ストーンズ史上初のブートレグ「LIVER THAN」を生み出した1969年を始めとして、現在に至るまで彼らはアメリカ・ツアーの際に何度もオークランドでライブを行っています。そんな歴代オークランド公演の中で一切のアイテムが存在しないのが1989年。この年は69年と同じアラメダ・カウンティ・コロシアムを使い(おまけに日付もニアミス)、都合二回の公演が行われています。もちろんどちらの公演に関してもオーディエンス録音が残されました。にもかかわらず、これまでアイテムが一切登場しなかったのには理由があります。まずどちらもエクセレント・クラスのクオリティではなく、さらにどちらの日の録音にも欠損があった。それでも89年ツアーにおけるミッシング・リンクであることは間違いない。そこで今回のリリースに当たってこれらの音源を精査した結果、初日である11月4日が採用となりました。先にも述べたように、この音源は決してエクセレントと呼べるクオリティではありません。しかし89年ツアーで未だにリリースされていない音源というのは、このレベルのものが多い。つまり大会場ばかりを使用したことだけでなく、ストーンズの復活ツアーと言うことで大きな話題を呼んだことでテーパーが録音に向いた好ポジションを確保するのが難しかった。このことに関しては、当店が89年ツアーの音源をリリースするたびに触れてきた問題ではありますが、過去のシェア・スタジアムや最近のフォックスボロにアトランタといった、当店からの89年ツアー・アイテムと比べてワンランク落ちる音質であることは事実でしょう。そんな中で安心の音源コレクター「Krw_co」が最新トランスファーにてネット上に公開してくれたバージョンを元にしています。この日のオーディエンス録音に関するウィーク・ポイントとしてはまず、数か所でマイクの摩擦音が入ってしまったこと。さすがにボコボコと当たるような状態でなかったのが不幸中の幸いではありますが、元々が優等生クラスの音質だと呼べないだけにマイナスポイントでしょう。今回のリリースではこの問題を可能な限り緩和。もちろんすべてを解消することは不可能ですが、それでも格段に落ち着いた状態へと進化。もうひとつのマイナスは「Dead Flowers」と「Brown Sugar」の演奏中に生じてしまったカセット・チェンジによるカット。しかも前者にはそこにマイクの摩擦音まで入ってしまいます。そうしたカット箇所に関しては別音源が存在しない以上、カット箇所が目立たなくなる編集で何とか緩和させました。そして終始テーパーの周りが騒がしく、演奏の音像にはやや距離感があるのですが、それこそがこの音源の大きな魅力なのです。何しろこの日は壮絶な盛り上がり。アメリカのコンサート録音にありがちな、ただ騒がしいだけの臨場感とはちょっと違う。1981年以来となるストーンズのアメリカ・ツアーを待ちわびていたオーディエンスの熱狂は、耳障りというよりも、むしろ聴いていて興奮を呼び起こすほど。それに加え、オープニングBGMである「Continental Drift」が流れる前の会場アナウンスが捉えられていることがまた興奮を誘います。そもそも当店がリリースした名作オークランド94年ボックスにおいても同地での別格な盛り上がりが捉えられていたものですが、この日はそれをも上回ってしまう。ここまでからでも、今回の音源が決してエクセレントとは呼べなくとも、相当に聴き応えてのある音源であることが理解していただけたかと思います。しかしながら、さらに楽しくなるのが当時のストーンズ復活ソングとなった「Mixed Emotions」で起きた大合唱。いくら解散の危機を逃れたとはいえ、89年以降にストーンズがリリースした新曲でこれほどまでの盛り上がりを見せる場面もアメリカではレアなもの。この曲がきっかけとなって、その後は「Honky Tonk Women」や「You Can't Always Get What You Want」などで大合唱がエスカレートの一途を辿ります。中でも後者ではミックが合唱を促すコーラス部分どころか、最初からすさまじい大合唱。それでいて演奏を遮ってしまうほどのバランスではないのだから、ヘッドフォンで聞くと本当に臨場感に圧倒されてしまうでしょう。そして何よりも、これほどまでの盛り上がりを受けたストーンズの演奏も非常にボルテージが高い。観客とバンドの相互作用が極限にまで高まった盛り上がりを見せるのが「Brown Sugar」以降のライブ終盤レパートリー。同曲の「イエーイエーフー!」の大合唱など当たり前ですし、「Satisfaction」に至っては、あまりの盛り上がりからミックも極度にハイ・テンションなシャウトで立ち向かい、アメリカ・ツアーの中でもベスト・スリーに入ることは間違いないほどの名演にまで昇格したのです。確かに音質的にはクリアネスや音圧の秀でたオーディエンス録音だとは言えないかもしれない。だけれども、これほどまでに強烈なもりあがりを見せた89年アメリカ・ツアーというのも他にないのでは。ぜひ、ヘッドフォンで聞いて89年オークランド初日の興奮をたっぷりと味わってみてください! Oakland Alameda County Coliseum, Oakland, CA. USA 4th November 1989 TRULY AMAZING SOUND Disc 1 (74:43) 1. Announcements 2. Intro. / Continental Drift 3. Start Me Up 4. Bitch 5. Sad Sad Sad 6. Undercover Of The Night 7. Harlem Shuffle 8. Tumbling Dice 9. Miss You 10. Ruby Tuesday 11. Angie 12. Dead Flowers 13. Rock And A Hard Place 14. Mixed Emotions 15. Honky Tonk Women 16. Midnight Rambler Disc 2 (74:07) 1. You Can't Always Get What You Want 2. Before They Make Me Run 3. Happy 4. Paint It Black 5. 2000 Light Years From Home 6. Sympathy For The Devil 7. Gimme Shelter 8. Band Introductions 9. It's Only Rock 'n Roll 10. Brown Sugar 11. Satisfaction 12. Jumping Jack Flash 13. Outro.