YESミュージックをこよなく愛した録音史の絶対名手マイク・ミラード。そのオリジナル・マスターがまさかのリリース決定です。そんな本作に吹き込まれているのは「1977年9月23日イングルウッド公演」。その伝説的オーディエンス録音です。当時のYESと言えば、リック・ウェイクマンが復帰して“黄金の5人”が再集結。“GOING FOR THE ONE Tour”で世界を巡っていました。まずは、その日程を振り返ってショウのポジションを確かめてみましょう。《7月15日『究極』発売》・7月30日-9月3日:北米#1(32公演)・9月17日-10月9日:北米#2(21公演)←★ココ★・10月24日-11月8日:英国(12公演)・11月11日-12月6日:欧州(22公演)これが1977年のYES。本作のイングルウッド公演は「北米#2」の6公演目にあたるコンサートでした。“GOING FOR THE ONE Tour”のミラード録音と言えば、大名盤『LONG BEACH ARENA 1977』も大人気ですが、本作はその3日前でもありました。ミラードと言えば、あまり同じバンドを何度も録音したがらない人物でしたが、YESは例外中の例外。LED ZEPPELINやTHE ROLLING STONESと並ぶ3大バンドであり、コンサートのチャンスさえあれば何度でも録音を重ねるほどのお気に入りでした。そして、この録音も古くから有名な名録音。ミラード作と知られる前から音の良さで定番として君臨し、ジェネ違いなどで何度もアップグレード。『MIKE'S MINT』が名作として愛されてきました(すでに廃盤)。本作は、そんな伝説録音の大元カセットからダイレクトにデジタル化されたものなのです。あまりにもイレギュラーなケースですが、その理由もイレギュラー。実は、大元マスターよりも既発の方が音が良かったのです。そもそも70年代録音は「大元=最上」とは限らない。50年近い時間の試練によってテープの劣化が進み、いつしか1stジェネや2ndジェネの方が状態が良いという事態も起こりうる。むしろ、これまでのミラード・マスターにはなかった事の方が幸運だったのです。実際『MIKE'S MINT』をお持ちの方なら本作と比べれば一聴瞭然。本作は大元にも関わらずレンジが狭く、伸びがない。「I've Seen All Good People」のイントロ等、部分的にテープ劣化の不安定感も見られるのです。発掘したJEMSもそんな状態を克服しようとしたのか苦心の跡が見えるものの、それも改善には繋がっていない。むしろ、周囲の喧騒を抑え込もうと徴した結果、妙なエフェクトのかかったようなサウンドになってしまっているのです。なんだかお薦めしているのか違うのか分からなくなってきましたが、そうは言ってもミラードのオリジナル・マスター。ダビングを経ていない鮮度は素晴らしく、何よりも録音自体のクオリティは極めて高度。オンな芯の密着感も、ディテールの細やかさもオーディエンス録音の常識を遙かに超越している。ブリブリ・ゴリゴリとしたベースも鮮やかに舞い踊るギター&キーボードも「まるでサウンドボード」を地で行く凄まじさ。結局、究極は『MIKE'S MINT』だった。大元マスターの発掘により、その事実が確定しました。ただし、頂点ではないとしても本作も並ではない。シンプルに「良い音で“GOING FOR THE ONE Tour”を体験する」のにピッタリなライヴアルバムですし、伝説録音を愛してきた方なら「大元の真実」というだけで胸に迫るものがあるでしょう。何も知らずに聴いても素晴らしく、踏み込むほどに感慨が湧き上がる1本なのです。そんな大元マスター・シリーズの最新弾。伝説名手マイク・ミラードのオリジナル・マスターがリリース。マスターの保管状態から既発『MIKE'S MINT』には一歩及ばないものの、伝説的な名録音の大元サウンドが楽しめる銘品です。The Forum, Inglewood, CA, USA 23rd September 1977★これだけ聴けば超高音質ですが・・・ Disc 1 (65:45) 1. Firebird Suite 2. Parallels 3. I've Seen All Good People 4. Close To The Edge 5. Wonderous Stories 6. Colours Of The Rainbow 7. Turn Of The Century 8. In The Midnight Hour 9. And You And I 10. Going For The One Disc 2 (42:43) 1. Flight Jam 2. Awaken 3. Starship Trooper 4. Roundabout