1973年ウインター・ツアー終盤のサウンドボードが存在する日ながら、そこで伝えきれない会場の盛り上がりや未収録を含んでいたことを見据え、敢えてサウンドボードより先に同日のオーディエンス録音をリリースしたのが「SYDNEY 1973 1ST NIGHT」。しかしマニアには大好評となり、ウインター・ツアー・リリースの幸先良いスタートとなりました。先の理由から見過ごされていた同日のオーディエンス録音から「recorder 1」の見事なアッパー版というのが高評価の秘訣。やはり臨場感という点ではPAサウンドボードはどうしても弱い。よってコンサート本来の臨場感やこの日の強烈な盛り上がりを伝えてくれるドキュメントとしての側面はもちろん、単純に楽しめるウインター・ツアーのオーディエンス録音としても魅力も十分でした。となればこの日のPAサウンドボードご本尊もリリースしない訳にはいかない。先のオーディエンス盤のリリース時に触れたように、この日も録音されなかったパートがある。そこを従来の補填要員だった「recorder 2」ではなく、「SYDNEY 1973 1ST NIGHT」で実現した「recorder 1」のアッパー版を使えば新たなベスト・バージョンが生み出せることは明らか。そこで遂にサウンドボード+オーディエンスの最強ハイブリッド版のリリースが今回実現します。補填要員たる「recorder 1」は「SYDNEY 1973 1ST NIGHT」のリリースにて極められた訳ですから、今回のリリースにおいて重要なのは、もちろんステレオ録音されたPAサウンドボードのパート。こちらの音源は当初24日パースの補填要員サウンドボードとして日の目を見る形となり、例えば後にスコルピオを名乗るROCKWHILEというレーベルが出した「LIVE IN PERTH AUSTRALIA」に使われ、すわ「遂に完全版サウンドボードか?」とマニアをぬか喜びさせたのも懐かしい。案の定これを真に受けたこれまた懐かしのTSP製「ROCKS OFF!」というコピー盤を生み出してしまうほど、当初はパースの完全版かと錯覚させられてしまったのです。しかし、この日の関してもOH BOY!盤「HAPPY BIRTHDAY NICKY」でパースとカップリングされたことで決着が付きます。ただしパースと違ってこちらはテープ・ソースが出回り、例えば「A STICKY SYDNEY RACECOURSE」や90年代の決定版とされたVGPレーベル「ROCK 'N ROLL STEW」のようなそれのコピー盤でないタイトルが登場しましたし、近年はDAC「HAPPY BIRTHDAY NICKY」のDISC-2がベストに君臨していたものです。ところがDAC盤は高音が目立つ状態であり、今回はよりナチュラルな質感を追及すべく、敢えて古のOH BOY!をGraf Zeppelinは採用することに決めました。それを基にしたGraf Zeppelinによるブラッシュアップのおかげで、今回は高音がおしつけがましくなることなく、それでいてナチュラルでスッキリとクリアーな音質へとバージョンアップ。その音質の違いはイントロからキースのギターがざっくりとした質感で鳴り響きつつ、ビルのベースもブリブリうなる「Rocks Off」辺りで聞き比べてもらえれば実感してもらえるのでは。そもそもこの「Rocks Off」、いくら録音方法が違うとはいえ、それでも半年前のアメリカ・ツアーのスピーディーさとはまるで違う荒々しい勢いで演奏されているのが驚き。そして従来ベストとされてきたDAC盤は欠損部分をオーディエンス「recorder 2」で補填していた訳ですが、今となってはアッパー版「recorder 1」の方が聞きやすい。前者はキースのギターの音が目立ち、なおかつ音像が遠めという状態でした。もちろん今回使用した後者ですら粗いマニア向けのオーディエンス録音であることは事実ですが、それでも確実に聞きやすくなっています。ここで「SYDNEY 1973 1ST NIGHT」をそのまま流用しないのがGraf Zeppelin。そこは新規に音を調整した上で欠損部分を補填しています。それどころか今回のアッパー版で話題となったストーンズ登場前の会場に流れていたBGMビートルズ「Don’t Bother Me」にあったヨレまでもアジャストを徹底。