8月の箱根アフロディーテと大阪、そしてあのポンペイ・レコーディングを経て10月15日から始まった1971年の北米ツアーより、27日のシカゴ公演が驚異のアップグレード!! 長らくスポットが当たらなかったこの公演が遂に登場致します!...とは言うものの、ひょっとすると" 1971年10月の...シカゴ公演? "と、首を傾げている方が意外と多く居らっしゃるかもしれません。この日の録音は2013年にフロイド専門サイトに登場した2nd Genソースが主に知られていますが、これは良好なモノラルAUD録音ながらも現地収録時に機材に生じていたピッチの乱れ(※ 恐らくバッテリーやデッキ駆動系の不具合でしょう)がそのまま残っており、そのうえヒスノイズも全体的に目立つという難アリの公開ソースでした。これに再補正を施して音像を可能な限り整え、2013年にリリースしたものが『CHICAGO 1971 』だったのですが、その修復には技術と根気が必要だった為か他レーベルはリリースを敬遠した様なフシがあり、録音は残っているのにタイトルはほぼ皆無という71年のエアポケットの様な公演日になっていました。リリースそのものに恵まれなかった訳ですから、71年のシカゴと言われて記憶に当たらないのも無理からぬ事なのです。ところがつい先日この音源に、もう全く別物と言えるアッパー・ソースがネット登場して世界中の音源ファンを賑わせました。ソース自体は上記の当店ギフト(※ 以下、既発盤 / テープ1とします)と同じなのですが、これはマスターから枝分かれして既発盤とは異なる経路を辿った別テープ(= テープ2)の音で、これに驚くべき鮮かさで音が残っていたのです。特にショウの中盤以降(※ 本作ではディスク2)のアッパーぶりは既発盤使用のソース(= テープ1)とは比べ物にならないほど顕著で、そのうえオリジナル録音最大の欠点であったピッチの乱れまでほぼ完璧に解決しており、全てのシーンが本来あるべき理想的な音像を取り戻しているのですから驚き倍増でしょう。まさにテープ1ではなくテープ2からトランスファーした音で修復を完遂している事が決定的な差を生んでいるのです。更に注目したいのはそのテープ2から音を取り出す際に使用したテープデッキで、これが何とあのナカミチの名機" ZX-7 "である事も大きなトピックでしょう。かつて日本に存在した伝説のオーディオ機器メーカーによって製造されたこのZXシリーズ(※ ZX-5, 7, 9がありました)は2018年現在でもナカミチの傑作機として知られており、論理回路を備えた駆動系とマニュアルによる多彩なキャリブレーション機能がテープの潜在能力を極限まで導き出す仕組みによって世界中のオーディオ・ファンを熱狂させたマシンです。今回のテープ2にはテープ1よりも格段に良い状態で音が残っていたとはいえ、それが2nd Genである事実は曲げられませんが、しかしこれをZX-7で再生させたテープ2からの出力精度は並のデッキではまず得られない波形でそのサウンドを形成しており、使用したテープ2=2nd Genの原音そのままの71年シカゴと考えて差し支えないグレードが実現しているのです。
一例を挙げましょう。まず何と言っても既発盤は全体を通してヒスノイズが激しく、また定位もほんの僅かに左寄りで、右チャンネルの出力が若干弱めでした。特に「Echoes」では後半17:16付近から右チャンネルの出力が下がり、18:22でほぼ完全に左側だけの出音になったり(※ しかもそれが26:02まで延々と続く)修正し切れていないピッチの乱れと音像精度の悪さの痕跡がまだ色濃く残っていた訳です。しかしテープ2をZX-7からトランスファーした本作はまず定位が中央にばっちり腰を下ろしており、ヒスノイズの圧倒的な(※ まさに驚くべきほどの)緩和によって弱音の安定感と中音域の奥行きにアッパー感が漲り、右チャンネルのみになっていた前述の「Echoes」後半の劣化区間も全く問題無く両チャンネルの音像を形成しています。中盤の鳴き声シーンでも、既発盤では平面的にキンキン鳴っていたスライド・ギターが上質な響きと立体的な奥行きを取り戻しているうえ、恐らく1st Genやオリジナル録音がそうなっていたのであろう鋭い音の閃きを予感させるシーンが幾度もお愉しみ戴けるのです。同様に劣化が目立っていた「A Saucerful Of Secrets」もヒスノイズとピッチ揺れが無くなった恩恵が大きく、これまで若干ぼやけていた低音の抜け具合と高音域のレスポンスが本来の鋭さを取り戻しています。既発盤で顕著だった中盤のガチャガチャした音の混濁感も響きの交差がスッキリ聴こえるようになっており、この日の表現と真正面から向き合える解像力をソース史上初めて宿したサウンドで結実しているのです。