マイク・ミラード録音による「L.A. FORUM 1975 3RD NIGHT : MIKE MILLARD MASTER TAPES」のリリースによって1975年アメリカ・ツアー、LAフォーラムにおける連続公演のデータが見直され、あのライブ映像が収録された日が7月11日でなく12日であったことが改めて確認されました。その12日の映像に関しては長年に渡ってアンダーグラウンドな定番と化していた訳ですが、それも2014年に晴れてリリース。音声もそれまで出回っていたビデオのモノラルではなく、それとは別にマルチトラックにて収録されたステレオ音源に差し替えられたことで驚異のアップグレードを遂げていた点もさすがとしか言いようがありませんでした。ところが2014年のリリースで12日に関しては基本映像のみのリリースとなり、付属するのが一足先に「L.A. FRIDAY」としてリリースされていた13日を取り込む形となったのでした。それも悪くはなかったのですが、フォートワース78やハンプトン81が同日の音盤もセットでリリースされたことを考えると、せっかくマルチトラックのステレオで楽しめるようになった12日の音声もライブアルバムにしてほしかったマニアが少なくなかったのでは。実際には12日も音盤化されていたのですが、それは2014年の映像リリース時、一番豪華なボックスセットだけに含まれていたのです。13日の方は最近になって紙ジャケで単独リリースが実現しましたが、こちらの方がそんなセットだけで音盤化されていたことなど、今となってはご存じでない方が多いかもしれません。何しろ8年前のことです。マニアからすると、12日は映像に負けじと音盤でも長く親しまれてきたものでもありました。昔のビデオの音声もモノラルとは言えれっきとしたサウンドボード、それ故にアイテムがいくつも生み出されてきたものです。LPだと銀箱のボックスセット、CDの「ROCKIN’ AT THE FORUM」やVGPの「L.A. CONNECTION」といったアイテムで愛聴してきたマニアもたくさんおられるかと。モノラルのビデオ音声ですと、特にライブ序盤のサウンドバランスが悪かった。それでもなお75年のステージを丸ごと収録したサウンドボードとして有難がられてきたもの。それだけに別次元へと生まれ変わったステレオを音盤で楽しみたいと思うのは当然。中には先のゴージャスなセットを買わなくとも自分で映像から2014年の音声を抽出して楽しんだマニアもおられるかもしれません。それくらい鮮烈なステレオ音質であり、文句なしに1975年ツアーのライブアルバムとして楽しめる仕上がりでもあった。そこで今回は忘れ去られてしまった2014年のゴージャスなセットのみで聞けたバージョンをベースにリリース。ところが、意外な落とし穴が待ち受けていたのです。というのも2014年のリリース時から指摘されていたように、その音声にはいくつかの補填が加えられていました。「Rip This Joint」の冒頭には7月10日のテイクが、さらに「Jumping Jack Flash」の中盤ではかなりの長時間にわたって11日のテイクに差し替えられていたのです。問題は後者の補填でして、この日のパートに切り替わるとステレオの左右がひっくり返ってしまう。演奏の途中で演奏が変わるのは仕方ないとして、それ以上にキースが左から聞こえて来てしまうという違和感が大きすぎる。それがマルチトラックを使ったリリースともなれば痛恨のミス。そこで今回は問題の個所をきっちりアジャスト。これでさらに最高のステレオ・サウンドボードな75年ライブアルバムとして楽しめるようになったのです。こうした別の日のテイクを使った埋め合わせが必要となった原因。それは後の「LOVE YOU LIVE」が証明しているように、75年のフルライブ・アルバムをリリースすること自体が当時のストーンズに念頭がなく、ましてや長尺な75年のステージ、マルチトラック・テープの交換のタイミングに当たって録音し損ねてしまったパートが生じることが容易に想像できるというもの。さらには経年によるテープの損傷というのもあったでしょう。そして「Jumping Jack Flash」における編集、これも「L.A. FORUM 1975 3RD NIGHT : MIKE MILLARD MASTER TAPES」を聞けば、そこから拝借されたことがはっきり分かります。12日のミックは通常の歌パートが終わるとマイクをアンプの上に置いてパフォーマンスに移っていたのですが、11日はその後もマイクを持って奇声を発していた。そこを映像の方はミックが映らないショットと組み合わせて上手く隠蔽していたのですね。こうした長尺なステージ故、ゴージャスなセットにだけ収録された音盤バージョンは二枚のディスクに収めるべく曲間を所々つまんでいたのです。その弊害で「Sympathy For The Devil」の演奏が終わり、チャーリーがドラムロールを叩いている最中にフェイドアウトという無粋な編集が施されていましたが、そこは映像の音声を合わせて修復。ライブアルバムとしてさらに完成度の高い仕上がりへと進化。あの75年のワイルドさを捉え切った映像がなくとも、13日とはまた違ったライブアルバムとしての説得力は素晴らしいものがある。実際「Midnight Rambler」はこの日も壮絶ですし、いつも以上にラフなキースの「Happy」など、この年ならではの奔放な演奏が心ゆくまで味わえる。映像に飽き足らず、13日と同じようなフォーマットでのリリースを渇望していたマニアの皆様へ、これぞゴキゲンなライブアルバム!Live at The Forum, Inglewood, CA, USA 12th July 1975 STEREO SBD Disc 1 (76:15) 1. Fanfare for the Common Man 2. Honky Tonk Women 3. All Down the Line 4. If You Can't Rock Me / Get Off of My Cloud 5. Star Star 6. Gimme Shelter 7. Ain't Too Proud to Beg 8. You Gotta Move 9. You Can't Always Get What You Want 10. Happy 11. Tumbling Dice 12. It's Only Rock 'n Roll 13. Band Intros 14. Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker) Disc 2 (79:30) 1. Fingerprint File 2. Angie 3. Wild Horses 4. That's Life (with Billy Preston) 5. Outa Space (with Billy Preston) 6. Brown Sugar 7. Midnight Rambler 8. Rip This Joint 9. Street Fighting Man 10. Jumpin' Jack Flash "JJF"で左右逆となっているのは、最後のサビが終わった直後のBコードのストロークから1分33秒の間、タイムでいうと3分38秒から5分21秒まで。ここは前日11日公演の音声が挟み込まれているのですが、なんと左右が逆なのでした。→★正しい状態に修正 11. Sympathy for the Devil "Sympathy For The Devil"終了後、チャーリーのドラムロール等の遊びが終わりきらないうちに、フェードアウトが始まってしまっている→★正しい状態に修正 STEREO SOUNDBOARD RECORDING