伝説録音をブラッシュアップする復刻シリーズの最新弾。“IN THE FLESH Tour”の最高傑作を「GRAF ZEPPELIN」による高精度マスタリングで磨き込んだ究極盤が登場です。【フロイドの一時代を象徴してきた超・名録音】そんな本作に記録されているのは「1977年5月9日オークランド公演」。その伝説的オーディエンス録音です。本稿に目を留められた方なら恐らくは何かしらの既発をお持ちであろう定番中の大定番なわけですが、ライヴアルバムという「点」がツアーという「線」のどこにあるのかは意外と浸透していない事もある。良い機会ですので、『ANIMALS』時代の略歴でポジションも確かめておきましょう。《1月21日『アニマルズ』発売》・1月23日ー2月4日:欧州#1(9公演)・2月17日ー3月1日:欧州#2(11公演)・3月15日ー31日:英国(9公演)・4月22日ー5月12日:北米#1(12公演)←★ココ★・6月15日ー7月6日:北米#2(14公演)これが1977年のPINK FLOYD。“WISH YOU WERE HERE Tour”はツアー終了後にアルバムが出ましたが、『ANIMALS』は発売後にツアー開始。春先までの欧州ツアーと、その後の北米ツアーで構成されていました。北米ツアーは約1ヶ月のオフをはさんで二分されており、本作のオークランド公演は前半の終盤。「北米#1」の10公演目にあたるコンサートでした。このショウは“IN THE FLESH Tour”でも格別の知名度を誇る象徴公演なのですが、その要因は何と言っても超・名録音が残された事に尽きる。そのクオリティと既発の豊富さはFM放送にも匹敵し、歴史の歩みと共に進化。当店でも『OAKLAND』『DEFINITIVE OAKLAND』『OAKLAND 1977 1ST NIGHT』といった歴代の既発群が各時代の最先端・最高峰サウンドを更新してきました。本作は、その2021年版なのです。【偏執狂レベルの高精度マスタリング】そんな本作のコンセプトは高精度マスタリング。同時リリースとなる『ULTIMATE MILLARD(Sigma 286)』でも同じでしたが、この録音もすでに大元マスターが発掘済み。ジェネ的なアップグレードは物理的に行き止まりになっており、ステージは「磨きの違い」に移っている。そして、本作ではヴィンテージ録音のアーカイヴに定評ある「GRAF ZEPPELIN」がマスタリングを担当。これまでにない精度の磨き込みを行っているのです。もちろん「磨き」は「加工」ではありません。むしろ、その逆の方法論で貫かれている。その方法論を言葉にするなら「現場音の再現」。リマスターというと原音をイジくり回して耳障りを派手にするケースもありますが、当店ではそういう無粋なマネは御法度。あくまでもマスター自体が保持してきた鳴りを重視し、ピッチ/位相のズレやテープ自体の物理的劣化など、「乱れ」を補整していく。言わば、絵画の修復作業に通じる方法論に徹しているのです。そして「GRAF ZEPPELIN」は莫大な作業量に裏打ちされた精度がズバ抜けている。ピッチ補整では数%のズレも見逃さず、マスター劣化で生じるランダムな変化にも対応。プチノイズも耳の聴覚と目の波形というダブルチェックを数十回繰り返し、位相ズレの修正は1/1000秒まで追究している。例えば、本作の「ユージン」。当店の『OAKLAND 1977 1ST NIGHT』は既発群の中でも最高峰として知られてきましたが、それでも「ユージン」の位相が微妙にズレており、ピッチも1%(!!)高かった。波形編集の経験がある方ならピンと来ると思いますが、1%のズレは人間の聴覚では判別できない次元(位相ズレの方はステレオ感の微妙な違いで認識できるかも知れません。既発をお持ちの方は本作と聴き比べてみてください)。しかし、本作は「分からないから放置」ではなく、「一見見えない塵も積もれば山になる」の発想で補整。そこまで徹底追究しており(誤解を恐れずに言うなら)やや偏執気味とさえ言える執念が滲むマスタリングなのです。【「良い音」よりも上の次元に存在する「現場の音」】そしてもう1つ重要なのは、最終目標が「(聞こえの)良い音」ではなく「現場の音」であること。もちろん、音楽作品として「良い音」を追究しているわけですが、微妙な最終判断は歴史考証の次元で下している。つまり、単純に1つの録音を磨くのではなく、長年に渡ってPINK FLOYDの……もっと言えば、FLOYD以外の70年代のあらゆる記録を手掛けてきた知識と経験を活かしている。例えば、本作は原音からホンの僅かに低音をブーストされていますが、それも「1977年の機材ならこういう出音」「この会場ならこれくらい響く」まで検証した上での判断です。そして、この判断に好みを挟まない。公式/非公式を問わず、世の中の大多数のマスタリングが「エンジニアのセンス」頼みなわけですが、それに対してGRAF ZEPPELINはあくまで「理詰め」。つまり、本作に詰まっているサウンドは「作業人のエゴ」を排除し、「史実への飽くなき探究心」を最優先した結果たどり着いたものなのです。グダグダと細かい話に終始してしまって恐縮至極です。しかし、今さら1977年のオークランド録音に対して「オーディエンス録音の常識外」「まるでオフィシャル作品」と書き立てても何の参考にもならないでしょう。本作が立つ地平、そこにたどり着くまでの工程をご紹介するためには、ここまで緻密で重箱な話が必要だったのです。逆に言えば、この次元の違いに価値を見出して頂ける方こそ、本作の真価を体感して頂ける。そんな究極超えの究極盤「1977年5月9日オークランド公演」の伝説的オーディエンス録音。長年に渡ってアップグレードを繰り返してきた“IN THE FLESH Tour”の象徴録音ですが、本作はその2021年版。大元マスターをベースに「GRAF ZEPPELIN」による入魂のマスタリングを実施。ピッチ補整では1%のズレもランダムな変化にも対応し、位相ズレの修正は1/1000秒まで追究。人間の聴覚では判別できない乱れでも、「分からないから放置」ではなく「一見見えない塵も積もれば山になる」の発想で補整しています。また、各作業のさじ加減は時代考証で決定され。エンジニアの好みではなく「1977年ならこういう出音」「この会場ならこれくらい響く」という理詰めで追究。それこそ絵画修復と同じ視点/次元で磨き上げられた文化遺産アルバムです。 Live at Alameda Coliseum, Oakland, CA, USA 9th May 1977 ULTIMATE SOUND(UPGRADE) Disc 1(51:53) 1. Sheep 2. Pigs On The Wing Pt. 1 3. Dogs 4. Pigs On The Wing Pt. 2 5. Pigs (Three Different Ones) Disc 2(56:21) 1. Shine On You Crazy Diamond Pts. 1-5 2. Welcome To The Machine 3. Have A Cigar 4. Wish You Were Here 5. Shine On You Crazy Diamond Pts. 6-9 Disc 3(29:22) Encores 1. Money 2. Us And Them 3. Careful With That Axe, Eugene