マイク・ミラードがグレイトフル・デッドのステージまで録音してくれていたことはこれまでにリリースされてきた「LOS ANGELES 1991: MIKE MILLARD MASTER TAPES」と「LONG BEACH ARENA 1980: MIKE MILLARD FIRST GENERATION TAPES」が証明してくれましたが、驚いたことに彼はデッドのメンバーのソロ・ライブまで録音してくれていたのです。今回明らかとなった新たなミラード・マスターはデッドのボブ・ウィアーが今は亡きセッション・ベーシストのロブ・ワッサーマンと1989年に行ったツアーから、アーバイン・メドウズでのショーを素晴らしい音質にて捉えてくれました。ウィアーのアコギとワッサーマンのアップライト・ベースという小編成かつアコースティックなステージでもミラードの極上クオリティは健在。今回も当たり前のようにサウンドボードチックな音像が聞く者を圧倒します。45分足らずという短いステージではあるものの、母体デッドと違いシンプルな伴奏でサクサク進む歌モノ・ライブは実に聞きやすい。とはいえ通常のベース・プレイヤーとは違う独特のリード弾き的なプレイで一世を風靡したワッサーマンを伴っていますので、ウィアーがアコギのストロークに徹している分、彼が随所でリードのフレーズを弾いて間奏を埋めているのが面白い。またウィアーのソロ・ライブということから盛り込まれたデッド・ナンバーはすべて自身がリードボーカルをとった曲ばかりでして、しかも「Victim Or The Crime」に至っては後にデッドのアルバム「BUILT TO LAST」に収録される曲ですが、それをリリース前に披露するという貴重な場面まで最高音質で捉えてくれています。後にウィアーとワッサーマンのステージは1992年ツアーの分も含めてオフィシャルのライブアルバムがリリースされますが、こちらは89年のステージだけを収録。それに何と言ってもオフィシャルでは聞けないビートルズのカバー「Blackbird」やスタンダード・カバー「Fever」といった名曲をこれまた極上音質で楽しめるのもポイント高い。そしてフィナーレはデッド史上最高の成功をバンドにもたらしたアルバム「IN THE DARK」から自身が歌う「Throwing Stones」で幕を閉じますが、これが凄い盛り上がり。それなのにコール・アンド・レスポンスにかき消されないのがミラード録音らしいところで、彼の録音が身上とする演奏の近さと絶妙なバランスの臨場感が合わさった、掛け値なしの絶品オーディエンスだと断言いたします。何より「デッドの長いジャム系ライブはちょっと…」という人も、このいい意味で異色かつロックな弾き語りステージは演奏時間がコンパクトなこともあってすんなり入り込めるはず。またしてもハイクオリティなミラード録音でデッド・ファミリーの貴重なアコースティック・ライブをじっくりお楽しみください。Irvine Meadows Amphitheatre, Irvine, CA, USA 19th May 1989 TRULY PERFECT SOUND (46:52) 1. Walkin' Blues (Son House cover) 2. Twilight Time (The Platters cover) 3. Blackbird (The Beatles cover) 4. The Winners 5. Fever (Eddie Cooley cover) 6. Victim Or The Crime 7. This Time Forever 8. Easy To Slip (Little Feat cover) 9. Wasserman Solo 10. Throwing Stones Bob Weir - acoustic guitar, vocals Rob Wasserman - electric upright bass