【定番ライブ番組の大元サウンドボードマスター!】エリック・クラプトンの秘蔵音源ではイギリス在住の重鎮テーパーから、また新たなマスターがもたらされました。1977年4月26日に、有名なイギリスBBCのライブ番組「オールド・グレイ・ホイッスル・テスト」(以下OGWT)にクラプトンが出演した際の、サウンドボードマスターです。クラプトンの「OGWT」と言えば、VHSとレーザーディスクの時代にメディア上では初のライブ映像として公式リリースされた記念すべき作品で、ファンならば観たことがない人はいないくらい有名なものです。従って、音源としてはこのライブは珍しくないものなのですが、今回重鎮テーパーから提供されたのは、当時BBCが映像収録とは別にレコーディングしていたサウンドボードマスターのダイレクトコピーだったのです。つまり、既発の公式映像メディアから音声部分だけを抜き出した「副産物」CDとは一線を画す、究極の高音質を誇るマスターなのです。その証拠に、冒頭に入っていた番組司会のボブ・ハリスのMCから収録されています。アーティストのライブパフォーマーとしての実力を鑑賞、判断するには、やはり「音」のみを聴く必要があります。この映像のリリース当時、彼のキャリア上初めての「動くクラプトン」が観られるメディアということで、大いに宣伝され、盛り上がったものですが、実際に観てみると、アルコール中毒進行中の時期だったこともあって、明らかに酔っていることが判る佇まいで、それはバックシンガーのイヴォンヌ・エリマンのフィーチャリングナンバーを紹介する際のMCで「エヴェンヌ・オリマン」とやってしまったことでも証明されてしまいました。そして記念すべき初リリース映像にもかかわらず、大名曲のLaylaをやっていない。「期待したのに、イマイチだった。」という意見がファンの大半を占めました。しかし本作リリースの意義は、BBC保管のロウマスターの超高音質でこの音源を再点検し、その評価に再検討を加えていただくことにあります。映像作品ではどうしても「画」の方に注意が払われ、「音」である演奏に集中できないという傾向がありますが、本作で「音」に集中して、このライブステージでのクラプトンの、プレイヤーとしての本質を見極めていただきたいと思います。【好不調の波があったクラプトンの、後半の巻き返しが聴きどころ!】1977年と言えば、クラプトンがソロアーティストとしてのステイタスをほぼ確立し、リリースするアルバムも常にチャートの20位以内を堅持していた時期でした。ここで、この年のクラプトンの活動歴を見ていくことにしましょう。・2月14日:故郷のイギリス、サリー州クランレーでのチャリティ・コンサートに出演(バンド名義は「エディ・アースクエイク&ヒズ・トレマーズ」)・4月20日~29日:短期イギリス・ツアー ←★ココ★・6月4日~20日:短期ヨーロッパ・ツアー・8月5日:スポットでスペインのイヴィザで公演・8月11日:続いてバルセロナでも公演・9月26日~10月7日:ジャパン・ツアー・10月9日、10日:ハワイ、ホノルル公演 このスケジュールの狭間であった5月に、クラプトンは名盤「SLOWHAND」のレコーディングをロンドンのオリンピック・スタジオで行いました。そして完成させ、短期ツアーとスポットのスペイン公演を行いました。しかし4月時点で実施したツアーでのセットリストはそれまでと同様、前作「NO REASON TO CRY」収録曲がセットインしたものとなっていました。この「OGWT」は、短期ヨーロッパ・ツアーの合間を縫って出演したものでした。当然この日のセットリストも当該アルバムからの収録曲が組まれていて、序盤の2曲とDouble Troubleがそれに当たっていました。序盤2曲はアルバムどおりのカントリータッチのテイストを醸し出すいい演奏ですし、次曲のAlbertaもよくアコギで演奏していた時期です。この翌日、4月27日のロンドン、ハマースミス・オデオン公演のフルステージ音源はオフィシャル盤「SLOWHAND 35TH ANNIVERSARY EDITION」に収録されていますが、それを聴くと、ノリにノッたクラプトンの素晴らしいパフォーマンスが確認できます。従って「呑んべえ」状態であったとしても、クラプトンは彼のポテンシャルを十分発揮していた時期だったと言えます。この「OGWT」の序盤では主にマーティンのコードプレイしかしていないクラプトンだけに、中々本領発揮とはいかないわけですが、この理由は、酒に酔っていた上に、テレビでのライブ収録という設定環境が、クラプトン自身苦手だったことが挙げられます。