ローリング・ストーンズ1975年ツアーの絶頂期である7月のLAフォーラム。その幕開けとなったのが7月9日。この日はマイク・ミラードによる素晴らしい音質のオーディエンス録音が有名で、そのマスターの公開も待たれるところ。あるいはリアタイでこの日の演奏の素晴らしさを伝えてくれたLP「SMOKING STONES」もありました。流石にミラード録音の域には及ばないものの、それでも周囲が静かでクリアーな音質は十分に聞きやすいもので、今から10年前には同LPから復刻されたCDバージョンもリリースされたほど。ところが、これらの音源以外となる新たなオーディエンス録音が年明け早々にお目見えしたのです。今回の新たな音源は大好評の内にSold Outとなった「SURREY REHEARSALS 1968」のアッパー版音源で世界中のマニアをアッと言わせた「Waz From Oz Archives」が公開してくれたもの。今回同時にテープボックスも公開されており、そこに「どうしてライブ前半が収録されているのかは聞かないでくれ…ハハ」と但し書きされているように、残念ながら「Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)」の途中からという不完全録音。その点は玉に瑕かと。しかしミラード録音の域には及ばなくとも「SMOKING STONES」よりは音像が近く、またステレオで録音されているので聞き応えは十分。ライブ終盤までは周囲の音もそれほど拾っておらず、50年近く眠っていたオーディエンス録音としては驚くほどの聞きやすさ。音像が遠くとも非常にクリアーな音質であった「SMOKING STONES」と比べるといかにも70年代アナログ的な粗さがありますが、それでもステレオという事と音像の近さがポイント高い。その録音状態が功を奏して一枚のディスクでサクッと聞けてしまうのも意外な魅力。確かにライブ中盤からの収録という点に関してはマニア向けな感が否めないのですが、このステレオなおかげでLAフォーラム75のストーンズの暴走ぶりはリアルすぎるくらいに伝わってくる。そもそも一連のLAフォーラム公演は75年ツアーの中でも一番いいタイミングのスケジュールに組み込まれたと思われ、どの日の演奏のボルテージが極めて高い。それは12日や13日といったオフィシャル・リリース群でも体感できたことですが、それら一連の公演の初日ということから輪をかけてキレッキレのテンション。それがライブ中盤ともなればエンジン全開というもの。そうしてハイテンションでワイルドすぎる名演が量産された時期ではある一方、この日の演奏で特に際立っているのが「Midnight Rambler」。ここでは最初にキースがバンドを煽り、それに応えたチャーリー&オリー・ブラウンのリズム隊が大暴走、まるでジェットコースターのように激しく駆け抜ける。彼らとキースの駆け引き、その緩急自在な演奏がまたキレッキレで、一連のLA公演における「Midnight Rambler」はどれも本当に激しい演奏ばかりですが、その中でも頂点と言って過言ではないのが15分にも及んだこの日のテイクではないでしょうか。して本ツアーでは「大会場限定アンコール用レパートリー」と化していた感のある「Sympathy For The Devil」がMSG連続公演以来となる復帰を果たしているのですが、この演奏がまた激しすぎる。本音源はミラード音源や「SMOKING STONES」と比べるとライブ終盤における周囲の盛り上がりを嫌味のないバランスにて捉えてくれており、それ故にLAフォーラムに降臨した75年ストーンズに熱狂する会場の様子まで感じさせてくれていた。ところが、この曲が始まると一転して周囲の盛り上がりが収まってしまうのです。これはあまりに激しすぎる演奏を前に、フォーラムのオーディエンスが圧倒されていたことを物語っている。おまけにビリーが猛り狂ってピアノの鍵盤を叩いており、これがまた演奏の熱狂をさらに盛り立てる。この場面はミラード音源でもかなりのバランスで捉えられていましたが、今回の音源でも相当な存在感を放っている…ということは当日の会場では相当な音量で鳴り響いていたはずで、そんな中で最後の力を振り絞るかのように絶叫するミックも凄まじい。この壮絶な演奏や会場の雰囲気を他の音源に上にリアルに伝えてくれるのが今回の新音源なのです。さすがは「Waz From Oz Archives」、マニアを唸らせる衝撃の発掘!The Forum, Inglewood, CA, USA 9th July 1975 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND(NEW SOURCE) (79:22) 01. Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker) 02. Fingerprint File 03. Angie 04. Wild Horses 05. That’s Life (Billy Preston) 06. Outa Space (Billy Preston) 07. Brown Sugar 08. Midnight Rambler 09. Rip This Joint 10. Street Fighting Man 11. Jumping Jack Flash 12. Sympathy For The Devil