結成10周年を掲げ、黄金の70年代を総括していた“TORMATO TOUR”。その前半期を代表するサウンドボード・アルバムが最高峰クオリティで登場です。その代表サウンドボードが記録されたのは「1978年9月19日リッチフィールド公演」。このショウはFM放送され、古くからサウンドボード録音が数々の名作を生み出し、マニアに愛されてきた大定番です。本作は、そんな有名サウンドボードの最高峰を更新する1本なのです。もちろん、最大のポイントはクオリティにあるわけですが、まずはショウのポジション。結成10周年を祝った“TORMATO TOUR 1978-1979”の全体像から確認してみましょう。●1978年・8月28日-10月8日:北米#1(37公演)←★ココ★《9月26日『TORMATO』発売》・10月24日-28日:英国(6公演)●1979年・4月9日-5月8日:北米#2(27公演)・5月24日-6月30日:北米#3(32公演)これが70年代最後の輝きだったワールドツアーの概要。このツアーは公式作品『LIVE IN PHILADELPHIA』や最高傑作となる超名盤『WEMBLEY 1978 FINAL NIGHT』がお馴染みですが、本作はそのどれよりも初期。『WEMBLEY 1978 FINAL NIGHT』は「英国」レッグであり、『LIVE IN PHILADELPHIA』は最終盤「北米#3」の記録。それに対し、本作のリッチフィールド公演は、ツアー冒頭「北米#1」の20公演目にあたるコンサートでした。前述の通り、このショウには幾多の既発が存在するわけですが、その中でこれまで最高峰とされてきたのは『CLOSE ENCOUNTERS』でした。10年以上前に発掘された新マスターで、サウンドの鮮度がバツグンなだけでなく、既発ではカットされていた「On The Silent Wings Of Freedom」も収録。「Heart Of The Sunrise」に1分20秒ほどの欠けがありましたが、それも別マスターで補填され、フルショウをシームレスに完全収録。完全体ライヴアルバムの衝撃を振りまいた。当時の専門誌でも「ようやくコンサートの全編が聴けるようになった」「この時期の録音としては驚異的なクオリティ」「ミックスのバランスも良く、低域から高域まできれいに出ており、このツアーではベストかもしれない」と大絶賛されました。それだけの衝撃作だけに大好評のうちに完売・廃盤。長らく入手困難となっていました。本作は、そんな『CLOSE ENCOUNTERS』のマスターを再デジタル化し、さらに最新リマスターでブラッシュ・アップした決定盤なのです。そのアップグレードぶりには目を見張る。『CLOSE ENCOUNTERS』からして過去最高だったわけですが、本作は一層クッキリ。もちろん、無闇矢鱈な音圧稼ぎをしているわけではありません。混濁気味だった各音域をキチンと整理し、各楽器の輪郭を浮き立たせた。それにより、塊に聞こえていたベースやバスドラでさえ鮮やかにセパレートし、レンジも拡大して聞こえるようになったのです。さらに、マスターはテープの各面で若干サウンドが異なって記録されていたのですが、本作は統一感たっぷりで全編を貫いているのです。実のところ、この放送は大元から緻密なミックスと言うよりは、荒っぽい直結感が個性。それだけに、磨き上げた本作も「まるでオフィシャル」とはちょっとニュアンスが違うものの、だからこそ演奏とのシンクロ感が凄い。フランジャーのかかったベースが絡むスペーシーな感覚、「Awaken」で浮遊感を醸すジョン・アンダーソンの歌声……。全楽器の全ノートが鼓膜を飛び越えて脳みそに直接流し込まれるような感覚に襲われるのですが、特に圧倒的なのはスティーヴ・ハウとリック・ウェイクマンのキーボード。その乱舞する妙技が隅から隅まで超鮮明。華麗なソロはもちろんのこと、1フレーズのニュアンスからちょっとしたエフェクトに至るまで脳みそに飛び込んでくる。ベースに絡んでスペーシー感覚を演出するギターのエフェクトや豪快なパン。逆にリックはソロパートでまったくエコーのない「ヘンリー八世」を披露し、指使いの細かなタッチまではっきりと分かる。それらすべてが耳を澄ませて複雑なアンサンブルを解きほぐす必要さえなく「バッキングでこんな弾き方してたのか」と発見し続ける123分間なのです。 “TORMATO TOUR”と言えば『WEMBLEY 1978 FINAL NIGHT』にトドメを刺すわけですが、あの大名盤は言わばオフィシャル代わり。音楽作品としての美しさを究めたライヴアルバムでした。それに対し、本作は(ちょっとだけ)異形な大傑作。磨き抜かれた均整の美よりも、生演奏そのもののスリル、妙技をえぐり出し、目の前に叩きつける。美世界に翻弄するのではなく、力強くグイグイと引き込む強烈なステレオサウンドボード・アルバムなのです。 70年代の総括でもあった“TORMATO TOUR”。その血気盛んな序盤の演奏が脳みそにねじ込まれるアンサンブル・アルバム。 Live at Richfield Coliseum, Richfield, Ohio, USA 19th September 1978 STEREO SBD(UPGRADE) Disc 1(68:29) 1. Young Persons Guide To The Orchestra 2. Siberian Khatru 3. Heart Of The Sunrise 4. Future Times/Rejoice 5. Circus Of Heaven 6. Time And A Word 7. Long Distance Runaround 8. Survival/The Fish 9. Perpetual Change 10. Soon 11. Don't Kill The Whale 12. Madrigal 13. Clap Disc 2(54:36) 1. Starship Trooper 2. On The Silent Wings Of Freedom 3. Wakeman Solo 4. Awaken 5. I've Seen All Good People 6. Roundabout STEREO SOUNDBOARD RECORDING Jon Anderson - Vocals Steve Howe - Guitars Chris Squire - Bass Rick Wakeman - Keyboards Alan White - Drums