リリースに際してオーバーダビングが加えられただけならまだしも、果てはスタジオ・レコーディングに歓声を被せたテイクまで挿入されてしまったライブアルバム「GOT LIVE IF YOU WANT IT!」の代わりにブライアン・ジョーンズ在籍時の純正ライブ音源として重宝されてきた1966年のホノルル公演。同地のラジオで放送された音源であったことから、1980年代に入ってTHE SWINGIN’ PIGから(後に「ULTRA RARE TRAX」で一世を風靡するCDレーベルとは別の人物によるもの)リリースされた「SO MUCH YOUNGER THAN TODAY」の名でLPがリリースされると、そのワイルドで勢いに溢れた演奏ぶりが大評判を呼びました。 もっともLPでは当時のエアチェック音源が使用されていたことから音質的にはイマイチ。それでもファンクラブのレビューなどにおいて「元祖パンク」と形容されるほど絶賛されます。おまけにLPはプレスによってジャケや盤の色が違い、中でも初回の蛍光ピンクジャケ&レッドビニールなどは80年代に万単位で売りに出されるというのも今となっては懐かしいバブリーな思い出。ところがエアチェックであったことが仇となり、なかなかCD化が実現しません。しかし今からちょうど30年前(そんなに経ったとは!)、いわゆるPre-FMな段階の音源が発掘されてCD時代に相応しい飛躍的なアップグレードを遂げます。さらにCD絶頂期の始まりを意識したリバーブ系のエフェクトが加えられるなどした「SOLD OUT!」なるタイトルがリリースされたのも懐かしい。もちろん小細工のないバージョンも後に出回り、例えばVGPレーベルの「BILL WYMAN'S BLACK BOX」などが決定版となっていましたが、そうした従来のリリースはいちどVHSにダビングされて広まった(昔はカセットの代わりにVHSに音声を落としたトレードというのも普及していました)らしく、曲間でVHSらしい低音のハムノイズが混入していたのでした。さらにいくつかの個所で音切れが生じてしまうトラブルも抱えてしまっていたのです。何と今回は従来と違ってVHSを経由しない上位マスターを入手。それは曲間を聞いてもらえば一目瞭然で、ハムノイズのない素直でナチュラルな音質に驚かされることかと。また音源自体の劣化から生じていたと思しき細かな音切れ。例えばイントロで司会者が「Honolulu police department」と発した場面、あるいは「The Last Time」が終わるところで生じていた音飛びも最新テクノロジーを駆使してGraf Zeppelinが緻密にアジャスト。音質面において飛躍的なアップグレードを90年代初頭に遂げておきながらも散見されていた耳障りな問題がようやく解消されました。よって古くから演奏内容には定評のある音源ではありますが、この若さで突っ走るストーンズのライブ演奏を一切の小細工なしで楽しめる価値の高さは未だに健在。「Lady Lane」に「Mother's Little Helper」といった具合に、ただでさえブライアンの存在感が強いこの時期のステージの貴重な記録というのはもちろん、録音バランスの問題から「The Last Time」に至ってはキースよりブライアンのギターの音の方がデカいという(笑)。とはいえ演奏時間の短いブライアン期のライブです、ディスクにあるスペースを生かして5が月前のシドニーのラジオ放送を収録。こちらは数年前にネット上で公開されて話題となったエアチェック音源として過去にCD-Rでも話題を呼びました。ところがアップロードされる際に硬質な質感が生じていましたので、これまたGraf Zeppelinが元のエアチェックのビンテージ感を取り戻すべくアジャストを敢行。元々アナログチックな音質であっただけに、その徹底されたオーバーホールで一気に聞きやすくなりました。もちろんホノルルには劣る音質ですが、それでもライブ演奏の雰囲気やセットリストが同じ年なのにまるで違っているから面白い。この日はオーストラリア・ツアーの初日でありながら、ミックの声の調子が思わしくない様子が捉えられています。それが顕著なのが「She Said Yeah」。おまけにステージ・モニターのない時代にビートルズと同様ファンの絶叫の中で演奏しなければならず、「Get Off Of My Cloud」ではキースがバックコーラスのタイミングを間違えたせいで演奏が大混乱となる場面も生々しく捉えられている。そして「Satisfaction」ではステージにファンが上がってきたのか、ミックが最初のコーラスを丸々歌わない空白状態で演奏が進んでしまうなど、ハプニングが多いステージのドキュメントでもありますが、一方で「The Spider And The Fly」のライブバージョンは後のストーンズのロック感を予見させるルーズさなど聞きどころ満載。おまけには一週間後のメルボルン公演を収録。こちらは2000年代を迎えてVGP「DO YOU LIKE ROLLING STONES?」で発掘された貴重なPre-FM音源。極めて貴重な「Play With Fire」エレキバージョンや「That's How Strong My Love Is」が最高音質で聞ける音源として重宝されて何度も別タイトルが生み出されてきましたが、今回はそのご本尊からリマスター。