初期『TARKUS』時代の極上ライヴアルバムが奇跡の新発掘です。“進化するロック”として一世を風靡したプログレッシヴ・ロックですが、数あるバンドの中でもEL&Pは驚異的な演奏力でジャズやクラシックを強引に融合させたグループでした。そして、実演家としてもっとも輝いていた時代と言えば、1970年-1971年にトドメを刺す。本作は、そのもっとも眩しい“1971年”の頂点を極める奇跡の記録なのです。そんな本作に収められているのは「1971年6月5日ツォフィンゲン公演(スイス)」。最近になって突如、この世に現れた秘蔵のオーディエンス・アルバムなのです。まずは、このコンサートがEL&P史においていかなるポジションなのか、活動概要からイメージしてみましょう。
《1971年1月『TARKUS』制作》・1971年2月-4月:英国#1(24公演)《1971年3月26日『展覧会の絵』録音》 ・1971年4月-5月:北米#1(28公演)※初の米国ツアー ・1971年6月:欧州(13公演)←★ココ★ ・1971年7月-9月:北米#2(29公演)《1971年10月『TRILOGY』制作開始》・1971年11月:北米#3(15公演)
・1971年12月:英国#2(20公演)《1972年1月『TRILOGY』完成》
これが『TARKUS』から『TRILOGY』までの歩み。当時の記録にはあやふやなところもあるので厳密に正確とは断言できませんが、おおよそは把握頂けるかと思います。本作のツォフィンゲン公演は「欧州」日程の初日。『TARKUS』リリース(6月14日)の9日前というタイミングでした。そんなツォフィンゲン公演は、今回が初めてではありません。2010年にオーディエンス・マスター「SOURCE 1」が発掘され『DEVELOPING STORY(の一部)』としてもご紹介したことのあるコンサートです。しかし、本作はそれとはまったく別の録音。世界中のマニアが「SOURCE 2」と呼ぶ、まったく未知の新発掘マスターなのです。初登場となる「Jeremy Bender」が収録されていることも衝撃でしたが、それ以上に強烈なのがサウンド。「SOURCE 1(DEVELOPING STORY)」からして1971年屈指の素晴らしいサウンドだったものの、それすら問題にならない。すべての面でアップグレードしていますが、特に衝撃なのはキーボードの近さと鮮やかさ。もう冒頭から圧倒的でして、「SOURCE 1」では遠くに渦巻いていたシンセの唸りが目の前に突きつけられる。その唸りも単に迫力があるのではなく、自在な変化のディテールまで克明。まるで、つまみをイジるキース・エマーソンの指先が見えるかのような繊細さ。再生した瞬間、「まさかサウンドボード?」と、我が耳を疑ったほどです。しかも、マスター鮮度もケタ違い。恐らくは大元マスターと思しきカセット現物からダイレクトにデジタル化されており、ダビング痕や劣化がまるで感じられない。正直な話、これまで“1971年”といえば「聴けるだけありがたい」レベルのものばかりでしたが、本作は次元が違う。ここまで素晴らしい“1971年”サウンドは聴いたことがない。45年の時間を飛び越え、強烈無比なインプロヴィゼーションを100%リアルに蘇らせてくれるのです。そんな貴重な極上マスターなのですが、未収録部分もありました。「Take A Pebble」中盤のピアノソロにテープチェンジと思しき空白が1分40秒ほど、3番の歌い出し部分に2秒(操作ミスでしょうか)。さらに終曲「Nutrocker」もごく僅かに欠けていた。貴重な大発掘の真実だけに、そのままにする事も考えましたが、キースのインプロやグレッグ・レイクの歌声を最大限にお伝えすべく「SOURCE 1」で補填。1秒の欠けもなく最大・最長で貴重なショウをお届けする事にいたしました。そんな最長最良のサウンドで蘇った“1971年のライヴ”。これがもう、本当に凄まじい。初のアメリカ・ツアーを成功させ、その自信漲る充実感のまま迎えた欧州ツアーの初日なのです。沸き立つアイディアとイマジネーションをその場、その瞬間で音に変えていくインプロヴィゼーションの嵐。定番が確立していない時期だけに、お約束のフレーズでも後の手慣れ感がなく、鋭い。例えば「Take A Pebble」ではピアノ弦を弾いて「第3の男」のテーマを演奏する。それ自体は大騒ぎする話ではないものの、こういうことさえ起きてしまうほどに自由で、創造力が滾々と湧き出る演奏が溢れ出す。まったく、目映いフレーズを文字に起こせないのが残念なくらいです。もちろん、そんな演奏力で描かれるから名曲も更なる輝きを聴かせる。大曲「Tarkus」も極初期バージョンのアグレッシヴな演奏ぶりですし、超貴重な「Jeremy Bender」まで聴ける。この曲も「本作でしか聴けない」というわけではないものの、演奏回数が異様に少ない。それがここまでのサウンドで聴けるとは……。
単なる技術論で言えば、EL&Pよりも優れたバンドはいくらもいるでしょう。しかし、演奏力がスタイルそのものに昇華され、ロックの進化にまで繋げてみせたバンドは類を見ない。そんなEL&Pのインプロヴィゼーションがもっとも激しく、美しく輝いていた“1971年”。本作は、その貴重にして極上の記録なのです。EL&P史……いえ、ロック史においても目映く輝くライヴアルバム。
Live at Mehrzweckhalle, Zofingen, Switzerland 5th June 1971 PERFECT SOUND
Disc 1(54:16)
1. The Barbarian 2. Tarkus 3. Jeremy Bender 4. Take A Pebble
Disc 2(37:06)
1. Knife Edge 2. Rondo incl. Drum Solo 3. Nutrocker





























