本作は日本のラジオ番組『SOUND STREET』を収めたもの。“SERIOUS MOONLIGHT JAPAN TOUR 1983”で日本を訪れていたボウイは、映画『戦場のクリスマス』でも共演した教授の担当日にゲスト出演。“ボウイの好きな曲をかける”という特番が放送されました。本作は、そのエアチェック・テープなのです。番組はDJの教授、ボウイ、そして通訳としてお馴染みのイギリス人音楽評論家の3人で進行。ボウイの選曲をかけながら語り合っていきます。その選曲とはP.I.L.、ALAN FREED & HIS ROCK、VELVET UNDERGROUND、JACKIE WILSON、YMO、LITTLE RICHARDの6曲。なにより、それ曲に対して想いを語るボウイのコメントが実に良い。「LITTLE RICHARDは、音楽を志すきっかけなんだよ」「小さい頃に聴いたALAN FREED & HIS ROCKでサックスを吹きたくなったんだ。それで今のツアーでもオープニングしてるんだよ」「JACKIE WILSONは数年前にステージで倒れて、今でも危篤状態なんだ(この放送の2ヶ月後に死去)。哀しいよ」等々、彼のルーツへの想いが肉声で語られる。そんなルーツ・ミュージックで埋め尽くされるかとも思いきや、P.I.L.や同期デビューのVELVET UNDERGROUNDも選曲。そこでは教授や評論家も交えてニューウェーヴを経た音楽家同士、友人同士の本音トークが凄い。「バカバカしいほど単調だけど、それが上手くいってるよね。P.I.L.で好きなのはこの曲くらいなもんだよ」「ニューウェーヴの嵐が終わってから聴くヴェルベッツは、元祖の輝くオリジナリティを感じる」「YMOはストリップにも合うんだよ(笑)」等々。さらに話はクラシックやポップスをどう捉えているか、他ジャンルへのアンテナへと広がり、ボウイは「音楽への視野が狭くなると自分の音楽も限られてしまう。それは悲しいことだ」と語る。思えばボウイ自身、ベルリン時代、ニューウェーヴを通過してポップスターへ転身を図った時期であり、実に重い言葉です。3人の音楽談義は止まるところを知らず、曲をかけている間も盛り上がっていた模様。JACKIE WILSONの前には曲の話をしていたはずなのに、終わった頃には音づくりの話になっている。そこでも「『STATION TO STATION』や『LOW』では自分でいろんな機材をイジってたけど、最近はシンプルで分かりやすいサウンドを目指してる。『LOW』でやりすぎたよ」など、本人ならではの実感のこもったコメントが面白いのです。とかく、日本の放送物というと“ザ・芸能界”的な薄っぺらいものが多いのですが、本作はまったく次元が違う。芸能レポーターでも訊きそうな「5年ぶりの日本をどう思う?」という質問に対しても、ボウイは音楽・アートの視点で返し、他2人は真正面から受け止める。単に音楽好き同士の会話というだけでなく、仕事として、生き様として音楽を選んだ3人のトーク。別に小難しい音楽理論の話など一切出てきませんが、ジョーク1つ、相づちの1つに至るまで、背負った実感が滲み出るディープな世界なのです。音楽仲間だからこそ、友人同士だからこそ浮かぶ“音楽人ボウイの素顔”。同じように“音楽を愛する者同士”として彼と語らうひとときを、あなたに。
Broadcast: 22nd November 1983
Public Image Ltd - (This is Not a) Love Song / Alan Freed & His Rock - Right Now, Right Now Velvet Underground - Here She Comes Now / Jackie Wilson - Lonely Teardrops Little Richard - True Fine Mama





























