スタジオ作の賛否両論とは対照的に、ライヴアクトとしては絶頂期を迎えていた“HOT SPACE Tour”。その中でも「ハプニング・ショウ」として知られる現場を伝える名録音が進化。拡大版となって永久保存決定です!そんな本作に吹き込まれているのは「1982年4月10日ストックホルム公演」。そのオーディエンス録音です。一般イメージとは真逆な「“HOT SPACE Tour”が絶頂期」というのもコレクターの方なら実感されると思いますが、ワールド・ツアー全体が素晴らしかったというわけでもありません。その辺の事情をご説明するためにも、まずは当時のスケジュールから紐解き、併せてショウのポジションも確かめておきましょう。 《3月『HOT SPACE』完成》・4月9日-5月22日:欧州(26公演)←★ココ★《5月21日『HOT SPACE』発売》・5月29日-6月5日:英国(4公演) ー1ヶ月半後ー・7月21日-9月15日:北米(33公演 ー1ヶ月後ー・10月19日-11月3日:日本(6公演) 【奇跡の春だった“HOT SPACE Tour”最初の記録】これが1982年のQUEEN。「欧州(+英国)→北米→日本」というわりとオーソドックスな流れですが、この中で特別視されているのは「欧州」と「英国」。連日連夜が名演ばかりという奇跡の春でした。なぜそうなったのかは諸説あるところですが、第一に肉体的な充実期であった事。特にフレディのヴォーカリストとしての能力を迎えており、活動休止を経た“THE WORKS Tour”より好調な日の頻度も多ければ、ピークも高かったのです。第二に、サポート・キーボーディストを迎えた事。再始動語はスパイク・エドニーがレギュラー参加しますが、最初にサポートを帯同させたのは“HOT SPACE Tour”。北米/日本ではフレッド・マンデル、欧州では元MOTT THE HOOPLEのモーガン・フィッシャーが参加しました。これにより、フレディの自由度が爆増。単にピアノ演奏をしないだけでなく、「ピアノに戻らなくては」の意識からも開放。ステージを自在に闊歩することができるようになり、その自由が嬉しくてたまらないという爆テンションを生み出し、その爆裂フレディが観客や他3人のテンションまでグイグイと引き上げる好循環だったのです。そして、第三が『HOT SPACE』への自信。上記をご覧の通り「欧州/英国」ツアーはアルバム発売前後。発売前の「欧州」では自信を覗かせ、発売後の「英国」では賛否両論を跳ね返さんとする気概を見せた。その後の「北米」以降では決定的な不評に意気消沈していったようですが、「欧州/英国」の時点では新章を切り拓く活力に漲っていたのです。そして、本作のストックホルム公演は序盤も序盤。ツアー開始2公演目の極初期であり、音の記録が残る“HOT SPACE Tour”最古のライヴアルバムなのです。 【何が起こるか分からないハプニング・ショウの全景】前置きが長くなってしまいましたが、そんなショウを記録した本作は史上初の完全版でもある。録音自体は以前から知られてきたのですが、途中カットの多い不完全版でした。しかも(後述しますが)ショウの重要ポイントで音が切れてしまう残念な録音だったのです。しかし、最近になって従来とは異なる別録音が新発掘。カット・ポイントが異なることもあり、組み合わせてショウのほぼほぼ全景が楽しめるようになったのです(ただし「Now I'm Here」のイントロのみ両音源で録音漏れ。99.99……%ではあっても100%ではないので「ほぼほぼ」なのです)。同じ事を考えるマニアはいるもので、実際にネットでも組合わせ完全版が話題を呼んでいますが、これは出来がイマイチでした。繋ぎがブツブツと雑で、サウンドも合わせる気ゼロ。音色も位相もズレて「ただ繋いだ」だけの違和感だらけだったのです。そこで登場したのが本作。音源2種を大元にまで遡り、丁寧に再編集。さすがに別録音なので「切り替えがまったく分からない」とまでは言いませんが、「いつの間にか変わっていた」レベルの自然な仕上がりを実現。違和感なくフルショウに没頭できる音楽作品にまで昇華させたのです。そうして生まれ変わった準・完全版が殊更嬉しいのも、ショウ自体がハプニングとサプライズの連続だからこそ。新曲「Action This Day」「Staying Power」の初期演奏やデビュー以来の定例だったメドレーの解体など序盤からフレッシュですが、ショウが進むほどどんどんスリリングになっていく。例えば、中盤に差し掛かったところ辺りの「We Will Rock You」。この位置というのも珍しいですが、実はこれは予定外。