コンセプト・アルバム『第七の予言』を全英1位に送り込み、デビュー間もないGUNS N' ROSESを従えて全米攻略に乗り出した1988年のIRON MAIDEN。その現場を伝える大傑作ライヴアルバムが登場です。そんな本作に吹き込まれているのは「1988年6月1日シアトル公演」。その極太オーディンス録音です。“Seventh Tour Of A Seventh Tour”と言えば、公式映像『MAIDEN ENGLAND』や名盤『MONSTERS OF ROCK 1988: 25TH ANNIVERSARY EDITION』『SEVENTH SON OF STOCKHOLM』が代表的。まずは当時のスケジューを振り返り、それぞれの位置関係をチェックしてみましょう。《4月11日『第七の予言』発売》・4月28日+29日:西ドイツ(2公演)・5月8日ー8月10日:北米(60公演) ←★ココ★・8月17日+20日:英国#1(2公演)←※MONSTERS OF ROCK・8月27日ー10月5日:欧州(20公演)←※SEVENTH SON OF STOCKHOLM・11月18日ー12月12日:英国#2(16公演)←※MAIDEN ENGLAND これが1988年のIRON MAIDEN。上記した有名3作品はいずれもツアー後期の記録でしたが、本作のシアトル公演は逆に序盤。「北米」レッグ13公演目にあたるコンサートでした。ちなみに、冒頭の西ドイツ2公演はCHARLOTTE AND THE HARLOTSを名乗ってのシークレット・ギグ。実質的に「上記3作品+本作」でツアー全景を俯瞰できるわけです。北米の記録というだけでも貴重な本作ですが、サウンドもスペシャル。このショウは古くから不完全版や音の良くない録音が知られてきましたが、本作はそれとは異なる新発掘マスター。コレクター界では有名な「Rush-Fan」なる人物のコレクションで、ごく最近になって公開された最新トランスファーなのです。実際、そのサウンドは極太にして端正。“Seventh Tour of a Seventh Tour”は基本的にオーディエンス録音に恵まれないツアーとして知られており、(本数はあるものの)クオリティ面で今イチ録音ばかりというイメージが定着しています。もちろん録音違いやジェネ違いを丁寧に追っていけば極上級の録音もあるわけで、本作はその好例になるものです。とにかく芯が極太ですし、距離感もまるでない。ほんのりとホール鳴りも吸い込んでいるのでサウンドボードと間違えはしませんが、それもディテールを隠すことなく芯に艶とダイナミズムを与えている。特にスティーヴ・ハリスのベースは凄い。バキバキバキバキ……とあの特徴的なエッジが鋭く切り立ち、鳴りを食い破って楽曲を引っぱりまくる。しかも、鳴りがあるからこそエッジだけのスカスカ音にならず、どっしりとした手応えも強烈なのです。それだけパワフルだとビビリや割れが気になりますが、本作にその心配はない。とにかく鳴りがきめ細やかで、まるでキニーの名録音かのように美しい。FM放送のようにくっきり&ダイナミックでありつつ、そこにほんのりリアルな「立ち会い感覚」が滲み出す。そんなタイプの名録音なのです。そのリアル&ゴージャスなサウンドで描かれるのは、至福の“Seventh Tour Of A Seventh Tour”のフルショウ。ここでは象徴『MAIDEN ENGLAND』と比較しながらセットを整理してみましょう。第七の予言(6曲)・Moonchild/The Evil That Men Do/Infinite Dreams(*)/Can I Play With Madness/The Clarivoyant/Seventh Son Of A Seventh Son クラシックス(10曲)・魔力の刻印:The Prisoner/The Number Of The Beast/Hallowed Be Thy Name(*)/Run To The Hills・その他:Iron Maiden/Running Free/The Trooper(★)/2 Minutes To Midnight(★)/Heaven Can Wait(*)/Wasted Years ※注:「★」印は公式『MAIDEN ENGLAND』で聴けなかった曲。「*」印は2012ー2014年の復刻ツアーで演奏しなかった曲。 ……と、このようになっています。2012ー2014年には復刻ツアー“MAIDEN ENGLAND World Tour”も行われましたが、そこでは演奏されなかった名曲「Infinite Dreams」も披露。やはり「本物の1988年」は格別です。また、バンドの調子もすこぶる良い。ツアー序盤という事もあってか勢いもたっぷりですし、勢いだけでもない。15公演をこなしたことで大量の新曲群もこなれつつ、まだ慣れが出ていないので丁寧に演奏しているのが実にイイ感じです。特にブルース・ディッキンソン。彼のノドが本格復調するのは、次の“No Prayer on the Road”以降ではありますが、ここでは丁寧に歌っているので『MAIDEN ENGLAND』よりも楽曲の美しさが際立って聞こえます(逆にクラシックスはすでに慣れが出て荒っぽくなってきていますが)。また、ちょっと面白いのがアンコール初めのMC。現在でもサポート・キーボーディストのマイケル・ケニーがツアーに帯同していますが、彼が最初に雇われたのが“Seventh Tour Of A Seventh Tour”。この頃はメンバー紹介でしっかり彼の名前もコールされています。黄金の80年代を締めくくった“Seventh Tour Of A Seventh Tour”。その北米編をフル体験できるライヴアルバムの新名盤です。「1988年6月1日シアトル公演」の極太オーディンス録音。ごく最近になって公開された最新トランスファーで、極太にして端正。距離感もまるでない芯が力強く、ホール鳴りもディテールを隠すことなく芯に艶とダイナミズムを与えている。そしてその鳴りを食い破って届くベースのバキバキ感の凄い事! FM放送のようにくっきり&ダイナミックでありつつ、そこにほんのりリアルな「立ち会い感覚」が滲み出す。そんなサウンドで80年代の極みであった“Seventh Tour Of A Seventh Tour”のフルショウを現場体験できます。Center Coliseuim, Seattle, WA, USA 1st June 1988 TRULY PERFECT SOUND Disc 1(59:51) 1. Moonchild 2. The Evil That men Do 3. The Prisoner 4. Infinite Dreams 5. The Trooper 6. Can I Play With Madness? 7. Heaven Can Wait 8. Wasted Years 9. The Clarivoyant 10. Seventh Son of a Seventh Son Disc 2(36:44) 1. The Number of the Beast 2. Hallowed Be Thy Name 3. Iron Maiden 4. MC 5. Run to the Hills 6. 2 Minutes to Midnight 7. Running Free Bruce Dickinson - vocals Dave Murray - guitar Adrian Smith - guitar, vocals Steve Harris - bass, vocals Nicko McBrain - drums