久々のThe David Bowie Archive Seriesは1974年「DIAMOND DOGS」ツアーの超貴重オーディエンス録音を一挙二タイトルリリース!最初に紹介しますは9月のLA、ユニバーサル・アンフィシアターでの連続公演から7日の模様を収録。この一連の公演と言えば何とっても5日の公式録音が昔から「STRANGE FASCINATION」として定番であり、今や「CRACKED ACTOR (Live Los Angeles '74)」として晴れてオフィシャルリリースされています。ところが連続公演だった割に(きっかり一週間行われています)、他の日の模様を収録したアイテムというのがまったく存在しない。それは一重にCD初期の時代から当時としては稀な流出サウンドボードの発掘が絶大だったから。それでもマニアであれば他の日の演奏を聞いてみたいと思うのは当然のこと。それが一年を通してセットリストはおろか、バンドメンバーやツアーのコンセプトそのものが変わってしまった「DIAMOND DOGS」ツアーであればもっともっと聞いてみたくなってしまう。そこで今回リリースされるのが7日の音源なのですが、残念ながら録音が第二部からという不完全版。それにもかかわらずDBAからリリースされるにはもちろん訳がある。アナログブート時代で一連のLAの模様を垣間見させてくれた唯一のアイテム、それは名レーベルWizardoがリリースした「BOWIE 74 LIVE」というEPでした。数あるWizardoのアイテムの中でもEPというフォーマットでリリースされたのは後にも先にもこれだけ。今回リリースされるのは、何とこのEP用にレーベルの主だったジョン・ウィザードが録音した音源のマスターカセットという超貴重なバージョン。ブートレグのパイオニアであるTMOQのケン・ダグラスは今から10年前に自身の軌跡を振り返ってくれましたが、大人なケンと違い思春期からWizardoを経営していたジョンの半生は波乱万丈。80年代いっぱいでリリースを止めた後にドラッグ中毒になるなど、まるでロッカーのようでした。しかし世界中がコロナの脅威に怯えた2020年、皮肉にもそうした社会情勢が長年に渡って口を閉ざしていたジョンが公の場で自身の軌跡を語ってくれるようになったのです。そうした恩恵を受け、ボウイのコア・トレーダーの間だけに出回っていたのが今回の音源。残念ながらショー前半部分はジョンがEP制作時に編集して残されていない模様。それだけに後半部分が現存していたとは不幸中の幸いでした。これで不完全な録音がどうしてDBAシリーズの一環として限定プレスCDにてリリースされるのか理解してもらえることかと。音源の存在自体は知られていたものの、極めて限られたマニアにしか所有が許されなかったジョンのマスター音源を提供してくれたのは、これまでDBAシリーズを監修してきた英国のボウイ研究家。その録音の絶妙なビンテージ感、これまさにマスターカセットならではもの。モノラルでどっしりとした音質で鮮度も素晴らしい。程よく距離感のある音像が生み出す聞き心地も素晴らしい。録音は「Space Oddity」からスタートしていますが、演奏が始まる前から周囲の盛り上がりが凄まじく、何とジョン自身が「うるさいよ」と注意するという。この盛り上がりのせいでジョンがアルバム単位でのリリースを諦め、あえてEPという形を選んだのでは?ボウイがゴンドラに乗って受話器に向かって歌う「Space Oddity」の模様もまた、その盛り上がりから窺い知ることが出来ます。このことからも解るように、LAでの一連の公演は、あの伝説的な「DIAMOND DOGS」セットを使用した最後の時期だったのです。当初はボウイが大きな野心を持って導入したステージセットでしたが、あまりに壮大であった一方で当時のテクノロジーが追い付けないという問題を抱えていました。おかげで一回のショーですべてが作動してくれた日が少ないというありさま。そこで9月からのツアー再開に際してはセットを使わないと提言したものの、マネージメントから説き伏せられてメディアに注目されていたLA連続公演だけは「DIAMOND DOGS」セットを使うことにしたという。その成果がBBCドキュメンタリー「CRACKED ACTOR」でした。一方バンドのリズム隊が7月までのハービー・フラワーズ&トニー・ニューマンのブリティッシュ・ロック・コンビからサンタナにいたダグ・ローチとスライのバックだったグレッグ・エリコというコンビに交代したことで、当時のボウイが求めていたであろうブラック寄りのディープなサウンドへと進化している様子もジョンの録音からしっかり伝わってきます。特に「Big Brother - Chant Of The Ever Circling Skeletal Family」の流れはオフィシャル「DAVID LIVE」で聞かれる7月までの軽快な演奏とはまた違ったストレートな魅力がある。そして本編終了後にはマスターが存在しない「BOWIE 74 LIVE」をEPから丁寧に収録。この時代のリリースは当局の追及から逃れるためにプレス工場が一定せず盤質が悪いことが多かった。そんな盤のスクラッチノイズを極力抑えたクリーンな状態で収録。これだけでもマニアには画期的なリリースとなるはずですが、ここで聞かれる「All The Young Dudes」ではボウイが笑いながら歌っており、その和やかな雰囲気がとても楽しい。正にDBAからのリリースに打ってつけなジョン・ウィザードによるビンテージ感とナチュラルな奥行きたっぷりな音質が魅力の超貴重音源、これぞマニアが聞きたかった音! Universal Amphitheatre, Universal City, Los Angeles, CA, USA 7th September 1974 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND Jon Wizardo Master Cassette / Previously Uncirculated (56:33) 1. Intro 2. Space Oddity 3. Future Legend 4. Diamond Dogs 5. Big Brother 6. Time 7. The Jean Genie 8. Rock 'n' Roll Suicide 9. John, I'm Only Dancing (Again) 'Bowie 74 Live' Wizardo EP Universal Amphitheatre, Universal City, Los Angeles, CA, USA 7th September 197410. All The Young Dudes 11. Cracked Actor 12. It's Gonna Be Me