1968年、人気の頂点にあったドアーズはヨーロッパ・ツアーを終えた凱旋公演をかのLAフォーラムにて敢行します。同会場でのロックコンサートは10月のクリーム(と前座のディープ・パープル)が初となり、ドアーズは二番目にしてアメリカ勢では初めてフォーラムを使ったロックコンサートを開いたのでした。この事実からも当時の彼らがいかに人気絶頂であったかを物語っており、それまでと比べてネクスト・レベルのアリーナへの進出となったことから、大会場コンサートにおいてレイ・マンザレクの手に余るベース・パートを補うべくサポート・ベーシストとして60年代を代表するセッションマン、ハーヴェイ・ブルックスが参加しています。そんな歴史的一夜は残念ながらオフィシャルの収録こそ叶わなかったものの、幸いにもオーディエンス録音が残されました。1970年代に入って名オーディエンス録音が量産されるアリーナとなるLAフォーラムですが、さすがに1968年の録音、なおかつ同会場における最初期のロックコンサートということから、これぞビンテージオーディエンスと言った味わい。とはいえ轟音、あるいは遠くからこだまするような類では(まったく!)なく、これが意外なほど聞き込めてしまう。それどころか好評発売中の「DALLAS 1968」が証明しているように、ドアーズ68年アメリカでのオーディエンス録音は時代を考えれば驚くほど聞きやすく、このLAフォーラムにしても例外ではなかった。もちろんダラスの域には及ばないものの、何より彼らの地元のアリーナでの凱旋公演な割に観客が驚くほど大人しく、これがまた聞きやすさへと結びついたように思われます。演奏やジム・モリソンのボーカルの輪郭もしっかりした印象。この日の音源で唯一、会場が騒がしくなるのは「Light My Fire」の演奏後、ライブ初演となる「The Celebration Of The Lizard」組曲が披露されるのですが、この日の為に特別に用意された大作を披露するまでの準備に間が空いてしまい、そこで観客が騒がしくなってしまったのです。後の「ABSOLUTELY LIVE」でリリースされた69年のライブ版と比べるとまだ各セクションへの移行がスムーズとはいえず、いかにもライブ初演らしい拙さが散見されますが、むしろ微笑ましい。今回リリースされる「STOCKHOLM 1968: PRE-FM」の「Light My Fire」で聞かれたように、ヨーロッパ・ツアーまでは同曲の導入用パートとして盛り込まれていた語りやインプロビゼーションがすべて「The Celebration Of The Lizard」に取り込まれたことで、その「Light My Fire」があっさり始められるのも面白い。ストックホルムから三か月でこれほどまでの変化を遂げていたことも、当時のドアーズがいかに勢いに乗っていたかを物語るもの。そしてピッチもアジャストして更に聞きやすくなっています。何よりアメリカ西海岸におけるロックの殿堂と化すLAフォーラム最初期のロックコンサートのドキュメントとしても極めて貴重なドキュメント!The Forum, Inglewood, CA, USA 14th December 1968 (70:44) 01. Announcement / Tuning 02. Tell All The People 03. Love Me Two Times 04. Who Scared You? 05. Spanish Caravan 06. The Crystal Ship 07. Wild Child 08. Touch Me 09. Light My Fire 10. MC 11. The Celebration Of The Lizard 12. Maggie M'Gill 13. MC Jim Morrison - vocals Ray Manzarek - keyboards Robby Krieger - guitar John Densmore - drums