LP「MUNDIALITO'82」はローリング・ストーンズ1982年ヨーロッパ・ツアーが後半に差し掛かった時点のエンジン全開ぶりを捉えた名盤としてマニアに愛されてきた一枚。同じ82年ツアーなら音質面や装丁面で6月のヨーテボリからの「ONE MORE TIME」あるいは「NEVER STOP!」辺りの方が人気を博していたように思えるのですが、演奏内容に関しては7月を過ぎた「MUNDIALITO '82」の方がはるかに充実していたものです。それだけにCDバージョンのリリースが渇望されていましたが、最初に登場したVGP盤はLPの元になったテープを使用してはいたものの、かなりジェネ落ちした状態だったのが悔やまれました。その後、結局「MUNDIALITO '82」音源に関してはLPの方が良いのではないか…という観点から10年ほど前にノンレーベルよりリリースされた限定プレス盤バージョン。こちらは確かにVGP盤よりも音質が良かったのですが、その数年後に今度はDAC盤が登場。ここで遂に元テープのロージェネ版からのCD化が実現しました。結局LPのリリースから30年以上の歳月を経て、ようやく満足いくCDバージョンが現れたかのように思えたものです。そしてこれらのアイテムはすべて「MUNDIALITO '82」のアートワーク&デザインの名の下でリリースされてきました。ところが最近になってそれらの元になった7月11日トリノ公演のカセット・マスターが遂にネット上に出現。流石にロージェネどころかマスターという状態ならではのアッパー感は見事なものがあり、既発ベストだったDAC盤と今回のバージョンを聞き比べるとその差は歴然としている。そこにあったベールが取り払われ、なおかつナチュラル感も大幅に向上した状態となったのです。何しろ元がマスターということもあり、ヒスノイズを抑えるような小細工も加えていません。それ故にDAC盤をも凌ぐナチュラルでウォーミーな質感は圧倒的。それはもう、オープニングの「Under My Thumb」が始まって沸き起こる手拍子の豊かで自然な広がりからしてはっきりと実感してもらえるのではないでしょうか。正にマスターの威力を思い知らされるかと。一方、本音源はLPがリリースされた時点からピッチが高めであり、そもそも今回登場したマスターの時点から高かったことが明らかとなりました。そこで今回のCD化に際してそこはきっちりとアジャスト。もちろん今回も「Time Is On My Side」でテーパーがうっかりマイクをぶつけてしまったようなノイズが入るのは変わりませんが、それすら気にならなくなるほど見事な音質。こうして、ようやくマスターからの収録が実現した「MUNDIALITO '82」ことトリノ公演を聞いてみると、その演奏の素晴らしさに打ちのめされる思いがします。あの名盤「FRANKFURT 1982」からも一週間以上が経過し、バンドの演奏は完全無欠のスピード感と完成度を誇っている。中でもミックはしょっぱなから吹き上がっていて、「Shattered」や「Neighbours」辺りではさっそくバンドをグイグイと引っぱりまくり。その反面ツアーが7月を過ぎたという事で当初82年ツアーの象徴だったビッグ・ボッパーのカバー「Chantilly Lace」はとうに姿を消し、それどころか「Let It Bleed」すらセットリストから落とされてしまった。ところがこの日に限ってキースの「Little T & A」までも省かれるという前代未聞の事態。おかげでいつものメンバー紹介に続いて演奏されたのは7日のマドリードから導入された「Angie」エレクトリック・バージョンというレアすぎる展開がかえって面白いことに。それどころかストーンズが手を抜いている的な様子は(まったく!)感じられず、むしろミックが煽りまくって始まった「She’s So Cold」以降のハイパーな演奏の数々は、これぞ82年ヨーロッパ・ツアーの神髄と呼べるほど素晴らしい。そう、この充実ぶりこそがLP時代から愛されてきた秘訣でもあったのです。そんな「MUNDIALITO'82」ことトリノ公演、待ちに待ったマスターからのベスト・バージョンのリリースが実現という事から、今回は敢えてLPのタイトルやアートワークを使わず、当日のミックをあしらってタイトルもストイックに「TORINO 1982 DAY 1」と決めました。独自の豊かな臨場感もマスターから余すことなく再現され、何より82年ヨーロッパ・ツアー最高の名演をベスト・バージョンにて心ゆくまでお楽しみください!(リマスター・メモ))半音の35から50%弱低いピッチを修正しました。左右バランスが頻繁に変わる為、ザックリと調整しました。既発「Mundialito '82」(LP起こし)より明らかに高音質、そしてテープソース既発より、今回盤の方がふくよかで印象は良い。更に、Disc1の最後が2秒程長い。Jumping Jack Flashの 6:53の一時停止は既発はクロスフェードで繋げてあるが、収録時間は今回盤より10秒程度短くなっている。終演は今回盤の方は3秒程長い。 Live at Stadio Comunale, Torino, Italy 11th July 1982 TRULY PERFECT SOUND(UPGRADE) Disc 1 (60:09) 1. Take The A Train 2. Under My Thumb 3. When The Whip Comes Down 4. Let's Spend The Night Together 5. Shattered 6. Neighbours 7. Black Limousine 8. Just My Imagination 9. Twenty Flight Rock 10. Going To A Go-Go 11. Let Me Go 12. Time Is On My Side 13. Beast Of Burden Disc 2 (63:56) 1. You Can't Always Get What You Want 2. Band Introductions 3. Angie 4. Tumbling Dice 5. She's So Cold 6. Hang Fire 7. Miss You 8. Honky Tonk Women 9. Brown Sugar 10. Start Me Up 11. Jumping Jack Flash 12. Satisfaction 13. 1812 Overture