Graf Zeppelin監修による1981年アメリカ・ツアーのラジオ放送用マルチトラック・レコーディングリリースも今回が最後。その締めくくりに相応しく、最後のタイトルはツアー全体の最終日でもあったハンプトンの二日目。81年同地でのライブは都合二回行われた訳ですが、何と言っても初日はストーンズ・マニアにとって映像と音源両方において永遠のアイテムとも言える有名公演ですし、今やオフィシャルでもリリースされている。何より「ハンプトン」と言えばそれらのマテリアルを指すほど全ストーンズファン必須のライブ・レコーディングであることに異論はないでしょう。その点、ツアー最終日でもあったハンプトン二日目の方はいずれかのリリースを踏まえたマルチトラック収録が行われはしたものの、結局日の目を見たのは「Just My Imagination」ただ一曲。その代わりにオーディエンス録音が古くから存在しており、それもトレーダー間に出回ってはいたものの、前日の映像と音源の存在が絶大すぎてリリースされずじまい。ある意味ではベールに包まれた1981年最終公演だとも。そんなマニア間のだけで語り継がれていたと言っても過言ではない音源がリリースされたのは今からちょうど10年前のこと。タイトルやアートワークは前日の放送音源のベストクオリティ盤との誉れ高きLP「GRANDE FINALE」から頂戴しつつ、それでいて内容は正真正銘ツアーフィナーレであるハンプトン二日目を収録したCDがリリースされたのです。遠めな音像ではあったものの、マニアなら問題なく楽しめるクオリティだった「GRANDE FINALE」のリリースは画期的だったのですが、それから二年後、例の「CONCERT VAULT」サイトにおける81年ツアーのラジオ用ラフミックス音源の大量配信の中にもこの日が含まれていたのだからさあ大変。世界中のマニアがCD「GRANDE FINALE」を喜んで聞いていたのも束の間、まさかのマルチトラック・サウンドボードでツアー最終日が聞けるようになってしまったという。既に11月末のローズモントから公演が続くとラジオ用収録の音質やバランスが安定するという傾向がみられましたが、それがツアー最終日ともなれば収録側は勝手知ったるもの。2013年に登場した数多くの81年ツアー音源の中でも音質やバランスの良さは抜きんでており、パッと聞いただけではオフィシャルのライブアルバムそのものにしか感じられないというほど高い完成度を誇りました。これまで再リリースされてきた81年マルチ音源は最近のローズモントやランドーバーで顕著だったように、オフィシャルにはないギター二人の荒々しい質感と存在感が魅力となっていました。その点ハンプトン二日目はそうした荒々しさも既に調整されており、後は各楽器のバランスを整えてしまえばそのままオフィシャルのライブアルバムとして成立してしまうほど優等生な状態で配信されたのです。マニアにとっては見果てぬ夢だったといっても過言ではないハンプトン二日目の素晴らしいステレオ・サウンドボード録音。2013年の配信の中においても大いにマニアを狂喜させたのが本音源かと。また本音源の登場によって、それまでハンプトン二日目から唯一のリリースであった「Just My Imagination」がライブアルバム「STILL LIFE」への収録に当たっては、例によって歌以外のパートが細かく刈り込まれていたことも判明する結果となりました。その執拗な編集によって演奏は約三分も短くなっており、中でも後奏のアーニー・ワッツによるサックス・ソロに至っては丸ごとカットされるという大胆なもの。元の演奏からあまりにもかけ離れた状態だった曲が、ここでは完全に聞けるという点も当時マニアを大いに喜ばせたものです。そして今回のリリースに際しては元の音質が極めて優秀であったことから、Graf Zeppelinも大きく手を加える必要はありませんでした。むしろ「Let Me Go」と「Satisfaction」で生じていたカット個所を見直し、改めて「GRANDE FINALE」のオーディエンス録音を音質から調整し直して補填させました。これによってヘッドフォンで聞いた際の違和感は前回よりも軽減されています。演奏の方は前日の生中継というプレッシャーから解放され、なおかつツアー最終日という条件が重なっても気が緩むことなく非常に完成度の高い演奏を終始繰り広げているのがお見事。唯一、オープニング「Under My Thumb」ではキースの弾くリフにムラがみられますが、これは前日と同様キースが弾いている最中に客席に向かって投げキッスした結果なのかもしれません。むしろ異彩を放つのがガラガラ声で歌われるキースの「Little T & A」。現在の彼と違って81年や82年のキースはステージでの持ち歌がこれ一曲だけだったので喉への負担は全くなかったのだと推測されますが、それでもツアー最終日ということで疲れが出てしまったのでしょうか。この時期としては異例な光景が最高の音質で捉えられているのも聞きどころの一つ。何しろライブ全体は最終日に相応しい完璧な演奏が披露されているだけに、この場面はなおさら異彩を放ちます。そしてハンプトンの二日目を完璧な音質で捉えてくれたマルチトラック・ライブアルバム。一連のラジオ放送用ラフミックスの中でも特に高い人気を誇った一日が満を持しての再登場です!(リマスター・メモ)全体音量バランス(音量差)若干修正 EQ処理なし(元々問題なし) 2箇所のカット部は位相修正のうえ同公演のAudソースで改めて補填 Live at Coliseum, Hampton, Virginia, USA 19th December 1981 STEREO SBD Disc 1 (74:23) 1. Under My Thumb 2. When The Whip Comes Down 3. Let's Spend The Night Together 4. Shattered 5. Neighbours 6. Black Limousine 7. Just My Imagination 8. Twenty Flight Rock 9. Going To A Go Go 10. Let Me Go ★2:24-2:31 Aud補填 11. Time Is On My Side 12. Beast Of Burden 13. Waiting On A Friend 14. Let It Bleed Disc 2 (68:13) 1. You Can't Always Get What You Want 2. Band Introductions 3. Little T & A 4. Tumbling Dice 5. She's So Cold 6. Hang Fire 7. Miss You 8. Honky Tonk Women 9. Brown Sugar 10. Start Me Up 11. Jumping Jack Flash 12. Satisfaction ★1:27-1:33 Aud補填 STEREO SOUNDBOARD RECORDING