パンデミックのあおりを受けてローリング・ストーンズ今年のツアーは中止となってしまいましたが、世界中のマニアの留飲を下げてくれるかのごとく「GOATS HEAD SOUP」の各種デラックス・エディションがリリースされました。古くから存在が知られていたジミー・ペイジ参加の「Scarlet」を目玉として、いくつものレア・トラックが日の目を見るという機会にも。マニアの間ではブートでおなじみだった未発表曲は「Save Me」から晴れて「Criss Cross」というタイトルにて正式リリース。今までいくつものミックス違いが発掘されてきただけに、これまでブートで同曲を聞き続けていたマニアには感慨深いことでしょう。ここ数年の間、ストーンズ側もアルバム単位でレア音源の発掘に乗り出してくれたことは諸手で歓迎できる事実なのですが、元が未完成なまま放置されていたトラックだったということもあり、どうしてもリリースに際して新たなミックの歌やほかのメンバーの演奏が付け加えられてしまう。オフィシャルで出すからには避けられない作業だというのも理解はできるのですが、やはりマニアであれば未完成であっても当時の状態で聞きたい。むしろ今回のリリースが実現したからこそ、過去に出回っていた未完成な状態のアウトテイクや別ミックスの存在が見直されるいい機会になったかと。そこで今回リリースされるのが「GOATS HEAD SOUP」に関するミックス違いやアウトテイクをまとめた集大成。こうしたコンセプトは既に海外製アイテムで存在していましたが、今回は元音源に辿って一曲一曲の音質や定位の問題などを丁寧にレストア。さらにアルバム収録曲とデラックス・エディション関連の楽曲を一枚目、アウトテイクを二枚目に分けたことで内容が充実したのはもちろん、資料としてのとっつきやすさも向上したのです。例えば一枚目のオープニングを飾った「Dancing With Mr.D」の初期ミックスのバージョンはギターソロの後でモノラルに墜ちてしまうのですが、今回はモノ化してしまった後の違和感を可能な限り修正。また元テープに転写してしまったと思われる関係のない音楽も削除。この点だけでも今回のリリースの音源セレクションとレストア作業がいかに念入りに行われたかを実感してもらえるでしょう。また昔からモノラルな状態の音源しか出回っていない「Silver Train (I)」の初期テイクなどはそのレンジ狭めな音質をこれまた可能な限り改善してみせました。以前からグリン・ジョンズのラフミックスやアセテート音源でおなじみアルバム収録曲の別ミックスは完成直前なレベルの状態が多く、パッと聞いた感じでは違いが分かりづらいものもありますが、「100 Years Ago」はニッキー・ホプキンスのピアノが入っておらず、よりソリッドな演奏に映る。それに比べると「Angie」はピアノがステレオのセンターに配置されたミックス、「Winter」はミックのボーカルに加えらえたエコーが控えめといった違いはヘッドフォンでじっくりと聞きこんでいただきたいもの。その点「Criss Cross」は今回オフィシャルでリリースされたバージョンとはまるでミックスが違うので解りやすい。今回のリリースに際してミックによる新たな歌と歌詞が付け加えられて「All The Rage」に生まれ変わった「You Should Have Seen Her Ass」もここではレコーディング当時に彼が歌ったラフなボーカルと共に当時の状態を聞けます。そうしたおなじみの音源はもちろん、今回はよりマニアックな別ミックスも追加収録。それが「Star Star」の南アフリカ盤のバージョン。放送禁止用語が含まれたコーラス部分に倫理の厳しい南アフリカが独自に処理を施したというもの。よって「star fucker」の「fucker」が南アフリカ的にはNGだった訳で、その単語を潰してしまうという大胆な処理が施されたのです。よってそこが歌われるたびに「star(ボコッ)」、「star(ボコッ)」という低音のウーハーのようないびつな音が鳴るというおかしな仕上がり。これもオフィシャルでリリースされた音源ではありますので、存在を知っていたマニアはおられることでしょうが、それを実際に聞いたとなれば少ないはず。そこで今回はオリジナルの南アフリカ盤から丁寧にトランスファーしてCD化しています。二枚目にはアルバムからのアウトテイクをこれまた丁寧にまとめています。どれもモノラルでアルバム収録用の作業が進行しなかったテイクばかりですが、それらはメロウな曲調が多いというのがこれらアウトテイクの特徴でしょう。後に「TATTOO YOU」で再利用され晴れてリリースされた「Tops」と「Waiting On A Friend」の当時のオリジナル・トラックを聞けるのは特に貴重で、前者はボーカルが入ることなくお蔵入り、後者はミックがファルセットで仮歌を入れていたことが解ります。これらがまとめて、しかもベストの音源を厳選して聞けるというのも実に便利。そして二枚目残りのパートには「GOATS HEAD SOUP」リリース時に作られたミュージック・ビデオのサウンドトラックを収録。どれもミックがカラオケをバックに生歌を披露しているので音声だけでも聞き応えは十分。しかもモノラルながら最高の音質で収録しています。こうしてデラックス・エディションでは網羅できない音源を丹念にまとめたコンピレーションが本タイトルのコンセプトなのですが、先のDXを補完する意味でタイトルはパート2! THE ROLLING STONES - GOATS HEAD SOUP RARITIES & ALTERNATIVE MIXES: PART 2(2CD) Disc 1 (66:57) 01. Dancing With Mr.D (Alternate Early Version) (a) 02. 100 Years Ago (Different Stereo Mix) (a) 03. Angie (Different Stereo Mix) (a) 04. Silver Train (I) (b) 05. Silver Train (II) (c) 06. Silver Train (III) (c) 07. Hyde Your Love (Different Stereo Mix) (d) 08. Winter (Different Stereo Mix) (a) 09. Star Star (South Africa LP censored mix) (a) 10. Criss Cross (I) (d) 11. Criss Cross (II) (d) 12. Criss Cross (III) (a) 13. Criss Cross (IV) (a) 14. Criss Cross (V) (a) 15. All The Rage (Different Stereo Mix) (e) Disc 2 (49:58) 1. Fast Talking, Slow Walking (e) 2. Windmill (I) (e) 3. Windmill (II) (f) 4. Separately (e) 5. Tops (e) 6. Waiting On A Friend (e) BONUS TRACKS 7. Dancing With Mr.D (PV Soundtrack) (g) 8. Silver Train (PV Soundtrack) (g) 9. Angie #1 (PV Soundtrack) (g) 10. Angie #2 (PV Soundtrack) (g) 11. Angie (Soundtrack Remix) (e) (a) Dynamic Sound Studios, Kingston, Jamaica (25-30 November and 6-21 December 1972 & Island Studios, London 28 May - 20 June 1973) (b) Olympic Sound Studios, London & Stargroves, Newbury (21 October onwards & November 1970) (c) Island Studios, London (28 May ? 20 June 1973) (d) Olympic Sound Studios, London (23 & 26 May 1973) (e) Dynamic Sound Studios, Kingston, Jamaica 25-30 November & 6-21 December 1972 (f) Village Recorder, Los Angeles (27 January - 5 February 1973) (g) LWT Studios, London (30 June 1973)