『DEFINITIVE BOSTON 1975』と並び、「WISH YOU WERE HERE Tourの最高傑作」との賞賛を集める超名録音がブラッシュアップ。「GRAF ZEPPELIN」による執念マスタリングで磨き込まれた究極盤が登場です。その最高傑作録音に吹き込まれているのは「1975年6月17日ユニオンデール公演」。その超・極上オーディエンス録音です。このショウは古くから録音が知られ、長い録音史の間に何度もアップグレードを繰り返してきた定番中の大定番。恐らく、本稿に目を留められた方なら何かしらの既発を1つはお持ちなのではないでしょうか。本作も同じ大定番録音でありつつ、その頂を更新する1本なのです。【大元カセット・トランスファーから磨き直した最高峰更新盤】今回のアップグレードで要となるのは「大元カセットからの磨き直し」。ここで「あれ?」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。現在までのベスト・バージョンは2017年にリリースされた『NASSAU COLISEUM 1975 2ND NIGHT: CASSETTE MASTER』でして、そのタイトル通り、大元カセットは既にお馴染みになっている。ここで「じゃあ、前回とちょっと違うだけ?」と思われるかも知れませんが、そうではない。むしろ、これまでの「GRAF ZEPPELIN」リマスターよりも大幅にサウンドが異なり、パッと聴いて一発で「全然違う!」と驚く仕上がりになっているのです。そのサウンドをご説明するには、前回盤『Sigma 175』の知識も必要。ここで時計の針を2017年に戻してみましょう。それまでもアップグレードを繰り返してきた“ユニオンデール2日目”ですが、革命的に向上したのが2017年。大元カセットの発掘でした。その次元の違うアップぶりは二軍から一軍に上がったような大ジャンプであり、しかも一気に優勝候補の最有力とさえなるようなものでした。そして、その大アップに世界中のコレクターが歓喜。さらに究極を目指して独自のマスタリングを敢行するマニアも登場し、大元カセットだけでなく、何種類かのマスタリング・バージョンも公開されました。そして、その中でコレクター間でもっとも評価の高かったバージョンを使用したのが『NASSAU COLISEUM 1975 2ND NIGHT: CASSETTE MASTER』。もちろん、当店でも最終のチェック/仕上げも行っていましたが、ベースとなっていたのは海外マニアによって調整され、当時「これぞベスト!」の評判を集めたバージョンでした。それに対し、本作の土台となっているのは、大元の「カセット版マスター」。原点に立ち返り、「GRAF ZEPPELIN」がイチから磨き直したものなのです。その違いは、再生した直後から明らか。この録音は開演前のサウンドチェックから録音が始まっていますが、そこからして全然違う。本作では綺麗で細部まで鮮明な喝采がワッと沸き上がるのですが、前回盤『Sigma 175』を聴き直してみると遠くの風音のような塊になっており、それがシュワシュワとした歪みを伴っている。これは恐らく、前回版が意図的に喝采を削っていたのでしょう。パチパチの打音が1つずつ削除され、口笛も抑え込まれている。「オーディエンス・ノイズ」を文字通り「ノイズ」と捉え、不要な物としてカンナをかけるように削りとられているのです。もちろん、それ自体は是非もあるのですが、問題なのは思いっきり加工感が出てしまっていること。妙に引っ込んでゴワゴワとうねる喝采は、まるでスポンジの天ぷらでも揚げているような異音になっているのです。【微に入り細に穿ったマスタリングが生み出した“輝きの音”】分かりやすいので喝采の話が長くなってしまいましたが、これは肝心の演奏音にも言える。前回盤『Sigma 175』は中音域を大胆に絞り込み、低域を強力にブーストした仕上がりになっていました。これが演奏に凄まじい迫力を生み出し、世界中のマニアから賞賛を集める要因ともなっていたのです。しかし、それが明度に繋がってはいなかった。大元起こしのアップグレードだから「めちゃくちゃ鮮明!」と驚きましたが、ヘッドフォンで耳を澄ませ得ると鳴りが「ゴー」といううねりを起こしており、微細部を曇らせていた。特にバスドラはギターとベースの巨大な渦に飲み込まれ、ポコポコと段ボールを叩くような頼りない音だけが残っていたのです。それに比べ、本作は本来のナチュラル感が絶大。うねりを起こすことのない無音部はクリスタル・グラスのような透明感を湛え、ギターやベースが盛大に鳴っても他の音やスキマが綺麗に描かれている。