生涯最後のジャパンツアー“ONE NITE ALONE… TOUR 2002”には、伝説として語り継がれる“奇跡の夜”がありました。それは「2002年11月28日・大阪城ホール公演」。その全貌を極上サウンドで録音しきったライヴ・アルバムの登場です。最後のジャパンツアーは全9公演。彼の来日公演史でも最多の公演数となったわけですが、まずはその概要を見てみましょう。・11月15日:東京国際フォーラム・11月17日:アクトシティ浜松・11月18日:日本武道館・11月19日:日本武道館・11月21日:北海道厚生年金会館・11月22日:Zepp Sendai・11月26日:福岡サンパレス ・11月28日:大阪城ホール 【本作】 ・11月29日:名古屋センチュリーホールこのように、大阪城ホール公演は8公演目。ジャパンツアーでも後期のショウでした。なぜ、この日が“奇跡の夜”と呼ばれているのか。その理由はいくつかありますが、まず何と言っても長い。日によってセットリストやアレンジを変えるプリンスですが、この日はとにかく湧き出す意欲の赴くままに演奏し続け、約2時間50分にも及ぶ長大なショウになったのです。2002年のジャパンツアーでは日本武道館も長いと言われていましたが、それより6曲も多い最長記録でした。しかも、その曲目も実に多彩。“ONE NITE ALONE… TOUR 2002”からはオフィシャル盤『ONE NITE ALONE… LIVE!』もリリースされていますが、そこでは聴けない曲が盛りだくさん。ちょっと挙げただけでも「Pop Life」「Money Don’t Matter 2Night」「The Work Pt. 1」「Purple Rain」「Strollin’」「Gotta Broken Heart Again」「All The Critics Love U In Osaka」「Pass The Peas」「The Ride」「Sign O’ The Times」「Days Of Wild」「Last December」等々など。メドレーもあるので、厳密にはこれでも全部ではないのです。しかし、いくら長くてもダラダラと続けているだけでは“奇跡”とはならない。このロング・ショウを生み出すプリンスの情熱こそが素晴らしいのです。この日はとにかく絶好調で、いくら曲を繰り出そうとも情熱の泉が枯れるそぶりも見せない。そもそも、長いショウになると言うことはアンコールが長いということ。つまり、最後の最後まで情熱を潰えることなく、1曲1曲で歌声もギターも熱く、スキャットもキレにキレている。「プリンスはツアーが進むほどに調子が良くなる」と言われますが、まさにそれを証明するかのような熱演なのです。長くなりましたが、ここからが本題。そんな“奇跡の夜”を全編余すことなく収録したオーディエンス・アルバムが本作なのです。録音したのは、大阪を中心に活動する名手中の名手で、数々のアーティストで歴史的な傑作をモノにしている方。最近で言えば、デヴィッド・ボウイの『A REALITY IN OSAKA: THE LAST CONCERT IN JAPAN』が超絶な高音質で話題となりましたが、あの大傑作と同じなのです。そのボウイの名盤をお聴きになった方なら、これ以上の説明は不要と思いますが、本作のサウンドは驚異的な次元の極上オーディエンス。と言いますか、もはや「オーディエンス」でイメージするサウンドとは思わないでいただきたい。曲間のリアルな声援や手拍子には客席らしさもあるものの、楽音はほぼサウンドボードかのよう。プリンスの歌声は優しく耳元で囁き、スキャットはたぎる情熱そのものをダイレクトに伝えてくれる。もちろん、ジョン・ブラックウェル&ロンダ・スミスのグルーヴは豊かに跳ねまわり、メイシオ・パーカーのサックスはどこまでも艶やか。1つひとつの楽器、1音1音の楽音がクッキリと切り立っており、バランスもまるでオフィシャルでミックスしたかのように完璧なのです。完璧なバランスなのは、楽音だけではない。本作には6年にわたってプリンスを待ち望んでいた日本人の大歓声も収録されているのですが、それさえもが完璧なバランス。その熱さは分厚い声援にしっかりと刻印されているものの、厚くはあっても大きくはない。ぶっとくガッシリとした楽音を脅かすことなく、効果音というほど小さくもない。プリンスが多用しまくる「大阪ぁ!」に熱い空気感をまとわせながら、決して遮らないのです。それを殊更に感じるのはディスク3のアンコールでしょう。「Days Of Wild」で一度は幕を閉じ、すでに客電が付いている中でもアンコールを求める声が鳴り止まらない。一部の観客は帰り始めていたようですが、それでも収まらない歓声に応えてアコースティック片手にプリンスが再登場。「Alright!」の一声と共に「Alphabet St.」「Last December」を歌うのです。いかにプリンス自身が絶好調であっても、彼1人では情熱は続かない。観客の熱狂と交感してこそ熱演が生まれていく。その理想的なドキュメントでもあるのです。弾き語りを終え、「さよなら」の一言を残して去っていったプリンス。そんな彼と共に本作は幕を閉じます。彼の生涯で最後のジャパンツアーでも、もっとも美しく、もっとも熱く、もっとも長かった大阪城ホール公演。そこにいて、音楽と情熱を交わしたプリンスと観客たち。その総てが生み出した“奇跡の夜”を、“奇跡の音”で描ききった名録音中の名録音です。幸運にも居合わせることができた方はもちろん、他公演をご覧になった方、不運にも最後の来日に行くことができなかった方。そのすべての方に聴いていただきたいライヴアルバム。 Live at Osaka-Jo Hall, Osaka, Japan 28th November 2002 Disc 1 (71:53) 1. Prince Drum Solo 2. The Rainbow Children 3. Pop Life 4. Money Don’t Matter 2Night 5. The Work Pt. 1 6. Purple Rain 7. 1 + 1 + 1 Is 3 / Housequake / Love Rollercoaster 8. Strollin’ 9. Gotta Broken Heart Again 10. All The Critics Love U In Osaka Disc 2 (63:42) 1. Strange Relationship 2. Pass The Peas 3. When You Were Mine 4. The Ride 5. Sign O’ The Times 6. Take Me With U 7. The Everlasting Now 8. Piano Medley:Adore / The Most Beautiful Girl In The World / Condition Of The Heart Do Me, Baby / I Wanna Be Your Lover / Diamonds And Pearls / The Beautiful Ones / Nothing Compares 2 U / The Ladder / Starfish And Coffee / Sometimes It Snows In April Disc 3 (33:57) 1. John Blackwell Drum Solo 2. Peach / It Ain’t Over 3. Days Of Wild 4. Alphabet St. 5. Last December Prince – Vocal, Guitar, Piano, keyboard, Bass, Drums John Blackwell – Drums Rhonda Smith – Bass Renato Neto – Keyboards Maceo Parker – Alt Saxophone Eric Leeds – Tenor Saxophone Greg Boyer – Trombone Dudley D. – Turntables