いよいよ佳境に入ったジェフ・ベック&ジョニー・デップの共演ツアー。その最新ステージをフル体験できるライヴアルバムが到着です。そんな本作に吹き込まれているのは「2022年10月19日ナッシュビル公演」。その超極上オーディエンス録音です。本稿に目を留められた方ならすでに日程が頭に入っているかも知れませんが、ツアーデートを現在進行形で追っていくのもリアルタイム・レポートの醍醐味。今回も活動全景に照らしてショウのポジションを探ってみましょう。・5月27日ー6月7日:英国(9公演)・6月19日ー7月15日:欧州#1(12公演)《7月15日『18』発売》・7月17日ー7月25日:欧州#2(7公演)・9月23日ー11月6日:北米(26公演) ←★ココ★ >>今ココ<<・11月8日ー12日:北米(4公演) これが現在までに公表されている2022年のスケジュール。様々なバンド/アーティストが2023年の予定を公表しておりますが、ジェフは上記がすべて。来年前半期は休むのか、それとも早くも次作に取りかかるのか。先が見通せない状況です。ともあれ、今回のツアーも残すところ4公演。最終レッグは「北米」ツアーであり、本作はその3作目のライヴアルバムでもあります。ここで「北米」ツアーにフォーカスし、それぞれの位置関係も確認しておきましょう。「北米」レッグの詳細・9月23日ー10月4日(8公演)*10月6日『BOSTON 2022』・10月7日ー10日(3公演)*10月11日『NEW JERSEY 2022』・10月13日ー17日(4公演)*10月19日:ナッシュビル公演 ←★本作★・10月20日ー23日(3公演) ー1週間後ー・11月1日ー12日(9公演)※注:「*」印がコレクションのある日。 このように、本作のナッシュビル公演は全30公演の北米ツアーの18公演目。前作『NEW JERSEY 2022』から約一週間を経たコンサートでした。そんなショウを真空パックした本作は「極上」を画に描いたようなそれはそれは見事なオーディエンス録音。これまでご紹介してきた名作群もそれぞれに傑作でしたが、本作は一歩踏み込んだようなダイレクト感がスゴい。ギターもリズム隊も密度たっぷりでスカスカ感がまるでなく、まるでステージ上でメンバー達と並んでいるかのように「近い」のです。特にデップの歌声には目を見張る。これまでの録音はジェフのギターをオンに捉えていてもヴォーカルには距離感がある傾向でしたが、本作はヴォーカルも密度パンパン。声の伸びに空間感覚も感じはするものの、それが会場音響なのかエフェクトの演出なのか判別できないほどオンなのです。そんな超ダイレクト・サウンドで描かれるのは、完成の域に達したコラボ・ツアーの全景。セットは前作『NEW JERSEY 2022』と完全同一(前々作『BOSTON 2022』とは曲順違い)ですが、一応ここでも再掲しておきましょう。前半(インスト・ステージ)・『18』:Midnight Walker/Caroline, No・アルバム曲:Freeway Jam/Loose Cannon/Big Block/Star Cycle/Brush With the Blues/You Never Know/Cause We've Ended as Lovers・その他カバー:You Know You Know/Me and the Devil Blues 後半(ジョニー・デップ共演)・『18』:This Is A Song For Miss Heady Lamarr/Isolation/Time/The Death And Resurrection Show・その他:Rumble/A Day In The Life/Corpus Christi Carol/Little Wing ……と、このようになっています。そして、このセットを紡ぐパフォーマンスこそが素晴らしい。ここまで場数を踏んだことでアンサンブルは十二分にこなれ、前日が休みなせいか調子も上々。オンなサウンドもあってかジェフのギターがやけに艶やかでキレているように感じます。そんな中で成長を感じさせるのがデップ。下手ウマ系ヴォーカルで歌唱力に向上は望めませんが、ステージ度胸はついた感じ。もともと世界の大スターですから度胸に問題はないのでしょうが、歌声に思い切りの良さ、豪快に感情をぶつける勢いが出ているのです。また、そんなデップに贈られる大歓声も聴きどころ。演奏中は静かに締まり返りますし、ポジションが良かったのかアメリカにしては大人しいくらいに聴きやすい。しかし、そんな本作にあっても例外なのがデップ登場の「Rumble」。インストでデップは歌わないのですが、イントロのリフが轟くやもの凄い「キャー!」が吹き上がる。本作は光景なしのライヴアルバムではあるのですが、ノシノシと出てくるデップの姿が目に浮かぶほどリアルです。そして、それが曲の終わりを待たずに鎮まるのも面白い。デップのヴォーカルを聞き逃すまいとしているのか、まるで日本公演のような落差です。もうすぐ終焉を迎えようとしている世紀のコラボ・ツアー。まだ数公演残っているのでツアーNo.1を断言することはできませんが、本作はその最有力候補となるでしょう。今後、公式にライヴアルバムが出るかは分かりませんが、実現しなかったとしても本作がある……そう思えるほどのオンで美しい大傑作。「2022年10月19日ナッシュビル公演」の超極上オーディエンス録音。これまで以上にオンなダイレクト感が素晴らしく、ギターもリズム隊も密度たっぷりでスカスカ感がまるでなく、まるでステージ上でメンバー達と並んでいるかのように「近い」。特にデップのヴォーカルまで密度パンパンに捉えている録音はそうそうありません。ツアーNo.1の最有力候補となるクオリティで奇跡のコラボ・ショウをフル体験できる最新名盤です。Brown County Music Center, Nashville, IN, USA 19th October 2022 ULTIMATE SOUND Disc 1(47:04) 01. Freeway Jam 02. Loose Cannon 03. Midnight Walker 04. Big Block 05. Caroline, No 06. You Know You Know 07. Me and the Devil Blues 08. Star Cycle 09. Brush With the Blues 10. You Never Know 11. Cause We've Ended as Lovers Disc 2(37:24) 1. Rumble 2. This Is a Song for Miss Hedy Lamarr 3. Isolation 4. Time 5. Venus in Furs 6. A Day in the Life 7. Corpus Christi Carol 8. Little Wing 9. The Death and Resurrection Show Jeff Beck - Guitar Rhonda Smith - Bass Anika Nilles - Drums Robert Adam Stevenson - Keyboards Johnny Depp - Guitar, Vocals