ストーンズ1972年アメリカ・ツアーと言えば、かの「フィラスぺ」を始めとしたサウンドボード録音がツアーの中盤以降から存在しています。それらはリリースに向けての作業が行われながらもリリースにこじつけられなかったライブ・アルバムや映画「Ladies & Gentlemen」と紐付けされた関係の音源でもありました。72年ツアーのSBD相関図はそれらに集約されるという、非常に解りやすい状況が今でも続いています。例外的にツアー最終日のマディソン・スクエア・ガーデンの様子を生々しいステレオのサウンドボード録音で捉えたTMOQのLP「WELCOME TO NEW YORK」も古典的な名音源ではあるものの、一般的にはフィラデルフィアやフォートワースのショーを収めたサウンドボード録音のイメージが強いツアーかと思われます。そんな状況にまるで一石を投じるかのごとく、今からちょうど二十年前に現れた新たなサウンドボード録音が7月22日のピッツバーグ公演。「AN AMERICAN AFFAIR」というタイトルでリリースされたこの音源、マニアにはおなじみだったフィラデルフィアやフォートワースとはまったく違うショーを捉えた発掘音源としても注目を浴びるかに思えたもの。ところがクリアーさを欠いた、モコモコにこもった状態がどうにも聴き辛く、新たなサウンドボード録音のインパクトが薄れてしまいました。その後「THE ROYAL DORAGON」としてもう少し状態の改善されたバージョンが登場したものの、それもピッチの不安定さや根本的なクリアネスの欠如から、またしてもハード・マニア向けのアイテムに留まってしまいます。純粋に考えてみればこのピッツバーグのサウンドボードは「WELCOME TO NEW YORK」と同傾向の録音であるのです。各楽器が見事にセパレートしたリアル・ステレオであり、PAアウトからのサウンドボード録音にありがちな平坦さとは一線を画したもの。よって演奏の迫力は十分に伝わってくるバランスであり、一重に音質の問題が惜しまれるものだと言えるでしょう。せっかくのリアル・ステレオ・サウンドボードでありながら、モコモコにこもった状態が仇となって見過ごされ続けてきたピッツバーグ。ところが今年に入って突如、この音源のアッパー版が現われたのです。もちろん、まだまだ粗い状態であり、音源固有の問題は既発盤と変わりません。例えばオープニング「Brown Sugar」が始まってすぐに交差するノイズ、あるいは「Sweet Virginia」の未収録、そして最後の「Street Fighting Man」が二分にも満たないところで録音が終わってしまうところなど。特に「Sweet Virginia」の未収録に関しては、既発盤において約一か月前のフォートワースでの同曲のサウンドボード録音が転用されていたものですが、今回のリリースに当たっては、ピッツバーグ本体のサウンドボード録音に含まれていないことから、補てんをせず潔く未収録のままとしました。しかし何と言っても特筆すべきは音質のアッパーな状態でしょう。あの慢性的な音のこもりが一気に解消されており、既発盤の状態を聞き込んできたマニアであれば、薄皮どころか二皮くらい一気に剥けてくれたかのようなクリアネスに驚かされること間違いなし。あのモコモコとした状態と比べれば、ずいぶんと見通しの良いクリアネスへと生まれ変わってくれたものです。全体的なイメージは、あのモコモコ感が払拭され、同傾向のサウンドボード録音である1975デトロイト(=「A STONE IN MY SHOE」)あるいは1976年ネブワース(=「HOT AUGUST NIGHT」)などのような状態へと近付いたと例えていいかもしれません。いずれにせよ、かなりのアッパーな状態が実現したことは間違いありません。既発盤もピッチの問題を抱えていましたが、今回登場したバージョンはランダムに大きく遅かったり速かったりするピッチの狂いという、それまでとはまた違った問題を抱えていたのです。この点においても徹底的にアジャストしています。さらに「All Down The Line」で起きていた音量レベルの下降までもアジャストした抜群の安定度。これまで見過ごされてきたピッツバーグのサウンドボードを楽しむには打ってつけだと言えるはず。そして演奏の方は7月後半だけあって、もはや鉄壁の72ストーンズ・サウンド。中でも「Rocks Off」全体の演奏や「Gimme Shelter」の間奏で聴かせたテイラーのフレーズなどは、どちらからも7月後半ならではの勢いに溢れています。ミックのワイルドな歌いっぷりが絶品な「Tumbling Dice」、イントロから一気に駆け抜けるような「Midnight Rambler」といった具合に、この時期ならではの素晴らしさが堪能できるようになったのも、一重に音のこもりが解消されたからこそ。まだまだ粗いサウンドボード録音ではありますが、随分と聴きやすくなりました。
Live at Civic Arena, Pittsburgh, PA. USA 22nd July 1972 STEREO SBD(UPGRADE) (65:45)
1. Brown Sugar 2. Bitch 3. Rocks Off 4. Gimme Shelter 5. Happy 6. Tumbling Dice 7. Love In Vain 8. You Can't Always Get What You Want 9. All Down The Line 10. Midnight Rambler 11. Band Introductions 12. Bye Bye Johnny 13. Rip This Joint
14. Jumping Jack Flash 15. Street Fighting Man





























