ビートルズの『リボルバー』はそれまでのものと一線を画す新時代のアルバムとなった。50年代のオールディーズを延長させたビートルズの音楽性は、『BEATLES FOR SALE』あたりまではその残渣を残しており、世間の扱いもアイドル的なものであり、実際に『HELP』には「四人はアイドル」という邦題が付与されている。しかしその『HELP』で垣間見せた芸術性の高さは『RUBBER SOUL』で深化し、ビートルズが一介のアイドルの範疇に収まらない存在になりつつあったことを示していた。それまでレコーディングと並行してツアーを行なっていたが、1966年にツアーを停止した後は、スタジオワークの粋を結集して『サージェントペパーズ』を作ることになる。このアルバムは内外で高い評価を受けるが、その製作のきっかけとなったのが『リボルバー』であったと思われる。なるほど時期的な理由もあるが『リボルバー』からはステージで1曲も演奏されることなく、また当時の技術でステージでの再現が困難な楽曲が多い。唯一シングルで発売されていた同時期のレコーディングである「ペイパーバック・ライター」が1966年ツアーで演奏されたのみで、裏面の「Rain」などはテープの逆回転を利用しているためステージでは到底不可能なものであった。おそらく『リボルバー』でスタジオ製作の醍醐味、面白さをビートルズは感じ取ったに違いない。もっと時間をかければさらに濃密度のアルバムが出来るのではないかと考えたはずである。それが後のツアー活動中止とサージェントペパーズに繋がったのである。ツアーと平行したアルバム製作と、スタジオに籠ったアルバム製作の分岐点にあたる時期のアルバム、それが『リボルバー』である。本作はそのアウトテイクや様々なバージョンを収録したタイトルである。
【FOR NO ONE】
「Here There And Everywhere」と併記してジョンが最も好きなポールの曲だと述べている名曲。メンバーが揃ったセッションでは時間をかけることが出来なかったかもしれないが、この曲は基本的にポールが単独でピアノでのレコーディングであるため、何度も繰り返しテイクを繰り返している様子が収録されている。5月9日のセッションはテイク1からテイク9まで曲の核となるピアノ・フレーズを重ねている。ピアノとドラムのみの演奏なのでポールとリンゴの二人だけがスタジオにいるのだろう。最終的に採用されたのはテイク10である。トラック11では加工なしの生々しいポールのボーカルを聴くことが出来る。印象的なフレンチホルンはまだ加えられておらず、非常にシンプルなポールの弾き語りとなっている。そのフレンチホルンは、ボツになったバージョンと採用されたバージョンの二つを本作に収録している。
【DOCTOR ROBERT】
ジョンが薬物を処方していた医師を歌ったものだと言われている曲。激しいギター・リフにジョンのボーカルが疾走し、ポールのコーラスが追い掛けるというビートルズ王道パターンの曲である。曲そのものは凡庸かもしれないが、ミドルの息を抜いたようなパートがあることで曲にメリハリがつき名曲たらしめている。トラック16ではエンディングでリリース・バージョンにはない部分が収録されており、曲の終わりも異なる興味深いものである。まだエンディングをどのようにするか決めておらず、あやふやに終わり、ジョンが「OK・・・」とメンバーに声をかけている様子が捉えられている。
【I WANT TO TELL YOU】
1991年ジョージの来日公演でオープニング・ナンバーに選ばれた曲である。ライブでは「WANNA」と歌われていた。トラック19は短いながらこの曲のレコーディングの際のスタジオの様子である。
【GOT TO GET YOU INTO MY LIFE】
派手なホーンセクションを加えた曲で、ポールはウイングス時代を含め自らのソロツアーでも好んで演奏しており、特に1979年ツアーではオープニングを飾っている。後に米国を席捲するブラス・ロックの嚆矢とも言うべき曲である。テイク5はアンソロジーにも納められた簡素なワーキング・バージョンで、最終バージョンにない歌詞も含まれていたり曲構成にも相違が見られる。注目は6月20日に収録された別ボーカル。最終バージョンよりテンポを速めてポールが溌剌と歌っているのが印象的である。6月22日に収録されたもうひとつの別ボーカルは、かなり最終形に近いものとなっている。
【TOMORROW NEVER KNOWS】
アルバム最後を飾るのは、まさに混沌という言葉がぴったりのジョンの「Tomorrow Never Knows」である。極端に加工されたジョンのボーカル、サウンド・エフェクトの数々、テープ逆回転を駆使した効果音、いずれもポールには不可能なジョンの世界観が溢れたビートルズの先駆性を体現した曲である。オールディーズ風のロックンロールを演奏していた時代からわずか数年でこのような境地に辿りつくビートルズの成長のスピードに驚かされる。テイク1は単調なコードに合わせて敢えてAMラジオから聴こえるようなボーカルエフェクトでジョンが淡々と歌っている。抑揚を意図的に抑えた歌いまわしであろう。4月27日にレコーディングされたテイク3はジョンのボーカルにエフェクトがかけられておらず生歌という趣である。最終バージョンに近い効果音などはこの時点で加えられている。次のサージェントペパーズを予見させる予告編の役割を果たしているといえる。
