「Prince Is Dead!!」の一言も胸に突き刺さるライヴ・イン・ジャパンが発掘されました。その生涯で6度の来日を果たしたプリンスですが、本作が収められたのは“THE ARTIST時代”唯一となる1996年の“THE ULTIMATE EXPERIENCE (GOLD) TOUR”。1993年にワーナー・ブラザーズと契約した彼はアルバム『COME』で“プリンスの死”を宣言。新たにシンボルマークをアーティスト名に掲げた『THE GOLD EXPERIENCE』を発表、そのツアーの一環として日本にもやってきた。冒頭の言葉は、開演を告げる彼自身の言葉なのです。そんな“THE ARTIST時代”唯一の来日公演を振り返ってみましょう。 ・1月8日:日本武道館 ・1月9日:日本武道館 ・1月11日:大阪城ホール ・1月14日:福岡国際センター ・1月16日:日本武道館 ・1月17日:日本武道館 ・1月20日:横浜アリーナ 【本作】 このように、この時のジャパンツアーは全7公演。本作は、その最終日となる「1996年1月20日・横浜アリーナ公演」を収めたオーディエンス・アルバムです。以前からこの日の録音は2・3種ほど存在していましたが、それらとはまったくの別録音。クオリティも段違いに素晴らしい全世界初公開マスターです。本作を録音したのは、日本でも屈指の名録音家。そのテーパー本人から直接渡されたDATマスターをダイレクトに使用したライヴアルバムなのです。そのオリジナルDATから流れ出すのは、既発群を一蹴する鮮烈なオーディエンス・サウンド。録音ポジションは伝わっていませんが、楽音のダイレクト感が素晴らしく鮮やかで、残響がほとんどない。まさにムキ出しの演奏と歌声が耳に飛び込んでくる。録音家本人から渡されていなければ、楽音しか聴かなければ、ほとんど卓直結のサウンドボードか極上のIEMsかと思うほどなのです。それほどまでに鮮烈でありながら、やはり本作はオーディエンス録音。その確たる証拠なのは、猛烈に吹き出す熱狂です。こう書くと大騒ぎの中から楽音を探すようなサウンドをイメージされるかも知れませんが、もちろんそうではありません。広い“横浜アリーナ”の空気感をたたえるオーディエンスの熱狂の中をド直球な楽音はレーザービームのように真っ直ぐ突き抜けるバランスであり、楽音は微塵も主役を譲らない。本作に吹き込まれた大歓声の凄味は、大きさではなく、立体感なのです。例えば、プリンスがステージ上を動き回ろうと、PAから吐き出される歌声が揺れることはありません。しかし、彼に見つめられ、指さされ、歌いかけられて熱狂する大歓声は、リアルに動きまくる。右の遠方席が盛り上がったかと思えば、今度は左へと熱狂の波が蠢き、いつしかその最中に取り囲まれる。そこにプリンスの「横浜!」のスキャットも混じり合い、目を閉じると彼がステージのどこにいるのか浮かんでくる現場感覚を醸し出す。この感覚は、歓声を後から被せた放送音源やオフィシャル盤では決して味わえないオーディエンス録音だけのもの。それも実際に熱狂しながら、楽音が負けない極上録音でしか味わえない音世界です。そんな本作の凄まじい現場感覚は、再生直後から始まります。実は開演前からDATが回っており、会場に流れる「本日はTHE ARTIST FORMERLY KNOWN AS PRINCE公演にご来場いただきまして、誠にありがとうございます。お客様へのお願いです……」というアナウンスや待ちわびる観客の空気感もたっぷりと吸い込んでいる。しかも、それが長い! 当日の開演が遅れたのかは分かりませんが、なんと36分にも及ぶのです。さらに、いざ開演を告げるプリンスのオープニング音楽が始まっても、これまた10分もある。もちろん、この開演パートは何度も聴くようなものではないと思いますが、もし時間があれば、ぜひ一度は飛ばさずにお楽しみ頂きたい。じわじわと募る期待と待ちきれない想い。そして、そんな気持ちが溜まりに溜まって「横浜、Prince Is Dead!!」と共に一気に爆発! 時間感覚と昂ぶりを観客と共有するからこそ、ショウの熱狂にももシンクロできるのです。そして、そうして開演したショウは、新たな黄金の世界が目も覚める鮮やかさで広がる。「Endorphinmachine」「Shhh!」「Now」と、“THE ARTIST”の第一弾となった当時の新作『THE GOLD EXPERIENCE』からの新曲が次々と披露されていく。もちろん、アルバムの再現ではなく、他のレパートリーも交えますが、前半8曲のうちなんと5曲が新曲。さらにアンコールもすべて新曲で占められ、『THE GOLD EXPERIENCE』の12曲中実に9曲(NPG Operatorは除く)が演奏される。それまでパープルだった彼が、ゴールドに生まれ変わった。その姿が強烈に叩きつけられるのです。ショウ後半には新曲以外のレパートリーも大量に演奏されますが、ここでもいつもの彼とは違う。“プリンスの死”を宣言した『COME』の「Letitgo」をはじめ、ジョーン・オズボーンの「One Of Us」や「Vicki Waiting」「Purple Medley」等々、彼の人生でもこの時期にしかやらなかった曲がたっぷりと聴けるのです。ワーナー・ブラザーズとの確執もあって、あまり顧みられることも少ない“THE ARTIST時代”。そのただ1回だけのジャパンツアー最終日を極上サウンドで捉えた名ライヴアルバムです。この時代もプリンスは唯一無二の輝きを放っていた。そして、その黄金色の姿を日本にも届けてくれていた。本作は、その確たる証。彼の人生を振り返る今だからこそ、聴いていただきたい全世界初公開の1本。 Live at Yokohama Arena, Yokohama, Japan 20th January 1996 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) Disc 1 (79:39) 1. Pre-Show Music 2. Opening 3. Endorphinmachine 4. Shhh! 5. Days of Wild / 777-9311 6. Now 7. Babies Makin' Babies 8. Race / Girls & Boys Jam 9. The Most Beautiful Girl in the World Disc 2 (76:12) 1. Pussy Control 2. Letitgo 3. Starfish & Coffee 4. The Cross 5. The Jam 6. One of Us 7. Do Me, Baby 8. Sexy MF 9. If I Was Your Girlfriend 10. Vicki Waiting 11. Purple Medley 12. 7 13. Billy Jack Bitch 14. I Hate U / 319 15. Gold Prince - Vocals, Guitar Michael Bland - Drums Morris Hayes - Keyboards Tommy Barbarella - Keyboards Sonny Thompson - Bass, Vocals Mayte Garcia - Dance