伝説的な録音家が渾身のハイパーサウンドで録音した2CD『OSAKA 1983 FINAL NIGHT』。(以下、別CD)スタッフによる静止シーンも生々しい名録音でしたが、本当の客席で起きていた異常事態はそんなものではありませんでした。怒号と悲鳴が飛び交い「喧嘩が起きそう」どころか、ブン殴ろうにも身動きが取れないという異様な現場。本作は、別2CDの見事すぎるサウンドでは捉えきれなかった、“本当の惨劇”をパックしたもう1本のドキュメント・アルバムなのです。そんな本作は、なんとキニーの未発表音源。今回、大元のマスター・カセットが発見された世界初登場音源なのです。キニー録音の端正サウンドで記録された現場は、もう開演前からして異様。無数のライヴ録音で聞き慣れた開演ムードとは明らかに異なり、「押すな!」「座ってー、下がれ」「座りぃな、もう」の怒声が飛び交う。ボウイが登場するや、怒り漂う空気から「キャー!」「ボウイー!!」の嬌声が大爆発! いや、本当に「爆発」。黄色いはずの声が火薬の炸裂音のようなのです。その開演の熱狂は、混乱に油を注ぎ、「痛いなぁ、ボケェ!」等の怒声があちこちで飛ぶ。近くのギャルの叫び声も「痛ぁーい!」なのか「嫌ァ!」なのか「ボウイー!!」なのか。もう悲鳴と絶叫と怒声の区別が付かない状態。キニーのスタッフもまともに録音できなかったのか、あちこちでテープがキュルキュルと歪む(それでも録音を続行した根性は凄い……)。ここで「Heroes」の中断とスタッフの静止シーンになりますが、ここも別2CDより長く収録されている。本編の解説で書き出した呼びかけに加えて……「ボウイのコンサートはみんなリラックスして見たいと言っています! ですから、もっとスペースをとってゆっくりと、ゆったりとしてください。分かりました? そうしないとコンサートまた途中で中断しますよ!? 分かりました? それとね、あと周りのお客さんね、周りのお客さんね、雰囲気の悪いとか、ちょっと状況のおかしいとかいう人がいれば、協力してそのお客さん出してください。いいですか、そうしないとコンサート始まりませんよ! いいですか、中央のところちょっと空けてください。余裕持ってください。ちょっとみんなね、下がってください。ボウイはそのように言ってるんだから!! そうしないとコンサート始まらないから! みんなね、自分の周りの、隣のお客さんを見て、どういう状況か、気分が悪いとか、倒れてるとか、そんなヤツは出して、みんなで協力してね、分かりました?」……と、長々と静止していたのです。しかも、その切迫した声。最後は半泣きなんじゃないかという声で必死に叫ぶのです。さらにボウイの「ゲンキですか? 落ち着いてください」も本編では聴けない言葉です。別2CDでは、再開したショウはクールなボウイそのものでしたが、客席の現場はカンタンには収まっていなかった。グダグダと言葉を考えるより、本作から聞こえる観客の声をお伝えした方が良いでしょう。少々、列挙させていただきます。「誰かカップヌードルとか投げたやろ!」「見えへんな、こんなとこ!」「みんな見えんやろ、アホウ!」「座りぃや! 座れ!!」「お前ら座れぇええ!!!!」「お前、座れぇ、ボウィイイイ!!」「座らないでよ、ちょっと上にぃ!」「ちょっと何やるん!?」「見えへん、ちょっとどいて、見えないやんかぁ、ボウぃぃ……」これでもホンの一部。冒頭は女声の怒号がほとんどでしたが、この頃になると悪化する現状に耐えかねたのか、男声(ギャルの連れ?)も怒り出しています。そして「Golden Years」に差し掛かる頃には警備員も乱入。「倒れてる人いない!?」「おい、警備、お前ちょっと待てぃ!」「空けてください、空けてください!」「それより前の人に座るように言ってよ!」「ちょっと病人出るから道空けて!」「しばけや! しばけ!」「前が座ってないんだからしょうがないでしょ」「髪の毛引っ張ることないでしょ!」「血ぃ出たよ、血……」まるで暴走族の大乱闘、いえ、もはや暴動です。ボウイのクールなライヴがBGMのように流れる中、怪我人や暴力沙汰にまで発展しているのがハッキリと記録されている。「Let's Dance」辺りから徐々に落ち着き始めますが、それでも怒号はあちこちで聞こえる。怒りの言葉と共に「Let's Dance」のソンガロングを「Ah, ah, ahhhh」と歌う観客たち。幾多のアーティスト/バンドの無数のライヴをお伝えしてきましたが、ここまで異様な現場はかつてありませんでした。コンサートの後半は秩序を取り戻しますが、そうなるとキニー録音の見目麗しいクリア・サウンドが一気に広がる。そして、ラストの「Modern Love」のエンディングで「もう終わりぃ……!?」とつぶやくギャル。怒声にまみれた冒頭とあまりにも違う素直な言葉と共に、本作は幕を閉じます。この脈絡のなさもまた、脚本のない現実なればこそです。これこそ、当時の現場で起きていた事件そのもの。凄惨な客席をキニーのクリア・サウンドで描ききったドキュメント・アルバムにして、超・名録音たる別2CDさえも超える衝撃の異色作。こんな現場を目の当たりにしながら歌い続けたボウイのプロ根性、そして別2CDの奇跡ぶりまで身に染みる猛烈な記録。ぜひ、あなたもこの事件現場の目撃者となってください………。
Live at Expo Commemoration Park, Osaka, Japan 30th October 1983 PERFECT SOUND(from Original Masters)
Disc 1 (59:15)
1. Intro 2. Look Back In Anger 3. Heroes (breakdown) 4. Announcement #1 5. Heroes (restart) 6. What In The World? 7. Golden Years 8. Fashion 9. Let's Dance 10. Breaking Glass 11. Life On Mars? 12. Sorrow 13. Cat People (Putting Out Fire) 14. China Girl 15. Scary Monsters (And Super Creeps) 16. Rebel Rebel
17. White Light/White Heat
Disc 2 (54:52)
1. Announcement #2 2. Station To Station 3. Cracked Actor 4. Ashes To Ashes 5. Space Oddity 6. Band Introduction 7. Young Americans 8. Fame 9. Star 10. Stay 11. The Jean Genie 12. Modern Love
David Bowie - Vocals Carlos Alomar - Guitar Earl Slick - Lead Guitar Frank and George Simms - Vocals Carmine Rojas - Bass Tony Thompson – Drums Dave Lebolt – Synthesizer The Borneo Horns: Lenny Pickett - Saxophone Steve Elson – Saxophone Stan Harrison – Saxophone





























