今なお、日本洋楽史の一大事件として語られるQUEEN伝説の初来日。1975年春の薫りがスピーカーから噴き出すラジオ・アルバムがリリース決定です。そんな本作に収められているのは、初来日の真っ最中に収録されたラジオ/テレビ番組3種。QUEENの曲も流されますが、メンバーの初々しい肉声インタビューをフィーチュアしています。では、その肉声が記録されたのはいつだったのか。それを把握するためにも、初来日スケジュールから振り返ってみましょう。《4月17日:来日》《4月18日:記者会見/ゴールドディスク贈呈》・4月19日:日本武道館《4月20日:お茶会/取材日》 ←★本作★《4月21日:記者会見/レセプション》・4月22日:愛知県体育館・4月23日:神戸国際会館《4月24日:京都観光》・4月25日:福岡市九電記念体育館・4月28日:岡山市総合文化体育館・4月29日:YAMAHAつま恋リゾート・4月30日:横浜文化体育館・5月1日:日本武道館《5月2日:離日》 これが列島を揺るがしたQUEENの初来日。本作に収録された3種の番組のうち2種が記録されたのは「4月20日:東京プリンスホテル」で、映像でも有名なお茶会の日(もう1種の録音は収録日不明)。日本武道館での初日公演を終えた翌日であり、ラジオやテレビ以外にも音楽誌の取材も受けていました。3種の録音をそれぞれご紹介していきましょう。収録/放送日不明のラジオ・メッセージ(約15秒)本作はコアな記録マニアが当時の放送を録音していたもの。これまで公開されたことがないマスターで、従来から知られてきた放送も過去最高峰クオリティで楽しめます。しかも、誰も聴いた事がないのはクオリティだけではない。冒頭にはこれまで知られてこなかったラジオ音声も収録しています。これが十数秒ではありますが、フレディの日本語も初々しいお宝なのです。短いですので、内容を書き出しておきましょう。「ジャパンホウソウ(ニッポン放送)ヲオキキノミナサン Oh This is Freddie Mercury, Hi! My Japanese Friends. We, Queen looking for track concerts in Japan. We hope you will enjoy our concerts. Please anticipate」4月26日放送『若いこだま』(約33分)続いて登場するのが本作の目玉。70年代に某放送協会で放送されていたリクエスト番組『若いこだま』。『ヤングジョッキー』と共に『サウンドストリート』の前身となった番組でした。QUEEN初来日の際には、LED ZEPPELINでもお馴染みの某DJがパーソナリティを務め、曲とメンバー4人のインタビューを流していきます。まずメンバー登場の前にDJがQUEEN人気について語るのですが、ここからもう強烈な時代感。某DJも「とにかく凄まじい人気で、人気あると走っていましたが、ここまでとは……」と絶句気味。インタビューのためにホテルに向かった際にも群がる洋楽女子たちに圧倒されて「渋谷さん! これからインタビューするんだったら絶対(メンバーに)会わせて!!とか女の子に迫られて非常にビックリしました」と面食らっている。特に面白いのは、名古屋公演のエピソード(インタビューは4月20日ですが、スタジオでの番組収録は後日だったようです)。「名古屋公演では非常にけたたましい演奏をして、何しろ失神した女の子が30人、それに下着が2枚ほど落ちていたり、とにかくクツは散乱してるわ、とにかく大変な騒ぎだったらしいです」と語る。内容も凄いですが、「下着が2枚」とやけに具体的なのも可笑しい。そして何より、某DJの声色に衝撃の大きさがうかがえるのです。そして、曲を挟んでインタビュー。もちろん通訳を交えるので内容もバッチリ分かります。空港の出迎え騒ぎなど初来日らしい話題も多いのですが、それ以外にも当時だからこそのムードが随所から溢れ出す。例えば、「ヴォーカリストのフレディ・マーキュリーさんに訊きたいんだけれども」と切り出したり、「プラントやボンゾが好きだ」と答えるメンバーにDJがニヤニヤしたり、ブライアンやロジャーには音楽的な事を聞くのにフレディには衣装だけで終わらせたり、そのロジャーがディスコ・ミュージックに辛辣だったり。その後のイメージが根付いている私たちには、ギャップの面白さがじわじわとくるのです。