これは「ギターやベースを犠牲にしている」という意味ではありません。例えばベースですが、前回盤は重低音の迫力を押し出して一聴目立っていましたが、実はアタック音の鋭さや輪郭は惚けていました。それに比べ、凡作はアタックのゴリゴリ感は鋭く立ち上がり、鳴りも決して長く回り込まず、演奏音の芯に金属光沢の輝きを与えるだけに留まっているのです。この鮮やかさは「大元カセットのナチュラル感」を最大限に尊重した結果ではありますが、決して「元のまんま」という意味ではありません。むしろ逆。これまでの「GRAF ZEPPELIN」リマスター作品でも触れてきましたが、その精度は半端ではない。ランダムな変化にもキッチリ対応するピッチ調整や、耳でも波形でもチェックを重ねるプチノイズ処理、1/1000秒のズレも見逃さない位相調整などなど。実際、大元カセットのナチュラル・トランスファーでは位相が左チャンネルへ(わずかに)寄っており、高周波ノイズもありましたが、そうしたポイントはすべて改善されている。さらに言いますと、前回盤『Sigma 175』では「Raving And Drooling」や「Echoes」の前に(海外マニアがマスタリングした段階で生まれたのであろう)わずかなギャップがありました。もちろん、本作は大元カセット・ランスファーからオリジナルで作業していますので、それもありません。この録音が最高傑作と呼ばれるのは、音の良さに加えて名演ぶりもあります。その素晴らしさは前回盤でもたっぷり感じられましたが、本作はさらに一層輝いて聞こえるのです。ド迫力最重視派の方なら前回盤を好まれるかも知れませんが、その迫力を演出するために犠牲になってきたディテールが本作にはある。1音1音の際立ちも、自然なリアリティも、クリスタル・クリアな鮮やかさも圧倒的に向上した最高傑作の更新盤です。その輝きを封じ込めた3枚組。「1975年6月17日ユニオンデール公演」の超・極上オーディエンス録音。何度もアップグレードしてきた伝統の名録音で、本作は大元カセット・トランスファーから「GRAF ZEPPELIN」が磨き直した最高峰更新盤です。海外マニア制作のマスターを元にした前回盤『Sigma 175』は重低音がかなり豪快に押し出された迫力サウンドでしたが、本作は大元のナチュラルさと鮮明さを最大限に重視。その上でピッチやノイズ処理、1/1000秒のズレも許さない最精度の磨き込みで圧倒的な鮮やかさを実現しました。1音1音の際立ちも、自然なリアリティも、クリスタル・クリアな鮮やかさも圧倒的に向上したツアー最高傑作の更新盤です。(リマスター・メモ)今回はMasterからデジタル化されたデータを改めてリマスター 前回盤『NASSAU COLISEUM 1975 2ND NIGHT: CASSETTE MASTER』はFlying -M- (Dec 2016)とされるものが元になっていた。今回盤と前回盤との違いですが、EQ処理が全く異なります。前回盤は低域の非常に出た迫力のあるサウンドである反面、異様な加工感がつきまとっていた。今回盤は低域の補強を中心にリマスターを施しつつも、全体のバランスも重視。元々あった現場の空気感を尊重したマスタリング。その他 位相修正(若干左寄り→センターに寄ってます)高周波ノイズ除去 (左chのみ 18khz、14khz の2本 但し元々音には影響ないですが、念のため)Live at Nassau Coliseum, Uniondale, NY, USA 17th June 1975 ULTIMATE SOUND(UPGRADE) Disc 1(59:01) 1. Introduction 2. Raving And Drooling 3. You Gotta Be Crazy 4. Shine On You Crazy Diamond Part 1-5 5. Have A Cigar 6. Shine On You Crazy Diamond Part 6-9 Disc 2(58:19) The Dark Side Of The Moon 1. Speak To Me 2. Breathe 3. On The Run 4. Time 5. Breathe (reprise) 6. The Great Gig In The Sky 7. Money 8. Us And Them 9. Any Colour You Like 10. Brain Damage 11. Eclipse Disc 3(29:37) 1. Audience 2. Echoes