公式に一般リリースされながら、知る人しか存在自体に気づいていないという激レア別バージョンの『おせっかい』。そんな幻の1枚がリリース決定です。そんな本作の正体とは、2016年に制作された『おせっかい』のリミックス盤です。このバージョンほど「秘宝」と呼ぶに相応しいものはありません。通常、「レア物」というのは生産終了から長い時間が経っていたり、注目されずに生産数自体が少なかったりするために結果としてレアになる。しかし、本作は違う。制作され、堂々と販売されながら意図的に「隠された」。レアになるべくしてなった貴重バージョンなのです。 【厳重に秘匿されていた公式リミックス版】事の起こりは一大事業『THE EARLY YEARS 1965-1972』ボックスでした。その長大な内容については省略しますが、リリース計画が公表された当時、話題となったのが『雲の影』と『おせっかい』のリミックス盤でした。その仕上がりが大いに期待されたものの、その後仕様が変更。映画『ライヴ・アット・ポンペイ』のサウンドトラック・アルバムに差し替えとなり、『おせっかい』のリミックス版はあえなくお蔵入りとなった……はずでした。ところが、違った。実はボックス内の『1971: REVERBER/ATION』Blu-Rayディスクに隠しトラックとして収録。一般商品として販売されたのです。ここで「お、そのボックスなら持ってるぞ!」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、それで話は終わらなかった。実は、隠しトラックの「隠し方」が普通じゃなかったのです。普通の隠しトラックは「全部聴くとアイコンが出てくる」とか「決まった順番に再生すると見える」とかですが、『おせっかい』のリミックス版はどこをどう操作しようと再生できない。実はデータの中にだけ残されており、Blu-Rayディスクをリッピングしていたマニアが偶然発見した。まさしく「厳重に隠されたトラック」であり、もちろん現在に至るまでCDフォーマットでのリリースが実現していないのです。 【超・立体化された『おせっかい』の世界】もちろん、隠されているだけなら意味はありません。その中身が正真正銘の「お宝」だから秘宝なのです。そのサウンドは、目も醒める鮮やかさ。パッと聴いただけでも猛烈にクリアになっており、1音1音の存在感が凄い。もちろんフロイドですから無闇矢鱈な音圧稼ぎで潰したりしていないのですが、1ノートが立ち上がって盛り上がり、伸び、そして消音していく……その経過にドラマがあるのです。そして、それ以上なのが立体感。そもそも2016年リミックスは5.1chサラウンドを想定しており、そのために1つひとつの音がアチコチに飛びまくる。その効果が一番分かりやすいのは「エコーズ」のイントロでしょうか。あの「ピーン」と響く効果音。従来盤も響きの空間感覚がありましたが、本作ではグルグルと回る。それも1つひとつの「ピーン」が違うところで鳴るのではなく、1回の「ピー」で脳みそをグリグリかき回してくるのです。もう1つ挙げるなら「吹けよ風、呼べよ嵐」のイントロも凄い。従来から風音にリアルな空間が感じられましたが、本作の風には「向き」があり、遠くから来て近づき、遠くへと吹き抜ける「距離感」がある。それは演奏音にもあり、ベース・リフがあらゆる方向から耳元に飛んでくる。もちろん、それはイントロだけに留まらず、あらゆるフレーズ/効果音が飛び交いまくるのです。本作では5.1chサラウンドを2chステレオ用に変換してはいますが、それでも十分に立体感が味わえる。ぜひとも、ヘッドフォンでお聴き頂きたい1枚なのです。一般リリースされた商品に隠され、特別なソフトウェアを使用しないと存在も確認できない大名盤のリミックス版です。2016年だからこその目眩がしそうな立体感で彩られた『おせっかい』。Remixed by Andy Jackson (46:51) 1. One Of These Days 2. A Pillow Of Winds 3. Fearless 4. San Tropez 5. Seamus 6. Echoes