オーディエンスにて収録した贅沢なセット「AT KORAKUEN」がSold Outになって久しく、マニアの間で再発のリクエストが絶えませんでした。それが遂に実現する訳ですが、高音質ゆえに今回も音源に自体には手を加えませんでした。それでもなおマスターから改めて作り直しており、単なる再発ではない2018年バージョンとして登場します。先にも触れた大阪公演二日目に関しては現在もZIONからの充実した二つのアイテムが好評を博し続けています。こちらもまた極上オーディエンスの「AT OSAKA STADIUM」と、10年近く前に登場したサウンドボード録音の「EASTBOUND」。後者の登場によって大阪二日目や82年の来日公演は決着がつくかと思いきや、元になったのはPAアウトのカセットによるサウンドボード録音。ZEPではおなじみな録音形態ですが、この手の音源は臨場感がどうしても希薄になってしまうという欠点があります。ましてや82年の5月に大阪スタジアムに居合わせたマニアのほとんどから「あの日聴いた音や熱狂と違う」という声が寄せられたのは事実。それに録音機材が発達した時代の恩恵を受け、オーディエンス録音の「AT OSAKA STADIUM」の価値がまったく色褪せないというまさかの結果となりました。むしろサウンドボードが発掘されない東京公演に関しては「AT KORAKUEN」の需要が余計に高まってしまい、結果としてSold Outとなってしまったのです。懐かしの後楽園球場において三日連続でおこなわれたS&Gの復活ライブ。あのスタジアムでのフィーバー(笑)した日々にタイムスリップさせてくれるのは、やはりオーディエンス録音。三日間ともに非常に素晴らしい音質のオーディエンス録音ですが、もっとも迫力を誇るのが初日。ショー全体を通して実にオンな音像が素晴らしく、当時の野外スタジアムにおけるオーディエンス録音としては最高級なレベル。さらに二人もショー開始直後に片言の日本語MCを聞かせた様子に関しては10年前のリリース時にも大きな話題を呼びましたが、それがマスコミに対して「大阪よりリラックスしている」という印象を与えた一因にも映るかと。またポールが「Mrs. Robinson」の最中で吹き出しそうになっていた点も同様でしょう。二日目に関してはショー序盤で手拍子の盛り上がりが大きく、演奏がやや追いやられ気味な音像。しかし日本で人気があり、なおかつ静かな演奏であった「Scarbough Fair」から一気に聞きやすくなります。この日は三日間の中でポールのテンションが一番高く「さくらさくら」をボソッと歌ってみた後で「Me And Julio Down By The Schoolyard」をいつになく激しく歌ってくれます。さらに「The Late Great Johnny Ace」の前では英語が通じずらい日本のオーディエンスに何とかして語り掛けようとしたほど。そして三日目は最終日ということもあってか、全体を通して手拍子が大きめですが、それでも高音質なところがこの音源の凄いところ。おまけにこの日は再結成ツアー中で唯一の披露となったと思われるポールの「One Trick Pony」というサプライズが起きた日。当時は既にセールス的に振るわなかったアルバムのタイトル・ソングというイメージが強かったはずですが、何故かこの日に限って演奏されたというのが不思議。もっとも同曲のレコーディングに参加した大半のミュージシャンがこの日のステージに立っていた訳であり、突然の演奏も余裕だったのではと推測されるスペシャル・ナンバーでした。これはポールなりにツアー最終日を意識したサービスだったのかもしれません。何しろSold Outになって久しい音源でしたので、今回のリリースで初めて聞かれるというマニアの方も多いのではないでしょうか。中古市場にも「AT KORAKUEN」がなかなか登場しなかったことから、なおさら今回のリリースは待望と呼べるものでしょう。あの熱狂のスタジアム・デイズが生まれ変わって久々に登場します。 Korakuen Stadium, Tokyo, Japan 10th, 11th & 12th May 1982 TRULY PREFECT SOUND(from Original Masters)Live at Korakuen Stadium, Tokyo, Japan 10th May 1982 Disc 1(51:58) 1. Intro. 2. Mrs. Robinson 3. Homeward Bound 4. America 5. Me And Julio Down By The Schoolyard 6. Scarbough Fair 7. My Little Town 8. Wake Up Little Susie 9. Still Crazy After All These Years 10. Bright Eyes 11. Late In The Evening 12. Slip Slidin' Away 13. El Condor Pasa 14. Fifty Ways To Leave Your Lover Disc 2(47:30) 1. The Late Great Johnny Ace 2. American Tune 3. Kodachrome/Mabellene4. Bridge Over Troubled Water 5. The Boxer 6. Old Friends/Bookends7. 59th Street Bridge Song 8. The Sound Of Silence 9. Late In The Evening Live at Korakuen Stadium, Tokyo, Japan 11th May 1982 Disc 3(56:02) 1. Intro. 2. Mrs. Robinson 3. Homeward Bound 4. America 5. Me And Julio Down By The Schoolyard6. Scarbough Fair 7. My Little Town 8. Wake Up Little Susie 9. Still Crazy After All These Years 10. Bright Eyes 11. Late In The Evening 12. Slip Slidin' Away 13. El Condor Pasa 14. Fifty Ways To Leave Your Lover 15. American Tune Disc 4(40:05) 1. MC 2. The Late Great Johnny Ace 3. Kodachrome/Mabellene 4. Bridge Over Troubled Water 5. The Boxer 6. Old Friends/Bookends 7. 59th Street Bridge Song 8. The Sound Of Silence 9. Late In The Evening Live at Korakuen Stadium, Tokyo, Japan 12th May 1982 Disc 5(46:13) 1. Mrs. Robinson 2. Homeward Bound 3. America 4. Me And Julio Down By The Schoolyard 5. Scarbough Fair 6. My Little Town 7. Wake Up Little Susie 8. Still Crazy After All These Years 9. Bright Eyes 10. Late In The Evening 11. Slip Slidin' Away 12. El Condor Pasa Disc 6(51:52) 1. Fifty Ways To Leave Your Lover 2. American Tune 3. One Trick Pony 4. Kodachrome/Mabellene 5. Bridge Over Troubled Water 6. The Boxer 7. Old Friends/Bookends 8. 59th Street Bridge Song 9. The Sound Of Silence 10. Late In The Evening