一方で公式映像収録となると、普段以上に燃えて結果を出すストーンズとは真逆のアーティストだったわけです。そのため前半は緩い曲構成もあって、クラプトンらしいプレイが中々登場しませんが、ブラッキー・ストラトに持ち替えるTell The Truthあたりから、クラプトンの切れ味が戻り始めます。やはり彼の調子が出るのは、ギターソロを含むナンバーに限ると言えるでしょう。ブルースのDouble Troubleでリラックスし、I Shot The Sheriffで聴かせるソロは、正にクラプトンらしい流麗なもので、澱みなく流れるシャープなフレーズは、プレイに没頭している様を想起させます。Further On Up The Road~Badgeという代表的ナンバーでは、本来の調子を取り戻し、終盤に相応しい盛り上がりを見せています。蛇足ながら、なぜこのステージでは普段のオーラスナンバーだったLaylaをプレイしなかったのか?という点に言及しておきますと、一言で言えば、「公式映像に収められるだけの、完成形のライブバージョンではなかったから」と推察できます。74年のカムバック以降、ライブステージでは常にLaylaは演奏され、ステージのハイライトとなっていたわけですが、それはオリジナルバージョンとはかなり異なった印象を与えるものでした。当時のライブバージョンの特徴を挙げてみますと、?後半のピアノコーダをプレイせずに終わったり、時にはエヴァリー・ブラザーズのスタンダードAll I Have To Do Is Dreamをジョイントした変形バージョンにしていた(かつてのデレク&ザ・ドミノスのメンバーで、ピアノコーダを提供したジム・ゴードンに対してあまりいい感情を持っていなかったため、彼を想起させるこのパートを避けたのではないかと考えられます。ドミノスは彼とクラプトンの喧嘩で空中分解しましたから)、?特徴的な7連フレーズをセカンドギターのジョージ・テリーに任せていましたが、彼のフレーズのニュアンスが若干オリジナルとは異なっていた、?後奏では、クラプトンの調子次第で、ソロをテリーに譲ったり、クラプトン自身のソロも出たとこ勝負で好不調の波が激しかった、などです。従って、このテレビ収録日、クラプトンはLaylaを後世に残るソフトに収める自信がなかったということでしょう。その代わりに自信満々でBadgeをプレイして、ステージを締めくくっています(Badgeもオリジナルバージョンとはかなり印象が違いましたが、アレンジは固まっていましたから)。BBC保管の究極マスターで聴くクラプトンの「OGWT」。ザ・バンドとの共演盤「NO REASON TO CRY」のテイストを持ち込み、この時期ならではのステージングを見せた特別なライブで、クラプトンの魅力を再発見してください。公式映像の音声とは比較にならない程、超クリアー。これぞマスターの底力!!BBC TV Theatre, Shepherds Bush, London, UK 26th April 1977 STEREO SBD*UPGRADE(from Original Masters)*BBC master audio from OGWT show in 1977. It includes Bob Harris' introduction which has never appeared on CD before. Sound quality is the best ever. (60:33) 1. OGTW Intro 2. Bob Harris' Introduction 3. Hello Old Friend 4. Sign Language 5. Alberta 6. Tell the Truth 7. Can't Find My Way Home 8. Double Trouble 9. I Shot the Sheriff 10. Knockin' On Heaven's Door 11. Further On Up the Road 12. Badge Eric Clapton - Guitar / Vocals George Terry - Guitar Dicks Sims - Keyboards Carl Radle - Bass Jamie Oldaker - Drums Sergio Pastora Rodriguez - Percussion Yvonne Elliman - Backing Vocals Marcy Levy - Backing Vocals