こうしたアッパー感はショウの中盤以降=ディスク2から特に顕著なのですが、どうしてどうして、ショウ前半でもそれに負けないアッパー感が備わっているのだから驚きです。特に「Set The Controls For The Heart Of The Sun」は既発盤で音が欠落していた13:13~の録音オンオフ部分が初登場、約1.5秒間ほどではありますが既発盤より長くてオリジナル録音に忠実な収録となっています。また「Atom Heart Mother」も既発盤でフェイド処理していた18:51の曲間シーンがオリジナル録音の姿で登場し、これも一瞬長い姿で聴けるのが嬉しいアドヴァンテージです。「One Of These Days」は中盤と後半でリズムを一旦打ち消してゆくこの日独特の表現が更に生々しい姿で現われ、終曲と同時に水が滴る音(※ 場内SEによる雨音? シンセサイザーによるバブル音・水泡が弾ける音?)が延々と入る中で進行する非常に珍しいサウンド・チェックもその雫の音の輪郭が鋭くなっているのが分かる筈です。ちなみにテープ2ではこの水の音が被るサウンド・チェックが11:05までしか記録されておらず、その後に本来もう少しある次の曲開始までの約10秒間(= ディスク1終了まで)をその部分が残っているテープ1=既発盤を調整して補填し、現存するシーン全ての音を使い切って全長性を維持しました。そしてショウ後半のディスク2になると更に音質が向上。ディスクスタートさせて10秒も経たずに誰もが気付くのは、ピッチの乱れと音像揺れがほぼパーフェクトに無くなっている点でしょう。既発盤ではディスク2の開始直後からピッチの狂いと音揺れが深刻に目立ち始めますが、ここではそうした問題が生じない抜群の精度と安定感を保っており、それは「Careful With That Axe, Eugene」の中盤で入るスクリームの音程が既発盤と本作でほぼ半音近く違っている事からも伺えると思います。「Cymbaline」は奥まっていたギルモアの歌声が半歩ほど前に出て旋律線が掴み易くなり、透明感も過去最高を更新しました。特に足音の寸劇シーンなど既発盤とは桁違いのヒスノイズ低減が感じられますが、これもデジタル・リマスターの効果が2割、残りの8割はマニュアルでシビアに調整したキャリブレーションと3ヘッドのアジマス精度が生み出したZX-7による原音の抽出力と言えそう
です。その足音シーンの後の歌唱中にギルモアが何故か笑い出し、歌詞の一部を歌い損ねている(※ 或いは、歌えていない)というこの日ならではのハプニングも一層生々しい音像で現れ、既発盤の印象を瞬時に過去のものにしてくれるでしょう。こうした圧倒的な音質の向上感の中、この1971年のシカゴ公演はこの時期ならではの興味深い演奏が次々と展開してゆく訳ですが、その反面でプログラムの構成面で見るとこの北米ツアーを最後にバンドは翌1972年の1月から" THE DARK SIDE OF THE MOON " の試作版を演奏し始める為、ショウの組み立てそのものが根底から変化してゆきます。言い換えればこの時の北米ツアー・プログラムはそれまでのフロイドが積み上げてきた" 「狂気」が介在しないショウの最終形 "となっており、そうした音楽的パラダイム・シフトが秒読みにある重要期の音源のひとつが今やっと、それを紐解くに耐えるクオリティを獲得した訳です。幸か不幸か、このシカゴ公演はまだ認知度が低い音源であるが故、初めて聴かれる方が多いかもしれません。でも本作はそんな方のファースト・インプレッションに充分応える品質となっているのはもちろん、既発サウンドを御存知の方もテープ2による桁違いの音の躍動と精度に驚嘆されること確実な最新作となっています。
Live at Auditorium Theater, Chicago, Illinois, USA 27th October 1971 UPGRADE
Disc 1(74:16)
01. The Embryo 02. Fat Old Sun 03. Set The Controls For The Heart Of The Sun 04. Atom Heart Mother 05. One Of These Days
Disc 2(69:50)
01. Careful With That Axe, Eugene 02. Cymbaline 03. Echoes 04. A Saucerful Of Secrets






