フレディがコール&レスポンスを楽しんでいたところ、観客側が自然に「We Will Rock You」を歌い出し、ロジャーもそれに乗っかって唐突に始まってしまう。普通ならグダグダに終わりそうなところですが、フレディの「Two, three, four!!」のカウントで見事に「Fat Bottomed Girls」へ繋がっていく。まさに絶頂のライヴバンドだからこその奇跡のようなカッコ良さを聴かせるのです。そして完全版の恩恵が最大限に発揮されるのが「Love Of My Life」。従来録音ではギターソロが感動的に盛り上がってきた矢先にカットしてしまい「なぜ、ココで……」と歯がゆい想いをしましたが、本作はその後もばっちり。感動の大合唱と共に締めくくられるフィナーレまでシームレスに楽しめるのです。ブライアンと言えば、その直後の「Save Me」。観客が「Mustapha! Mustapha!」と大合唱で要求しつつ、それを無視して強引に「Save Me」をスタート。ところが、ブライアンの準備ができていなかったのかピアノが入らない。フレディは歌詞を引用しつつ、「It didn't start off so fucking well!(アタマからトチるのかよ!)」と怒鳴っているのです(もちろん、すぐに再スタートして大感動の演奏を聴かせてくれます)。さらにさらに、約10分に及ぶ「Liar」がブチかまされたり、「Crazy Little Thing Called Love」のイントロ的に激レアな「Not Fade Away」が披露されたり……。以前から「一瞬も聴き逃せないショウ」として有名でしたが、その「一瞬」が大量増加しているのです。一般には知られていない絶頂の“HOT SPACE Tour”の中でも、マニアだけが知っていたハプニング・ショウ。その醍醐味が大幅増量した準・完全版の誕生です。奇跡の春の幕開けにして、コレクター冥利の権化のようなフルライヴアルバム。「HOT SPACE」ツアー2日目、「1982年4月10日ストックホルム公演」の全景オーディエンス録音。途中カットの多い従来マスターをベースに、新発掘の別録音で補完。ショウのほぼほぼ全景(「Now I'm Here」のイントロのみ両音源で録音漏れ)が楽しめるようになりました。ネット版よりも格段に完成度の高い編集が素晴らしく、観客とのコールから即興的に始まる「We Will Rock You」や途中で終わっていた「Love Of My Life」の完全形、ブライアンのミスにフレディがブチ切れる「Save Me」、超激レアな「Not Fade Away」等々、何が起こるか分からないハプニング・ショウを全景で楽しめる。コレクター冥利の権化のようなフルライヴアルバムです。Johanneshovs Isstadion, Stockholm, Sweden 10th April 1982 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND(2 Source Mix) Disc 1 (53:06) 1. Flash ★0:00 - 0:11 補填 2. The Hero 3. Tie Your Mother Down 4. Action This Day 5. Play The Game 6. Somebody To Love 7. Staying Power ★3:59 - 4:05 補填 8. Get Down, Make Love 9. We Will Rock You (improvisation) 10. Fat Bottomed Girls 11. Love Of My Life ★2:39 - 3:44 補填 12. Save Me Disc 2 (60:33) 1. Keyboard/Guitar Solo 2. Liar 3. Not Fade Away 4. Crazy Little Thing Called Love 5. Bohemian Rhapsody 6. Under Pressure 7. Now I'm Here ★冒頭欠落 - ソース2も欠落なので補填無し。 8. Dragon Attack 9. Now I'm Here (reprise) ★0:57 - 3:12 補填 10. Another One Bites The Dust 11. Sheer Heart Attack 12. We Will Rock You 13. We Are The Champions 14. God Save The Queen