「GLASS HOUSES IN JAPAN」のリリース時、専門誌において「音質は武道館をも上回る」と評されたのが4月20日の大阪府立体育館。その秘訣は武道館と比べ、よりダイレクト感が押し出された音像でしょう。中でもリバティ・デヴィートのドラムの迫力が凄まじく、ビリー・ジョエル・バンドを長きに渡って支えたドラマーの卓越したプレイがサウンドボードでもこれほどの生々しいドラミングが味わえないのでは?というほどリアルな状態で記録されているのです。それでいてリバティのドラムが全てを覆いつくしてしまうような飽和したバランスでもない。あくまでビリーとバンドのエンジン全開なステージをリアルな音質で捉えてくれたことが大きな魅力かと。とはいってもリリースから5年以上が経過した今、二つの公演がまるで違った質感のオーディエンス録音であるのも事実。全体のバランスの良さやクリアネスなどは武道館に軍配が上がるように思いますが、1981年のオーディエンス録音としては驚異的な音圧で捉えてくれたのがこちらの音源の素晴らしさ。もちろん観客の盛り上がりや、またしても「ビリー!」という呼び声ばかりが飛び交う昭和感丸出しな会場の空気をたっぷりと吸い込んでくれている。その独特な録音状態は武道館と違う体育館という会場だからこそ生み出されたように感じられます。そして忘れてはならないのは、この来日から約15年後に悲劇的な最後を遂げたベーシスト、ダグ・スティッグマイヤーの見事なプレイまでも捉えてくれているということ。大いに盛り上がったアンコールではメンバー紹介の前に一瞬だけ「Gimme Some Lovin'」のイントロが弾かれますが、それを鳴らしたのが他ならぬダグのベース。結果として絶頂期のビリー・ジョエル・バンドのリズム隊の素晴らしさを伝えてくれる極上オーディエンス・アルバムだとも呼べるのです。そんな絶頂期のバンドとファンの大歓声に支えられたビリーは武道館に負けじと余裕たっぷりで最高のパフォーマンスを披露。何しろダイレクト感に溢れた録音状態ですので、彼が「Movin’ Out」を「Movin’ Sushi(笑)」と替え歌してみせた様子がばっちり聞き取れてしまいますし、「Piano Man」を始める前のじらしに至っては武道館よりもエスカレート。それに対して一喜一憂するオーディエンスの反応も本当に微笑ましい。また、この日も我が国におけるビリーの聖歌たる「Honesty」を何の前触れもなく、実にあっさり弾き始めてしまうのが何度聞いても面白い。その場面を始めとして、この日も「THE GLASS HOUSES」までのめくるめく名曲の数々がズラリと演奏されていて、それを聞き惚れずにはいられないレベル。あの頃は誰もが聞き漁った名曲がここまでぎっしりと詰まっているライブと言うだけでも、改めてビリーの偉大さを思い知らされます。こんな贅沢な内容の全盛期ビリー・ショーと、武道館と同じように昭和っぽさ丸出しな臨場感とのコントラストがあまりにも楽しい。昔はそれが当たり前でしたよね。そしてこちらも今回の再リリースに当たって音源を見直し、元々ウォーミーさに長けた質感をより押し出し、それでいて武道館と比べてやや目立ったヒスノイズを抑える形に仕上げています。繰り返しますがリズム隊を始めとした演奏のダイレクトさが魅力の音源です。今回の新たな仕上げによって、その別格な迫力がリアルに感じられるのではないでしょうか。実際に大阪府立体育館のステージ近くで観ていたオーディエンスが耳にしたサウンドや空気感が正にこの音源のような状態だったはず。そんなリズム隊の迫力やビリーのハイエナジー・パフォーマンスだけでもあっという間に聞き終えてしまう最高のオーディエンス・アルバム。それがライブ後半の「All For Leyna」や「Big Shot」のようなハードなナンバーになると、バックメンバーの中でも特に人気が高かったラッセル・ジェイバースとデヴィッド・ブラウン両人のギター・サウンドまで切り込んできて凄まじい迫力。そんな盛り上がりに打ちのめされた観客の一人が、最後の最後で「ビリー」でなく感極まって「サンキュー!」と叫ぶのも微笑ましい!笑 Live at Osaka Prefectural Gymnasium, Osaka, Japan 20th April 1981 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) Disc 1 (40:16) 1. Intro 2. You May Be Right 3. My Life 4. Honesty 5. Movin' Out (Anthony's Song) 6. Piano Man 7. Don't Ask Me Why 8. Vienna 9. The Stranger Disc 2 (61:51) 1. Stiletto 2. Until The Night 3. Root Beer Rag 4. She's Always A Woman 5. Just The Way You Are 6. Sleeping With The Television On 7. All For Leyna 8. Sometimes A Fantasy 9. Big Shot 10. It's Still Rock And Roll To Me 11. I'll Cry Instead 12. Band Introduction 13. Only The Good Die Young 14. Souvenir Billy Joel - Vocal & Piano Russell Jayors - Guitar David Brown - Guitar Richie Cannata - Horn & Saxophone Doug Stegmeyer - Bass Liberty Devitto - Drums