あくまでおまけではあるものの、これでディスク一枚たっぷりブライアン期1966年の純正ライブ音源が楽しめる内容となりました。もちろんタイトルはホノルルのオリジナルリリースをリスペクトした「SO MUCH YOUNGER THAN TODAY」となり、ジャケにもLPのそれを採用していますが、初回のピンクジャケは映えないので(笑)敢えてセカンドのクリーム色ジャケを採用。そして最後に収録されたオーストラリア滞在時のラジオ取材ではインタビュアーから何と「The really swingin’ pig」という言葉が!ブライアン期の純正ライブ聞きたければ、まずはこれ。(リマスター・メモ)メインに1966年ホノルル公演を収録。さらに同年2月のシドニーおよびメルボルン公演も収録。1CDでめいいっぱい79分越えの収録した1966年ライブ集。CDタイトルも往年のホノルル公演収録のアナログLP(TSP 012)のタイトルをオマージュ。セクション1: ホノルル 1966年7月28日・既発に比べ、ハムノイズの少ない良好マスターイントロダクションで頻発する細かな音切れや曲中の音切れも可能な限り補正。とくに"The Last Time"と"Mother's Little Helper"曲中で生じていた音切れは安易につまんで処理せずに帯域調整を施すことでドロップアウトを違和感なく復元。また、イントロダクション中の音切れを嫌って既発VGPでは一部カットしている箇所もあった。(今回盤トラック1 0:17付近が0.6秒ほどVGPでは欠落)セクション2: シドニー 1966年2月18日(1st Show)ハムノイズ除去と帯域調整で、かなりスッキリと。またヒスノイズの除去された、かなりデジタルチックなサウンドだったので、アナログ的な質感に戻す方向でEQ処理。satisfaction3:15付近で断続的に発生するブザー音もなるべく違和感なく除去(既発盤よりも処理痕は目立たません)セクション3: メルボルン 1966年2月24日(2nd Show)・古の音源をリマスター。若干ハムノイズ除去し、スッキリしてますが、大きな違いなし。若干メタリックなのは元々から。Tracks 01-09: Honolulu International Center, Honolulu, Hawaii, USA 28th July 1966 SBD Tracks 10-19: Commemorative Auditorium Showgrounds, Sydney, Australia 18th February 1966 (1st Show) SBD Tracks 20-28: Palais Theatre, St.Kilda, Melbourne, Australia 24th February 1966 (2nd Show) SBD Track 29: Australian radio (2UW) 16th February 1966 (79:16) Honolulu International Center, Honolulu, Hawaii, USA 28th July 1966 01. Introduction 02. Not Fade Away 03. The Last Time 04. Paint It Black 05. Lady Jane 06. Mother's Little Helper 07. Get Off Of My Cloud 08. 19th Nervous Breakdown 09. Satisfaction Commemorative Auditorium Showgrounds, Sydney, Australia 18th February 1966 (1st Show) 10. Introduction 11. Mercy Mercy 12. She Said Yeah 13. Play With Fire 14. Not Fade Away 15. The Spider And The Fly 16. That's How Strong My Love Is 17. Get Off Of My Cloud 18. 19th Nervous Breakdown 19. Satisfaction Palais Theatre, St.Kilda, Melbourne, Australia 24th February 1966 (2nd Show) 20. Ward Austin Introduction 21. The Last Time 22. Mercy Mercy 23. She Said Yeah 24. Play With Fire 25. Not Fade Away 26. That's How Strong My Love Is 27. Get Off Of My Cloud 28. Satisfaction Australian radio (2UW) 16th February 1966 29. Ward Austin 2UW Report / Ward Austin Stones Interview