【ALTERNATE MIXES & WORLDWIDE VARIATIONS】
ビートルズのアルバムは時代が緩やかだったこともあり、世界各国によってミックス違いが数多く存在する事が知られている。有名なものではUK MATRIX 1の「Tomorrow Never Knows」などは全く別物といってもよい。このような世界各国盤のミックス違いを集めたのが最後のディスクになる。こうして並べて聴いてみると、同じ曲ながらこうまでも違うのかと驚かされることだろう。
【FOUR SIDES OF THE CIRCLE】
アルバム『REVOLVER』はレコーディングの日付を見てわかる通り、1966年6月末の日本公演時点で既に完成していた。しかし複雑なスタジオ効果を駆使していたため、実際にステージで演奏されたのはシングルでリリースされた「Paperback Writer」の1曲に留まっている。後年ポールが自身のソロになってからステージで演奏しているのは機材の発達に拠る所が大きいが、それのみならず、このアルバム収録曲全てをポールはソロ・コンサートで演奏しているところを見ても、これがポールにとって才能が最も充実していた時期であったという証明であろう。アルバム・アートワークも試行錯誤され、当初はビートルズ各人の写真を円形にコラージュしたものが候補に挙げられ、タイトルは「FOUR SIDES OF THE CIRCLE」(円の4面)という言葉遊びや「ABRACADABRA」など、混沌をイメージしたタイトルが考えられていた。レコーディングを終えたもののアルバムのタイトルが中々決まらず、日本公演で警備の警官が携帯していた回転式拳銃にインスパイアされたという都市伝説もある。結局、アルバム・ジャケットは旧知のクラウスブアマンが手掛けることになった。その出来栄えは素晴らしく、後年『アンソロジー』のアートワークを再び依頼することになる。本作はこの『REVOLVER』のスタジオ・セッションを集大成したタイトルである。
■今までどこにも収録された事のない数多くの初登場音源を含む究極のセット。■既発より長く、今回初めて未編集で収録されるものを含む。
DISC ONE
【FOR NO ONE】
May 9, 1966 MONITOR MIXES 01. Rehearsal 02. Take 1 03. Take 2 04. Take 7 05. Take 8 06. Take 9 May 16, 1966 07. Take 10 SI #1 (monitor mix #1) 08. Take 10 SI #2 (monitor mix #2) 09. Take 10 SI (monitor mix #3) 10. Take 10 SI (composite monitor mix) 11. Take 10 SI Clavichord track 12. Take 10 SI Vocal track
May 19, 1966 13. Take 14 SI Alternate Horn (monitor mix) 14. Take 14 SI French Horn MULTITRACK 15. Take 10 backing track
【DOCTOR ROBERT】
May 12, 1966 16. RM4 for the US 17. Acetate Test Mix May 20, 1966 18. RS1 for the US
【I WANT TO TELL YOU】
June 2, 1966 19. Pre-Take 1 (partial) June 3, 1966 20. RS from Take 4 (full intro)
【GOT TO GET YOU INTO MY LIFE】
April 7, 1966 21. Take 5 May 18, 1966 22. Tape reduction Take 9 CHANNEL MIXES 23. Take 8 partial from 5.1 mix 24. Take 8 with SI (Left Channel/mono) 25. Brass SI #1 partial from 5.1 26. Brass SI #2 partial from 5.1 27. Second Vocal SI partial from 5.1 28. Take 9 SI
