通算6枚目となるアルバム「MIRRORS」のリリースにともなうワールドツアーから、1979年10月12日のイリノイ州シカゴ・インターナショナルアンフィシアター公演が、最上級クオリティの放送音源をベースに、オープニングからエンディングまで約94分の高音質サウンドボード録音・最長版で登場です。BLUE OYSTER CULTは'75年の「AGENTS OF FORTUNE」以降、親しみやすいキャッチーな路線で注目を集め、ラジオでも頻繁に曲やライヴがオンエアされるなど、商業的に大きな成功を収めつつありました。バンドはその状況に甘んじる事無く、キャッチーさとバンドらしさをより高い次元で融合させようと試み、'79年にはイギリスのSF作家・マイケル ムーアコックとの共作を行うなどした意欲作「MIRRORS」を製作しました。このアルバムは今まで以上に洗練されたメロディとコンパクトな曲作りが、旧来からのファンなど一部で批判の対象にもされたようですが、それぞれの楽曲と作品の仕上がりは素晴らしいもので、アルバムリリースに先駆けて4月末から開始されたワールドツアーにおいてもショウやツアーの規模はより拡大し、5月には来日公演を成功させるなど、歴戦のバンドらしい充実したパフォーマンスは各地で大好評を博していました。バンドは同年9月からRAINBOWを前座に起用してアメリカの東海岸を中心にサーキットしました。'79年のシカゴ公演はRAINBOWファンにとっても過去の放送音源「RISE OVER CHICAGO」で知られるショウですが、その時のヘッドライナーこそこのBLUE OYSTER CULTであり、二つのバンドが白熱のショウを繰り広げたシカゴ公演は、まさに彼らにとってこのツアーのハイライトだったと言えるでしょう。多くのリスナーを満足させるためにきちんとミックスされたライン音源は公式感覚に溢れており、抜群のクリアネスとエッジがしっかりと立った演奏の輪郭は、聴き手にストレスなくライヴを楽しませてくれます。またメンバー5人の演奏が濃厚に空間を埋める音響処理、要所でメインとなるプレイヤーにスポットが当たるよう配分されたサウンドメイキングは、サウンドボード音源でこそのエンターテイメント性に満ちています。オープニングを飾る名曲「Dominance And Submission」から、ベースが目立つ強烈なビートで熱演が展開されています。新作からのキャッチーな「Dr, Music」と「Mirrors」もライヴではヘヴィなアグレッションを前面に出した演奏で、そのパンチの効いた演奏は、アルバムでの彼らしか知らない人にはショッキングですらあるでしょう!一方で「Cities On Flame With Rock'N'Roll」や「Extra Tellestrial Intelligence」などバンド初期からの名曲も、この時代に則して洗練された味わいを加味されたバージョンとなっており、これもアルバムでのテイクに馴染んでいる人ほど衝撃的でしょう。「The Great Sun Jester」に「The Vigil」といった'79年ツアーならではの選曲は言うまでも無く大きな聴き所です。これら新曲ではバック・ダーマことドナルド・ルーザーが大きくフィーチャーされ、特に「Mirrors」や「The Vigil」では彼のメロディアスな歌とギタープレイをじっくり味わえます。もちろんエリック・ブルームのパワフルな歌と太い音色のギターはこの日もショウの全編で大活躍しており、来日公演でも好評だった「Godzilla」ではギタープレイにも負けないくらい巧みな日本語のMC(「臨時ニュースを申し上げます。」)を聞かせてくれて、オーディエンスから喝采を浴びています。メンバーが5人全員でギターを手にしてステージ上に揃い踏みする「5 Guitars」や、レーザー光線の舞台効果、JUDAS PRIESTに先駆けてハーレーをステージ上に持ち込んだ「Bone To Be Wild」のド派手演出など、本来ならば視覚に訴える当時のB.O.C.ならではのシーンでも、本作の迫力あるサウンドは聴き手の想像力をかき立て、聴くうちにその場面やステージの模様が目に浮かんでくる事でしょう。残念ながらアンコールの「(Don't Fear) The Reaper」だけは音質的にやや遠めに後退してしまうのですが、マスター段階での補正が効果的な上にノイズ等もほとんど除去されているので、他と聴いて劣る事はありません。今日の私達の感覚からいうと、グラハム・ボネットやコージー・パウエルが豪快なプレイを披露し、翌年の「MONSTERS OF ROCK」ではヘッドライナーを務めたRAINBOWが前座扱いなのは不思議ですらあるのですが、B.O.C.に馴染みの薄いRAINBOWファンも、彼らの熱気溢れる変幻自在のスケール感満点のライヴパフォーマンスを聴けば、当時なぜB.O.C.がアメリカツアーで主役として受け入れられたのか、その理由に納得できるのではないでしょうか?B.O.C.はこの翌年にロニー・ジェイムズ・ディオを迎えたBLACK SABBATHとも「BLACK & BLUE」ツアーで互角に渡り合い、さらに大傑作「FIRE OF UNKNOWN ORIGIN」で歴史に名を刻みますが、'79年のRAINBOWとのツアーはその前触れとして、重要な位置づけが出来るでしょう。BLUE OYSTER CULTのライヴを知らない人ほど聴いて欲しい文句なしのハイレベルライヴであり、本作を聴けば「B.O.C.教」に目覚める人もきっと多いだろうと思われます。ヘヴィネスとキャッチーさ、冷静さと狂乱の熱さがまるでカオスのように渦巻く究極のライヴを、クオリティ抜群のライン音源で楽しめる高品質な一枚。Live at International Amphitheatre, Chicago, IL. USA 12th October 1979 SBD Disc 1 1. Dominance And Submission 2. Dr. Music 3. Mirrors 4. Cities On Flame With Rock'N'Roll 5. The Great Sun Jester 6. The Vigil 7. Extra Tellestrial Intelligence 8. Astronomy Disc 2 1. Me 262 2. Godzilla 3. Drums Solo 4. Godzilla (reprise) 5. Hot Rails To Hell 6. 5 Guitars 7. Born To Be Wild 8. O.D.'d On Life Itself 9. (Don't Fear) The Reaper Eric Bloom - Vocal, Guitar Donald "Buck Dharma" Roser - Guitar, Vocal Albert Bouchard - Drums, Vocal, Guitar Joe Bouchard - Bass Allen Lanier - Keyboards, Guitar SOUNDBOARD RECORDING