トータル・コンセプトの歴史的名作『ジェラルドの汚れなき世界』を発表し、プログレッシヴ・ロックの急先鋒に躍り出た1972年のJETHRO TULL。かの大名盤を拡張再現した当時のショウを伝える極上ライヴアルバムが登場です。そんな本作が吹き込まれたのは「1972年6月23日:ロサンゼルス公演」。マイク・ミラードの傑作群でもお馴染みな“THE FORUM”2DAYSの初日で記録された絶品オーディエンス録音です。このツアーはJETHRO TULLファン……いえ、すべてのプログレ者にとって永遠の憧れ。何しろ、名盤『ジェラルドの汚れなき世界』を完全演奏するどころか、各人のソロタイムや寸劇まで盛り込んで拡張。オリジナル・アルバムの2倍近い75分以上の超大作として演奏していた。それこそ、GENESISの“眩惑のブロードウェイ・ツアー”やYESの“海洋地形学の物語ツアー”とも並ぶ究極のコンセプト・ツアーなのです。しかも、それほどの極めつけツアーにもかかわらず、公式ライヴアルバムはおろかフル・サウンドボードも残されなかった。そんなプログレ者の乾きを潤し、飢えを癒してきたのが数々のオーディエンス録音たち。本作もその1つであり、ツアーベストの候補にも挙げられる傑作なのです。その詳細に触れる前に、まずはショウのポジション。1972年と言えば、私たち日本人にとって奇跡の初来日が実現した時代でもある。ここで奇跡のコンセプト・ツアー概要を紐解き、当時の状況を確かめておきましょう。1972年・1月6日-2月12日:欧州#1(34公演)《3月3日『THICK AS A BRICK』発売》・3月2日-29日:英国(25公演)・4月14日-5月14日:北米#1(31公演)・6月2日-7月1日:北米#2(29公演)←★ココ★ ・7月5日-19日:オセアニア/日本(10公演)・10月13日-12月8日:北米#3(33公演)1973年・1月29日-3月26日:欧州#2(16公演)《3月『A PASSION PLAY』制作》 これが“THICK AS A BRICK TOUR”の全体像。伝説の初来日はアルバム発売の4ヶ月後に実現したわけですが、本作のロサンゼルス公演はその約1ヶ月前。「北米#2」の21公演目でした。この日はコンピ名盤『LIVING IN THE PAST』英国発売の当日でもありました(米盤はもう少し後の10月31日)。そんなショウで記録された本作は、まさに絶品・極上の銘品。とにかくクリアでダイレクト感たっぷり。開演前や一部の曲間で会話声も聞こえるオーディエンス録音には違いないのですが、力強い芯には距離感がまるでなく、輪郭も微細部までクッキリ。ヘッドフォンで耳を澄ませればホール鳴りにも気づくものの、それも曇りを起こさず、スカスカになりがちな中低音もたっぷりとした手応え。リアルな現場感からサウンドボードと間違えはしませんが、かと言って「70年代オーディエンス」という事実からイメージするサウンドともかけ離れている。聴いていると客録だということも忘れる……そんな次元の名録音なのです。そんな絶品のサウンドで描かれるのは、世紀のコンセプト・ショウ。JETHRO TULLというと膨大なレパートリーと変幻自在なアレンジでイメージが掴みづらかったりもしますが、このツアーは極めてシンプル。ここでカンタンに整理しておきましょう。DISC 1:ジェラルドの汚れなき世界・Thick As A Brick 1-5 DISC 2・スタンド・アップ:A New Day Yesterday・アクアラング:Cross-Eyed Mary/Aqualung/Wind-Up/Locomotive Breath (Hard-Headed English General) ……と、このようになっています。本作の1枚目は丸々拡張版の「Thick As A Brick」。当時のオーディエンス録音だとディスク2枚にまたがる事も珍しくないのですが、本作では1枚目に綺麗に収まっているのが嬉しい。そして、2枚目は当時のグレイテスト・ヒッツ。ただし、こちらも通常コンサートよりはかなりすっきりとしていて、「A New Day Yesterday」以外はすべて『AQUALUNG』ナンバー。上記だと4曲演奏しているようにも見えますが、実際には「Wind-Up」の合間に「Locomotive Breath」と未発表曲「Hard-Headed English General」を盛り込む組曲スタイルで、超大作のDISC 1にも負けないコンセプチュアルなショウなのです。かの大名盤を創り上げた5人のバンド・ポテンシャルそのままに紡がれる『ジェラルドの汚れなき世界』の拡張コンサート。プログレ者なら誰もが憧れる究極のショウを現場体験させてくれる極上のライヴアルバムです。歴史的な『ジェラルドの汚れなき世界』ツアーを伝える名作ライヴアルバム。「1972年6月23日ロサンゼルス公演」の極上オーディエンス録音です。とにかくクリアでダイレクト感たっぷり。ホール鳴りも曇りを起こさず、スカスカになりがちな中低音もたっぷりとした手応え。70年代オーディエンスの常識外となる名録音で、75分以上に拡張された「Thick As A Brick」組曲を現場体験できる。プログレ者必聴・必携の名盤です。 Live at The Forum, Los Angeles, CA, USA 23rd June 1972 PERFECT SOUND Disc 1(78:21) 1. Thick As A Brick 1 2. Thick As A Brick 2 3. Thick As A Brick 3 4. News & Weather 5. Thick As A Brick 4/Drum Solo 6. Thick As A Brick 5 Disc 2(60:21) 1. Cross-Eyed Mary 2. A New Day Yesterday 3. Aqualung 4. Wind Up/Guitar Solo 5. Locomotive Breath / Hard-Headed English General 6. Wind-Up (reprise) Ian Anderson - Vocal, Flute & Guitar Martin Barre - Guitar John Evan - Keyboards Jeffrey Hammond - Bass Barriemore Barlow - Drums