JEMSによるミラード・マスター女性特集の四週目はスティーヴィー・ニックスのソロ。これまでも公開されてきたように、フリートウッド・マックはミラードお気に入りのグループの一つとしていくつもの素晴らしい音源が公開されてきました。それだけに彼がスティーヴィーのソロ・ショーに向かったのも合点がいくというもの。マックの活動休止期であった1989年、彼女は四枚目のソロ・アルバム「THE OTHER SIDE OF THE MIRROR」をリリース。それまでのアルバム同様に大ヒットを記録し、同年の下半期にはワールド・ツアーまで敢行されました。そこでミラードはツアーが西海岸を訪れたコスタ・メサに出向きました。1989年の彼はこの日に限らず、コスタ・メサのパシフィック・アンフィシアターに出向くことが非常に多かった。それはこれまでリリースされてきたニール・ヤングやボブ・ディラン同所での各リリースが証明しています。それだけにミラードとしては勝手知ったるもの。ここでも実に素晴らしいクオリティで89年のスティーヴィーを捉えてくれました。よって今回も安定の極上オーディエンスなのですが、ライブ前半は会場からの出音の関係なのでしょう、スティーヴィーの歌声よりもバンマス、カルロス・リオスのギターを中心とした演奏の方が目立った感があります。そこで今回のリリースに際してはこの点に関して分離を良くするべく調整。さらにはライブ終盤、演奏が延々と続く「Edge Of Seventeen」の途中で生じたテープ・チェンジからの音質変化も緩和。もちろんスティーヴィーのソロということもあり、ご本尊マックの時とはまるで違ったロック&ポップなサウンドのステージが繰り広げられている。ソロ・ナンバーの合間に盛り込まれたマック時代のレパートリーも80年代後半的な味付けが加えられた上で披露されています。ところが89年の彼女は自身のアルバムを大成功させた一方で、長年に渡った薬物中毒を断つべく戦っていた時期でもあった。そんな状況でもアルバムが大ヒットから行わらなければならなかったワールド・ツアーということから、この時期の彼女が中毒を断つために処方されていた薬に依存しており、そのせいでこのツアーの記憶がない…と後に告白したのは有名な話。そんな苦闘している彼女を物語るように、ここでも「Alice」や「Beauty And The Beast」そしてフィナーレ「Has Anyone Ever Written Anything For You?」といった歌い上げ系ナンバーになると彼女の声が不安定になっている…というか酔っている感がありありと。それは処方された薬だけでなく、中毒を断つ際に襲われる苦痛から立ち直るべくアルコールに頼っていたであろう様子が伺えます。よって今回のマスターを公開したJEMSとしても「これは彼女が絶好調な時の記録ではないかもしれないが…それは聞く人の判断に委ねたい」と説明。それでもバックのそうそうたるメンバーに支えられ、ステージをこなしてみせるスティーヴィーはやはり百戦錬磨の歌姫。今までヒューストンのラジオ放送だけしかアイテムが存在していなかったツアーからミラードによる貴重なドキュメント! Pacific Amphitheatre, Costa Mesa, CA, USA 14th October 1989 TRULY PERFECT SOUND Disc 1 (68:21) 1. Intro 2. Outside The Rain 3. Dreams 4. Rooms On Fire 5. Gold Dust Woman 6. Alice 7. No Spoken Word 8. How Still My Love 9. Beauty And The Beast 10. Drums 11. Stand Back Disc 2 (52:27) 1. Whole Lotta Trouble 2. Two Kinds Of Love 3. Band Introduction 4. Edge Of Seventeen 5. Has Anyone Ever Written Anything For You?