こうしてサウンドボードとオーディエンスの両方が存在するライブで、それぞれを聞き比べる楽しみを感じさせてくれる音源というのもそうそうないのでは。そもそもオーストラリア三日間はステレオという事もあって従来のモノラルPAサウンドボードよりは臨場感を拾ってくれている。それでも「recorder 1」には叶わない訳ですが、その反面チャーリーが序盤で煽りまくる「Midnight Rambler」の壮絶なドラミングに圧倒されるのは演奏の輪郭が浮き彫りになるPAサウンドボードだからこそ。またオーディエンスでは観客の小競り合いが捉えられていた「Love In Vain」もここでは演奏を聞きこむことができるというサウンドボード最大の利点を発揮。サウンドボードの残されたオーストラリア三日間はそれぞれで独特のハイテンションぶりが楽しめるのですが、やたらミックがキレッキレだったパースと比べ、この日は彼とバンドが拮抗したかのような荒々しい勢いが伝わってくる。もちろん今回は「Gimme Shelter」のイントロもパースのような混乱に陥ることもなく。何が面白いって、パースはサウンドボードの録音時間がもっとも短く、この日はより多くの曲が録音され、最後の「SYDNEY 1973 2ND NIGHT: SOUNDBOARD」で全曲収録といった具合で日程が進むにつれて収録状態が向上していくという。それだけにオーディエンス録音の存在する本公演はサウンドボードとオーディエンス両方のベストを組み合わせた新たな決定版の登場が待たれていました。正にマニア待望と言える新たな決定版にてシドニー初日のすべてをお楽しみください。(リマスター・メモ)こちらもOH BOYをベースにリマスターし、さらに欠落をAud Rec1で補填することで全長盤を再現。ベースのOH BOY盤は位相や低域EQなどの補正が施されています。なお、既発DAC盤はOH BOYのコピーではないようです(ホンキー出だしの欠落なし)が、高域がかなうるさいので 今回盤の方が聞きやすいかと思われます。Honky前の曲間とイントロの若干の欠落をDAC盤からEQ処理等補正のうえ補填。OH BOY盤で丸ごと未収のライブ・イントロ、Brown Sugar序盤、JJF、SFMは先日のAud Rec1を改めてリマスター処理のうえ補填。このAud Rec1は、メインのサウンドボード音声とのすり合わせを考慮しながらのEQ調整とピッチの修正がなされています。(それでも音質差はかなりありますが。)またイントロのビートルズのテープヨレも補正。Brown SugarではAud Rec1は序盤かなりピッチ高かったのが補正されています。また、このAud Rec1ですが、SFM出だしはアタマ一瞬欠落してるようでしたので、違和感ないように既発Rec2をオーバーダブしてます。またJJF、SFMの2曲はピッチ若干低めだったのを修正。Live at Royal Randwick Racecourse, Sydney, Australia 26th February 1973 (78:31) 01. Audience / 2000 Light Years From Home Intro ★まるごとAud Rec1 / テープヨレ補正 02. Brown Sugar ★0:00-040 Aud Rec1 / 序盤ピッチ高め補正 03. Bitch 04. Rocks Off 05. Gimme Shelter 06. Happy 07. Tumbling Dice 08. Love In Vain 09. Sweet Virginia 10. You Can’t Always Get Want You Want 11. Honky Tonk Women ★演奏前曲間とイントロ僅か1秒ほどをDACから補填 12. All Down The Line 13. Midnight Rambler 14. Band Introductions 15. Little Queenie 16. Rip This Joint 17. Jumping Jack Flash ★丸ごとAud Rec1 18. Street Fighting Man ★丸ごとAud Rec1 ★出だし一瞬Rec2をオーバーダブ 19. Land Of Hope And Glory with Fireworks ★丸ごとAud Rec1