ZEPのライブ史における名演の宝庫である1973年ヨーロッパ・ツアーの中でも最高峰の一つ、3月24日のオッフェンバッハ公演の再リリースが決定しました。そもそも聞き応えたっぷりの名演がゴロゴロと転がっている時期ですが、ことオッフェンバッハに関しては一連のサウンドボード録音の流出集中期の後で大きな存在感を放つ良質オーディエンス録音としてマニアから揺るぎない評価を得ています。例のサウンドボード音源はどれも「Dazed And Confused」以降の録音となっており、昨年リリースされた「HAMBURG 1973」などは正にそうした録音をフィーチャー、残りをオーディエンス音源にて補ったアイテムの典型でした。そんなサウンドボードでの記録でなくとも、最高のオーディエンス・アルバムとして記録された名音源が今回のオッフェンバッハ。このツアーのオーディエンス録音としては、これまた「VIENNA 1973」をリリース済の3月16日と並んで非常に良好なクオリティを誇ります。16日のウィーンはモノラルでオンな骨太感でしたが、オッフェンバッハはステレオで広がりのある音質が魅力。それ故にアナログLPの時代から現在に至るまで多くのアイテムを生み出してきた名録音な訳であり、この「recorder 1」をメインとしつつ、それでいて随所に「recorder 2」をパッチしたネット上の最長バージョンを元にしたのが2015年にリリースされた「OFFENBURG 1973」でした。「recorder 1」に生じていたいくつかのカットがその編集によって見事に埋められたのはもちろん、同音源におけるジレンマだった「Dazed And Confused」における音像の揺れを補正していたことが大きなポイントかと。このバージョンを元にし、さらリリースに際して超高域のヒスノイズを抑え、より聞きやすく仕上げたのが「OFFENBURG 1973」。元々1973年ヨーロッパ・ツアーにおける名音源のベスト・バージョンへと昇格した本タイトルは瞬く間にSold Out。改めてオッフェンバッハの人気の高さを思い知らされた次第です。Sold Outしてしまったアイテムに再発の声が寄せられることは当然ですが、それと同時に「VIENNA 1973」と同様、こうしたZEP名ライブ音源は常に入手しやすい状況として流通させるべき。実際に先のウィーンや「L.A. FORUM 1971」といったタイトルは再発したことが多くのマニアを喜ばせました。これらと同じようにZEPライブ音源の定番です、ましてや「オッフェンバッハ」という地名を上げただけでもマニアには1973年アノ名演だと通じてしまうほど。そのベスト・バージョンとなればアイテムの安定供給は必須だと言えるでしょう。よって2015年のリリース時にアイテムとして完成されていたこともあり、今回の「OFFENBURG 1973」は新たに手を加える箇所もなく、あくまでストレートな再発となります。とにかくオッフェンバッハは本当に演奏が素晴らしい。この後のアメリカ・ツアーと違い、聞いていてはっきりわかるほどナチュラルなテンションの高さ(つまり薬臭くない)は73年ヨーロッパどの公演でも大きな魅力ですが、それ以上にこの日はショーの序盤からペイジとボンゾは絶好調。「Over The Hills And Far Away」のギター・ソロからして二人の阿吽の呼吸が絶妙で、なおかつテンションが超高い。ペイジの織りなすフレーズに対して臨機応変にリズムで応戦するボンゾという構図はもはや芸術の域。ここを聞くだけでも他の日以上に抜きん出た演奏の一日となった理由が分かってもらえるはず。また一曲だけのアコースティック・パート「Bron-Y-Aur Stomp」演奏中では「That’s The Way」のフレーズが盛り込まれる場面からもペイジの余裕が伝わってくるというもの。そんな彼らが爆発するのがおなじみ「Dazed And Confused」。ここオッフェンバッハではサンフランシスコ・セクションに到達する前でもペイジとボンゾが一戦交えており、しょっぱなから激アツな演奏。その後のジミヘン「Machine Gun」風の展開は1973年ヨーロッパにおいて定型のバトル・パターンですが、さらにプラントのスキャットも加わった三位一体インプロヴィゼーションのパートでもペイジとボンゾの駆け引きは壮絶。特に前者のギター・プレイの技巧にはあ然とさせられるほど。そして「Whole Lotta Love」の5分辺りでボンゾが炸裂させたアッパーなリズム展開も強烈でした。こうした一点の曇りもない彼らの技巧ばかりに聞き入ってしまいがちですが、体調的に問題を抱えていた73年初頭と違い、もはや変わってしまった声質なりに力強い唱法をものにしたプラントの存在感もこの日は大きな役割を果たしています。おかげで激しい演奏の駆け引きだけでなく、ライブ全体の完成度が高いというのもオッフェンバッハの大きな魅力。そして前回のリリースからも早くも三年以上が経過し、本タイトルを探し求めていたマニアも多かったのでは。今度こそ、1973年ヨーロッパ・ツアー稀代の名演のベスト・バージョンをどうぞお見逃しなく! Live at Ortenauhalle, Offenburg, Germany 24th March 1973 Disc 1 (51:24) 1. Intro. 2. Rock And Roll 3. Over The Hills And Far Away 4. Black Dog 5. Misty Mountain Hop 6. Since I've Been Loving You 7. Bron-Y-Aur Stomp 8. The Song Remains The Same 9. The Rain Song Disc 2 (75:36) 1. Dazed And Confused 2. Stairway To Heaven 3. Whole Lotta Love 4. Heartbreaker