また、ブライアンの「レッド・スペシャル」についてのくだりも新鮮。ブライアンが「2年間くらいかかって丁寧に仕上げた。見た感じでは買ったギターと区別が付かないと思う」と語っているのですが、当時は「買ったギターと同じ」が褒め言葉だった。「自作だけどショボくないよ!」という視点で語られているのです。最後の質問は「次のアルバムのアイディアはもうあるの?」なのですが、その「次のアルバム」こそが『オペラ座の夜』。そう思うだけで歴史の重みに押しつぶされそうなインタビューなのです。4月28日放送『スター千一夜』(約10分)最後に収録されているのは、伝説的なTV番組『スター千一夜』。音声だけですが、局スタジオに4人を招いてのトークです。故荻島真一さんの声も懐かしいわけですが、「若者に人気の外人さん」扱いも新鮮。冒頭から「今日はですね、日本のヤング……ヤング・ロックファンに一番人気があると言われている……えー、ロック、貴公子、ロックの貴公子とか第2のビートルズと言われていますQUEENの皆さんを今晩はお招きしました」とつっかえつっかえ。質問の内容も好きな食べ物や日本のファンの印象などのド定番が多く、海外バンドを持てあましている感じです。また、ここでも「レッド・スペシャル」のくだりは面白い。「保険が100万?」の質問に「保険はかけられなかったよ」と返されるのですが、ここで荻島氏が思わず「日本の雑誌に書いてあったんだけど……」と漏らす。口調から荻島氏自身はQUEENに興味ないのは明らかですが、事前に勉強してインタビューに臨んでいる真面目さも微笑ましいのです。以上、43分23秒の歴史ドキュメンタリーです。今週は初日公演の新発掘アルバム『BUDOKAN 1975 1ST NIGHT』が誕生しますが、QUENNの初来日は会場外でも事件だった。本作に詰まっているのは、そんな時代の薫りなのです。47年の時空を一気にワープできるタイムマシン・アルバム。伝説の初来日真っ直中で収録されたインタビューCDがリリース。『若いこだま』『スター千一夜』といった伝説番組の録音で、インタビュアもメンバーも爆発的な日本人気に面食らっている肉声が超リアル。日本放送なので通訳も完璧です。歴史的名盤「BUDOKAN 1975 1ST NIGHT」のテーパーが、当時、自身で録音し、これまで大切に保管してきたテープ・コレクションからダイレクトにデジタル化。音質は勿論、音の鮮度も抜群です。超貴重。 Radio & TV Programme feat. exclusive interviews (recorded on 20th April 1975) (43:23) 1. Freddie Mercury's Radio Message to Japanese fans WAKAI KODAMA (Young Echoes) Radio Special feat. exclusive Interviews in Japan Recorded on 20th April 1975 (東京公演の翌日収録と言ってる) Aired on 26th April 1975 NHKラジオ第1放送(AMです)『若いこだま』DJは渋○陽一さん 4/26 土曜放送 2. Introduction 3. Keep Yourself Alive 4. DJ #1 5. Interview #1 6. Modern Times Rock 'n' Roll 7. Son & Daughter 8. Interview #2 9. Stone Cold Crazy 10. DJ #2 11. Interview #3 12. Killer Queen 13. Interview #4 14. Misfire STAR SEN-ICHIYA (Star in One Thousand and One Nights) TV Programme feat. exclusive Interviews in Japan Recorded on 20th April 1975 (東京公演の翌日収録と言ってる)Aired on 28th April 1975 司会は故荻島真一さん 通訳はお見事。4/28 月曜放送 15. Introduction 16. Son & Daughter 17. Interview