本作が記録されたのは「1980年8月15日ドニントン・パーク」。そう、“第1回MONSTERS OF ROCK”を前日に行われた現場リハーサルを記録したオーディエンス録音です。思わず「オーディエンス録音」と書いてしまいましたが、それは種別での話。当然、現場には観客などおらず、この録音も(恐らく)スタッフがマイク録音したもの。以前から知られているものではありますが、本作ではそのベスト・マスターからCD化されています。 【DISC 1前半:メンバーが少しずつ参加していくサウンドチェック】本作は2枚組に分かれており、ざっくり「DISC 1=サウンドチェック」「DISC 2=リハーサル」という感じ。ただし、厳密に整理されて収録されているわけではなく、DISC 1は「まだメンバーが揃っていない時刻の音出し」がメインになっているだけです。そして、その生々しさこそが最高。英国ロック史を塗り替える巨大フェスティバルを目前に控えた現場は、リラックスとも緊迫とも言えない独特な雰囲気に包まれ、最後の準備に追われるスタッフ達が着々と作業を進めていく。冒頭の「Soundcheck 1」ではドニントン名物の航空機の爆音も収録されており、「あぁ、正しくドニントン!」のムード全開なのです。その「Soundcheck 1」から「Soundcheck 5」までは、ギターやキーボード、ドラムが、それぞれ思い思いに音を確かめていく。単にローディが「音を出しているだけ」というものもあれば、メンバー本人が好きなフレーズをつま弾いたりと様々。メンバー達がいつ来たのかは分かりませんが、明らかに1人また1人と現場に到着しており、グラハムも姿を見せる「Soundcheck 3」では、バンドがすでに「Weiss Heim」を演奏。「Soundcheck 4」や「Soundcheck 5」ではコージー本人の試奏が楽しめます。 【DISC 1後半+DISC 2:メンバーが揃っての通しリハ】そんなサウンドチェックが約27分ほど続きますが、DISC 1の6トラック目から一気に雰囲気が変わる。いよいよバンド全員が集合し、通しリハーサルに入るのです。もちろん、ライヴ本番に較べればラフな部分が多いのですが、それでもグラハムのヴォーカルやコージーのドラムは強烈ですし、1曲1曲をしっかりと演奏していく。凡百のライヴアルバムより遙かに強力な生演奏がブチかまされるのです。しかも、サウンドも凄い。本編プレス2CDも歴史的な名録音ではありますが、こちらは観客の居ないリハーサル。ステージのすぐ側で録音しているらしく、猛烈にオンでド密着なのです。その内容がまた本番とはひと味違っていて良い。「Love's No Friend」に続いては、ドンとリッチーの「ブランデンブルグ協奏曲」が聴けますますが、実際のステージでは「Since You Been Gone」へ流れる所を、ここでは「Weiss Heim」を演奏(コージーもしっかり参加しています)。前述の「Soundcheck 3」でもリッチーやドンが演奏していたわけですが、通しリハーサルでも繰り返し演奏されている。これがリハーサルならではの「遊び」だったのか、ライヴ本番でもやるつもりで試していたのかは定かでありませんが、そんなウラ読みも楽しいシーンです。DISC 2に入るとバンド演奏の「Over The Rainbow」から「Stargazer」へのメドレーへ。「Stargazer」でのグラハムは歌詞やメロディがあやふやな部分が散見されますが、リッチーはリハとは思えない気合の入ったソロを聴かせてくれる。そして演奏は徐々に熱気を増していき、「Lost In Hollywood」から「A Light In The Black」のキメへと続く辺りで本番さながらのド迫力に達する(その一方リッチーのソロはかなり適当になっていて、そのチグハグな感じもリハっぽくて面白いのです)。またドラムソロの後のサウンドチェックでは再び「Overture 1812」が聴けますが、ここではテープのみの再生。本番ステージではあり得ないリハならではの雰囲気を楽しめます。そして、ラストでは再度「Stargazer」をリハーサル(バンドの連携を確認するためか、ここでは曲後半から演奏が始められています)。グラハムの歌が入ったかと思えば、途中からはカラオケになったり、キーボードとコージーだけになったりと、メンバーそれぞれが楽しんで演奏している感じが良い。「MORのStargazer」と言えば伝説中の伝説ですが、リハーサルでも最大の聴き所でしょう。巨大スペクタクルのフェス本番とは違うリラックスしたムードと、英国最大のロックフェス誕生を目前に控えた緊張感。双方が混じり合った独特な雰囲気で通しリハを楽しめる「裏舞台アルバム」です。この時のみの「Weiss Heim」など美味しいシーンも連発しますし、RAINBOW云々を差し引いても「歴史的フェスの裏側」を覗き込む醍醐味がたっぷり。Donington Park, Castle Donington, England 15th August 1980 TRULY AMAZING SOUND Disc 1(44:25) 1. Soundcheck 1 2. Soundcheck 2 3. Soundcheck 3 4. Soundcheck 4(Drums & Keyboards) 5. Soundcheck 5(Drums & Keyboards) ここからバンド・リハ 6. Over The Rainbow/Eyes Of The World 7. Love's No Friend 8. Guitar & Keyboard Solo 9. Weiss Heim★ Disc 2(41:42) 1. Over The Rainbow 2. Stargazer★ 3. Keyboard Check 4. Lost In Hollywood 5. A Light In The Black/Guitar Solo/Ode To Joy 6. Keyboard Check 7. Drums Solo incl. 1812 Overture 8. Soundcheck 9. Stargazer★ Ritchie Blackmore - Guitar Graham Bonnet - Vocals Roger Glover - Bass Don Airey - Keyboards Cozy Powell - Drums