絢爛の80年代にキーボード・トリオの理想を体現した奇跡にユニットEL&POWELL。その新たなマスターピースが登場です。そんな本作に吹き込まれているのは「1986年11月1日サンディエゴ公演」。コージー・パウエル自身が「10点満点中9.5点」と評した名演を記録した絶品オーディエンス録音です。EL&POWELLは、あまりにも奇跡的なまでのバンド・ポテンシャルを誇っていたにも関わらず、唯一作『EMERSON, LAKE & POWELL』と米国ツアー1回のみで消滅した泡沫のユニット。当店では、その歩みをさまざまな傑作クライヴアルバムでアーカイヴしてきました。まずは、当時のスケジュールを振り返り、そのコレクションを整理してみましょう。《5月25日『EMERSON, LAKE & POWELL』発売》・8月15日ー9月5日(9公演)*9月9日『BATTLE THEME(ニューヨーク)』*9月12日『HEADING FOR GLORY(フィラデルフィア)』・9月13日ー19日(4公演)*9月20日『MADISON SQUARE GARDEN 1986』*9月21日『SIREN SCREAMS(ピッツバーグ)』*9月22日『PITTSBURG 1986 2ND NIGHT』・9月23日ー10月2日(6公演)*10月4日『DEFINITIVE LAKELAND 1986』*大定番SBD・10月5日ー13日(3公演)*10月14日『DEFINITIVE BOSTON 1986』・10月16日:グランドラピッズ公演*10月17日『DETROIT 1986』・10月18日ー30日(9公演)*10月31日『HALLOWEEN 1986(コスタメサ)』*11月1日:サンディエゴ公演 ←★本作★・11月2日:フェニックス公演※注:「*」印は当店コレクションで楽しめるコンサート。これがEL&POWELLの歩み。この他にもアルバム制作に伴うスタジオ・デモやツアー・リハーサルなども発掘されていますが、公の全米ツアーは以上です。この中でも本作のサンディエゴ公演は最終盤。最後から2番目にあたるコンサートでした。そんなショウで記録された本作は、胸のすくクリアさが素晴らしい名録音。音色的にサウンドボードと間違えるタイプではありませんが、空気感が透き通っていてホール鳴りも芯に絶妙なダイナミズムを与こそすれ、まったくディテールを隠さない。特に高音は気持ちイイほどよくヌケ、清々しくさえあるのです。実のところ、この録音は以前にも流通した事のあるのですが、本作はそれとは異なる新発掘マスター。既発群はジェネ落ちをキンキン・マスタリングで誤魔化していましたが、本作は加工せずともクリアで美しく、瑞々しいナチュラルさが一層素晴らしいのです。そんなフレッシュ&クリアなサウンドで描かれるのは、奇跡のユニットがたどり着いたアンサンブルも素晴らしいフルショウ。EL&POWELLと言えば、レイクランド公演のFM放送が大定番として君臨しておりますが、あれは放送枠に沿って編集された不完全版(現在では公式化も実現していますが、放送より更にカットされた短尺編集でした)。良い機会でもありますので、ここで比較しながら整理してみましょう。EMERSON, LAKE & POWELL・The Score/Learning To Fly/Touch And Go/Mars, The Bringer Of War 70年代EL&P・Pirates/Knife Edge/From The Beginning/Lucky Man/Fanfare For The Common Man・メドレー:(Tarkus/Pictures At An Exhibition:★)(Still… You Turn Me On/Watching Over You:★)(Karn Evil/America/Rondo)その他・Dream Runner(★)/Creole Dance(★)※注:「★」印はレイクランド公演の大定番FMサウンドボードでは聴けない曲。……と、このようになっています。サウンドボードでも聴けない名曲群も美味しいですが、それ以上なのが演奏そのもの。冒頭でも触れましたが、当時のコージーは日記を毎日付けていまして、そこには毎晩のショウの出来も点数化していました。それによるとこの日の出来は「9.5点/10点」。本作から流れ出るのは、その自己評価を裏付けるような熱演なのです。1人ひとりの演奏に耳を傾ければビシッと締まったフレーズやオカズが絶え間なく続き、アンサンブル全体に意識を広げるとスキのない鉄壁ぶりにタメ息が漏れる。間違いなく泡沫のユニットではあったのですが、その短い歴史の間にも急速に進化しており、その最終形とも言える呼吸感が素晴らしいのです。ただし、コージーの自己評価に「?」となってしまうのが大曲「Pirates」。10分ほどは快調にかっ飛ばしていくのですが、いよいよクライマックス……というところでキーボード音が突如消滅。ドラムだけになって演奏そのものが崩壊してしまうのです。どうやら機材トラブルらしく、キースが釈明のMCを執ってサウンドチェック。しばらくしてエンディングだけ再スタートするのです。トラブルもそう長くはなく、再開した後もすぐに元のテンションを取り戻しはするのですが、何ともトホホでもある。本作が「熱演」であっても「名演」とは呼べない由縁なのです(トラブルがあっても高得点なのは、コージーからしたら「別に俺のせいじゃないし」といったところなのでしょうか)。奇跡のユニットEL&POWELLは、一体どこまで進化していたのか。本作は、その答えを記録した音の証拠品。そもそも公式アルバムだけでは計り知れないバンドではありましたが、その最終点は本作を聴かなければ分からないのです。単に優れたライヴアルバムという次元を超えた聴き応えが素晴らしい新発掘。「1986年11月1日サンディエゴ公演」の絶品オーディエンス録音。既発よりも若ジェネの新発掘マスターで、胸のすくクリアさが素晴らしい。空気感が透き通っていてホール鳴りも芯に絶妙なダイナミズムを与こそすれ、まったくディテールを隠さない。特に高音は気持ちイイほどよくヌケ、清々しくさえある。大曲「Pirates」で機材トラブルが発生したりもしますが、全体的にはコージー自身が「9.5点/10点満点」と日記に記すほどの大熱演。泡沫のユニットがどんな高みにまで進化していたのかをクリア・サウンドで教えてくれる新名盤です。University Amphitheatre, San Diego, CA, USA 1st November 1986 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND Disc 1 (63:48) 1. The Score 2. Learning To Fly 3. Pirates 4. Pirates (Breakdown due to technical difficulties) 5. Pirates (Soundcheck & Restart) 6. Knife Edge 7. Tarkus 8. Pictures At An Exhibition 9. Still…You Turn Me On / Watching Over You 10. Dream Runner 11. Creole Dance Disc 2 (44:58) 1. From The Beginning 2. Lucky Man 3. Fanfare For The Common Man 4. Touch And Go 5. Mars, The Bringer Of War 6. Medley : Karn Evil / America / Rondo 7. Finale