2010年代を迎えてストーンズがグループの結成50周年を記念して再始動してくれた年からもちょうど10年の歳月が経過しました。彼らの2012年のライブ活動と言えば、つい最近のような気がしてならないものですが、時の流れというのは本当に早い…あれから10年が経ったのですね。この年のステージは世界中のマニアが待ち望んだストーンズの再始動ということでどの公演も様々な音源や映像が現れたものですが、そうした中でも2012年ストーンズの象徴というべき一夜が「ONE MORE SHOT」こと12月15日のニューアーク。彼らのツアーでは恒例となるライブ生中継がこの日実現し、当然ながら様々なアイテムを生み出したことも今となっては懐かしい限り。そうした中で違ったアプローチを取った名盤が「SECOND NIGHT IN NEWARK 2012: ORIGINAL MASTER RECORDING」でしょう。生中継された以上、ステレオ・サウンドボードのアルバムが乱立するのは当たり前。そんな中で独自入手の極上オーディエンス録音にてリリースしてみせたことで、同公演の違う側面を見せることに成功。先の生中継という存在を前にしてもなおマニアから高く評価されたのがまた懐かしい。サウンドボードがありながら、それでもオーディエンス録音の価値が下がっていないという点においては、年代が違えどリリースされた大好評タイトル「SYDNEY 1973 1ST NIGHT」と相通じるものがあるのではないでしょうか。あれから10年の歳月が経過し、当時リリースしなかったニューアークのステレオ・サウンドボード録音を今リリースしてみせるのが今回の目的。当然ながら10年の経過によって当時のアイテムは入手困難、あるいは見過ごされがちになっていますし、81年ハンプトン以降で恒例となったアメリカ・ツアーからの生放送音源の一つとして手に置いておきたい定番中の定番。とはいえそのまま出すのでは芸がない。そこで今回はストーンズ登場前の場面を先の「SECOND NIGHT IN NEWARK 2012: ORIGINAL MASTER RECORDING」オーディエンスからつなげ、同日のドキュメントとしてのベスト・バージョンを目指しました。というのもこの日は2012年のストーンズ・ショーが世界に中継された重要な日。それ故にストーンズ登場前の「前説」と呼ぶべき場面があった。共演予定のゲストを連呼し、これから始まるスペクタクルショウのわくわく感を誘う熱い司会者の紹介、それに熱狂する観衆の様子。この興奮を誘うイントロダクションは、生中継からは漏れてました。この部分はショウの一部としても重要。ストーンズのライブ演奏とは関係のない、あるいは彼らがステージに現れる前の場面を敢えてオーディエンス録音で繋げたのには、そうした事情があるのです。ライブ本編は当然ながら完璧なステレオ・サウンドボードとなる訳ですが、今となってはこれが本当に懐かしい。ライブ開始からしばらくは生中継にありがちなサウンド・バランスの不安定さが散見され、中でもダリル・ジョーンズのベースの粒立ちが前半で目立ちます。これがまた懐かしいというだけでなく、改めて聞いてみると非常に新鮮。一見見過ごされがちな彼のベース・プレイがどれほど堅実にストーンズを支えてくれているのかということを再確認させてくれる好例でしょう。生中継ならではの不自然なバランスと言えば「Miss You」で観客に合唱を促すパートで客席の様子を捉えるアンビエントマイクがよりによって近くの音痴な歌声を拾ってしまったのがまた懐かしくも微笑ましい。しかしライブ全体を聞き直してみると、キース・コーナーからは彼のギターの音もしっかりと鳴るストーンズらしいバランスになっているのが解ります。それに何と言ってもストーンズの生中継ライブ名物というべきゲストの登場がこの日は史上最高とも言えるほど豪華な顔ぶれ。現役バリバリなジョン・メイヤーやレディ・ガガといったアーティストとの共演は今なお印象的な場面ですが、そうした中で小ぶりな印象を与える感が否めないブラック・キーズとの「Who Do You Love」こそ、この日のゲストとの共演の中で一番の成果を挙げていたのではないでしょうか。いつもならストーンズのライブ生中継におけるゲストの登場はライブの中盤までに済まされるものですが、この日の舞台となったニューアークはニュージャージーの土地。となればブルース・スプリングスティーンを呼ばない訳にはいかない…そこでライブが後半を迎えての登場となった異例の扱いがさすがはスプリングスティーン。演奏が始まるとキースでないギターのストローク音がたまに鳴っています。これが正に彼によるもので、間奏でロニーからバトンタッチしてスプリングスティーンが弾いたギターソロがいかにも「モニターよく聞こえません」的な展開で終わったのがまた今となっては微笑ましい。ですが、それ以上に今となっては大きく意味合いが変わってしまったのが全編を通して元気いっぱいなチャーリーの姿。ここからほぼ10年後に彼がいなくなってしまう事など、当時はさすがに予想できませんでした。この時に当たり前だと思われていたことが今となっては本当に尊い。そうした中でも「Midnight Rambler」はこれまた懐かしのミック・テイラー登場と共にチャーリーの激しいドラミングが際立っている。やたらとハッスルして弾きまくるテイラーのフレーズやプレイも実に懐かしいもの。単に10年の歳月が経過した懐かしいライブというだけでなく、メンバー全員が高齢なモードでの活動のスタート地点を捉えたステレオ・サウンドボード録音であり、なおかつチャーリーがバリバリに健在であった時代の極上音質ドキュメントとしても改めて手元に置いておきたい定番ライブ。その最新版リリースに相応しい最長バージョンにて、今となっては懐かしのニューアーク・ショーを心ゆくまでお楽しみください。つい最近のように思えても実は10年前…という2012年型ストーンズが新鮮に感じられること間違いなし。 Live at Prudential Center, Newark, New Jersey, USA 15th December 2012 STEREO SBD*UPGRADE Disc 1 (58:23) 1. Opening Announcement 2. Introduction 3. Get Off of My Cloud 4. The Last Time 5. It's Only Rock 'n Roll 6. Paint It Black 7. Gimme Shelter 8. Wild Horses 9. Going Down Disc 2 (45:13) 1. Dead Flowers 2. Who Do You Love? 3. Doom and Gloom 4. One More Shot 5. Miss You 6. Honky Tonk Women 7. Band Introductions 8. Before They Make Me Run 9. Happy Disc 3 (59:59) 1. Midnight Rambler 2. Start Me Up 3. Tumbling Dice 4. Brown Sugar 5. Sympathy For The Devil 6. You Can't Always Get What You Want 7. Jumping Jack Flash 8. Satisfaction STEREO SOUNDBOARD RECORDING