June 20, 1966 29. RM8 different vocal at end June 22, 1966 30. RS1 different vocal at end EXTRAS 31. RM & RS End comparison JULY, 1966 CLIFF BENNET AND THE REBEL ROUSERS SESSION 32. Paul on Piano and Producer
【TOMORROW NEVER KNOWS】
April 6, 1966 33. Take 1 alternate intro 34. Take 1 April 27, 1966 35. Take 3 RM8 Mono Matrix II June 6, 1966 36. Take 3 RM11 Mono Matrix I June 8, 1966 37. Acetate Test RM11 June 22, 1966 38. Take 3 RS6
MULTITRACKS 39. Take 1 (mixing desk) 40. Take 3 (full end) (mixing desk) 41. Take 3 monitor mix 42. George Martin explains
DISC TWO
ALTERNATE MIXES & WORLDWIDE VARIATIONS
【PAPERBACK WRITER】
01. 1966 Japanese EP Duophonic 02. 1970 US ‘Hey Jude’ LP Stereo reversed 03. 1979 unreleased US ‘Collector’s Items’ LP Stereo 04. 1982 UK ’20 Greatest Hits’ LP Stereo Center 05. 1983 UK ‘Abbey Road Show’ John Barrett Stereo 06. 1996 ‘Anthology’ Video Mix Stereo
07. 2001 ‘Beatles 1’ Video mix Stereo 08. 2009 ‘Rockband’ mix
【RAIN】
09. 1983 UK ‘Abbey Road Show’ John Barrett Stereo 10. 1996/2003 ‘Anthology’ Video Mix Stereo 11. 1996 ‘Anthology’ Laserdisc Stereo
【TAXMAN】
12. 1966 French ‘Revolver’ LP Mono clean intro 13. 1966 French ‘Revolver’ LP Stereo clean intro 14. 1966 Mexican ‘Revolver’ LP Mono clean intro 15. 1976 US “Rock ‘N’ Roll Music” LP Stereo reversed 16. 2009 ‘Rockband’ mix
【ELEANOR RIGBY】
17. 1968 ‘YS Film’ Stereo 18. 1987 ‘YS Film’ Laserdisc Stereo
【I’M ONLY SLEEPING】
19. 1966 French EP Mono slightly dif EQ 20. 1966 US “Yesterday and Today” LP Duophonic
【LOVE YOU TOO】
21. 2011 “LITMW” Video Stereo 22. 2011 5.1 separation
【HERE, THERE AND EVERYWHERE】
23. 1977 “Love Songs” LP Stereo reversed 24. 1980 “Ballads” LP Stereo
【YELLOW SUBMARINE】
25. 1968 ‘YS Film’ Stereo 26. 1982 UK ’20 Greatest Hits’ LP Stereo 27. 2009 “Rockband” mix
【AND YOUR BIRD CAN SING】
28. 1996 US “Yesterday and Today” LP Duophonic 29. 2009 “Rockband” mix
【FOR NO ONE】
30. 1977 “Love Songs” LP Stereo reversed
【DR. ROBERT】
31. 1996 US “Yesterday and Today” LP Duophonic
【GOT TO GET YOU INTO MY LIFE】
32. 1976 US “Rock ‘N’ Roll Music” LP Stereo reversed 33. 1976 Single Stereo with echo





























