キャリア50周年ツアーで日本を訪れたギター仙人ウリ・ジョン・ロート。その最新ライヴアルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「2019年1月23日:心斎橋BIGCAT」公演。その極上オーディエンス録音です。当初はドゥギー・ホワイトや元SCORPIONSのフランシス・ブッフホルツも同行する予定でしたが、直前になってキャンセル。代わってやはり『IN TRANCE』『VIRGIN KILLER』時代のドラマーだったルディ・レナーズ、BON JOVIのフィル・X(思いっきり意外でしたが、ウリとは旧知の仲だそう)が参加して無事に開催されました。まずは、その日程の中でショウのポジションを確かめてみましょう。 ・1月21日:中野サンプラザ・1月22日:名古屋ダイヤモンドホール・1月23日:心斎橋BIGCAT 【本作】・1月24日:神田明神ホール(ACOUSTICA) 以上、全4公演。このうち最終日はアコースティックの特別公演“ACOUSTICA”でしたが、残り3公演はエレクトリック。本作の大阪公演は、その最後のコンサートだったわけです。そんなショウを記録した本作は、まさに超・極上のオーディエンス録音。手がけたのは当店でお馴染みの名手“西日本最強テーパー”氏。以前からHR/HM系の名作を連発されてきましたが、最近はさらにレベルアップ。「これのどこがサウンドボードじゃないんだ!?」と驚くような超ダイレクト&詳細サウンドを連発。本作は、そんな進化の最新版。距離感が丸でない密着感はオーディエンスの常識外で、鳴りの美しさはサウンドボード以上。それでいて肉感レベルの生々しさはオフィシャル盤ではあり得ない地平。もう、録音方式が何であろうと関係ない。ロック・コンサートの記録として、2019年の最先端をひた走る超極上サウンドなのです。 【第1部:フレクシグも登場する濃厚ソロセット】 そのサウンドで天翔るスカイギターが描かれる……もう、これだけで100点満点のライヴアルバムなのですが、ショウはそれ以上だった。キャリア50周年を祝う集大成セットと豪華ゲストは、まるで“ULI JON ROTH FEST”。まずセットですが、ショウは大きく2部構成。第1部のメインはウリのソロ。「Sun In My Hand」「The Sails Of Charon」といった蠍団ナンバーも交えるものの、ELECTRIC SUN時代や「Sky Overture」「Starlight」といった名曲群がたっぷりと披露される。これがもう、凄いのなんの。ELECTRIC SUNも3枚全部から選ばれ、あの大曲「Enola Gay(Hiroshima Today?)」まで繰り出してくれるとは……。 さらに、ZENO! あの超名曲「Don't Tell The Wind」と「Eastern Sun」を演奏してくれるのです!! ウリの弟ジーノ・ロートは昨年、亡くなってしまいましたが、存命だったら今回のツアーにも同行する計画だったとか。結局、ZENOは来日公演が実現しないまま終わっただけに、兄の手で甦る超名曲は胸を締め付けずにはいられない。しかも、歌うのはマイケル・フレクシグ本人。今年62歳を迎えるだけに33年前と同じ艶とはいきませんが、あの超個性的な声質は健在。ZENOの2曲に加え、『SKY OF AVALON』の「Starlight」まで歌ってくれる。比較的コアな第1部でも、特濃で感無量の3曲。まさにハイライトです。そんなセットを綴る演奏がまた素晴らしい。東京公演ではショウの進行がやや間延びしていましたが、大阪は3公演目。ショウ運びもこなれてきており、緊張感が途切れない。素晴らしい名曲と演奏にたっぷりと浸りきれるのです。 【第2部:SCORPIONSナンバーの猛ラッシュ】 ディスク2からの第2部は10分に及ぶ独奏「Passage To India」でスタートするものの、メインはズバリ「蠍団」。アンコールを含め、11曲中8曲がSCORPIONSの名曲群なのです。もちろん、2015年の“SCORPIONS REVISITED”来日でも聴けた曲ばかりですが、今回メイン・ヴォーカルを務めるのはフィル・X。彼がまた、巧い! ドゥギー不参加の穴を埋める……と言うか、それ以上。TEMPLE OF ROCKの蠍団ナンバーは不安定に感じることもあったものの、フィルは余裕綽々。ドゥギーほどのハードロッキンな熱さはないかもしれませんが、滑らかで伸びやかな歌声は哀感たっぷり。それが暗い叙情の初期SCORPIONSナンバーに絶妙にマッチ。コーラスでも巧さは滲んでいましたが、十分にメイン・シンガーになれる歌声を聴かせてくれるのです。また、第2部は蠍団だけでなく、カバーも2曲演奏する。1つはTHE SHADOWSの「Apache」で、もう1つはボブ・ディラン……というか、ジミヘンの「All Along The Watchtower」。THE SHADOWSは意外な気もしましたが、どうやら13歳の初ステージで演奏した曲だそう。両親に買ってもらったという当時のギターを持ち出して想い出の曲を弾く。まさに50周年のアニバーサリー・ショウだからこそのシーンです。そして、アンコールのディスク3がまた素晴らしい。ここでも目玉は蠍団の「Dark Lady」と「Send Me An Angel」。ルドルフ・シェンカーが参加した東京・名古屋ならいざ知らず、不参加の大阪でも「Send Me An Angel」をやるとは……。もちろん、フィルの艶やかな歌声との相性はバツグン。再登場したフレクシグもコーラスに回り、スカイギターも泣きに泣く。本家SCORPIONSよりもグッとドラマティックで哀感マシマシなバージョンが味わえるのです。そして、ルドルフ不在の代わり?に大阪限定でセット入りした「Dark Lady」。これが13分に及ぶ拡大バージョンでして「荒城の月」まで飛び出す。今回のツアーはウリのキャリア50周年ではありますが、同時に『TOKYO TAPES』の40周年でもある。そのアニバーサリーに相応しい熱演が繰り広げられるのです。キャリア集大成の名曲群、感無量のフレクシグ、意外な収穫だったフィルの歌声、そして何より天翔るスカイギター。そのすべてを超極上サウンドで完全収録した3枚組ライヴアルバムです。まさしく“ULI JON ROTH FEST”と呼ぶに相応しい極めつけの1本。 Live at BIGCAT, Osaka, Japan 23rd January 2019 ULTIMATE SOUND(from Original Masters) Disc 1 (79:55) 1. Intro 2. Sky Overture 3. Indian Dawn 4. Electric Sun 5. Sun in My Hand 6. Icebreaker 7. Why? 8. Don't Tell the Wind 9. Eastern Sun 10. Starlight 11. The Sails of Charon 12. Enola Gay(Hiroshima Today?) Disc 2 (50:07) 1. MC 2. Passage to India(inc. Bohemian Rhapsody) 3. Apache 4. We'll Burn the Sky 5. In Trance 6. Virgin Killer 7. Pictured Life 8. Catch Your Train 9. Yellow Raven Disc 3 (32:49) 1. MC 2. Dark Lady (inc. Kojo No Tsuki) 3. Send Me an Angel 4. All the Watchtower Uli Jon Roth – guitar, vocals Niklas Turmann - vocals, guitar David Klosinski - guitar Simon Foster - bass, vocals Michael Ehre - drums Corvin Bahn - keyboards Michael Flexig - vocals Phil X - guitar, vocals Rudy Lenners - drums