4年ぶりの来日も発表になり、注目度が俄然高まっているスティング。その予習に。。。まったくならない衝撃・最新の事件盤が到着しました。緊急リリース決定です!事件が起きたのは「2022年11月17日アムステルダム公演」。本作は、その一部始終を完全収録した極上オーディエンス録音です。その事件とは、スティングの絶不調。酷い風邪にかかってしまい(新型コロナは陰性だったそうです)、声がまったく出ない。それでもなんとかショウを進めるものの、遂に力尽きてしまう。普段なら100分はあるコンサートが1時間も経たずに終了してしまったのです。ただし本作は、単に苦しげで短いライヴアルバムなわけでもありません。スティングはシーン随一のプロフェッショナルであり、ピンチに直面しているからこそ滲み出るプロ根性と音楽センスがスゴいのです。その気になる内容の前に、まずはショウのポジション。来る日本公演とも併せ、現在進行形のスケジュールをおさらいしておきましょう。2022年・3月24日ー4月21日:欧州#1(9公演)・5月2日ー5月22日:北米#1(14公演)・6月3日ー18日:ラスヴェガス#1(8公演)・6月21日ー8月8日:欧州#2(31公演)・8月25日ー9月16日:北米#2(14公演)・9月20日ー11月17日:欧州#3(33公演)←★ココ★×11月20日ー24日(延期4公演)×2023年・1月9日+10日:ピッツバーグ(2公演)・1月27日ー2月5日:中東/南アフリカ(5公演)・2月10日ー3月4日:オセアニア(12公演)・3月8日ー14日:日本(5公演)・3月20日:クアラルンプール公演・4月1日ー9日:ラスヴェガス#2(6公演)・6月6日ー7月18日:欧州#4(17公演)これが現在までに公表されているスケジュール。パンデミックで抑え込まれた反動か、今年だけでも既に100公演を軽く超えている。とても70代の仕事量ではなく、「そりゃ体調も崩すわけだ」と妙な納得もしてしまう凄まじさです。そして、事件が起きたアムステルダム公演は「欧州#3」。このショウを最後にツアーは中断(当たり前です)され、残り4公演を延期が告知されています。さて、そんな事件現場を記録した本作は、クオリティも超極上。ざっくり言えば「まるでサウンドボード」。ヘッドフォンで聴き込めば声の伸び(てないんですけどね)に空気感は感じるものの、それも全力で判別しようとしての話。芯の力強さや細やかなディテール、見事なセパレート感、それに肝心要となるヴォーカルの機微に至るまで、すべてが客録離れしている名録音です。あまり美辞麗句を並べている場合でもないので、さっさとショウ内容に移りましょう。そんな極上サウンドで画かれるのは、出ない声と戦うスティングの姿。途切れ途切れな歌声は痛々しくもあるものの、その一方で出ないなら出ないなりに柔軟に対応していくところが大ベテランらしい。まず、曲順。序盤は普段通りにスタートするのですが、そのうちセットを省き始める。ノドに負担のかからない静かな曲を選び、それでいて流れも考えながら進めていく。結果として11曲で終えてしまうのですが、終盤はしっかり必殺の「Fragile」「Every Breath You Take」で畳みかけてフィニッシュするのです。よく不調を押してショウを強行し、セットの途中で投げて中断するアーティストはいますが、スティングは違う。できるだけその場のオーディエンスを盛り上げ、後味良く終わらせているのです。では、ここでその選曲もチェックしておきましょう。新曲(4曲)・ザ・ブリッジ:If It’s Love/Loving You(★)/Rushing Water・アーケイン(OST):What Could Have Been クラシックス(7曲)・ポリス:Message In A Bottle/Every Little Thing She Does Is Magic/Every Breath You Take・ナッシング・ライク・ザ・サン:Englishman In New York/Fragile・テン・サマナーズ・テイルズ:Fields Of Gold/Shape Of My Heart ※注:「★」印は映像作『REIMS 2022』で聴けなかった曲。……と、このようになっています。ツアー第一報の『REIMS 2022』では聴けなかった新曲「Loving You」も披露しますが、やはり本作の聴きどころは演奏ぶりと現場の雰囲気。例えば、即興アレンジ。歌えないなら歌えるように変えれば良い……と口で言うのはカンタンですが、ぶっつけ本番でいきなりアレンジを変えられるアーティストはそうそういない。「Roxanne」は静かなアコースティックなボサノバ・スタイルにしていますし、「Every Breath You Take」もキーを変えている。もちろん、ステージ上で全員に綿密な打ち合わせなどできるはずがなく、スティングがホンのひと言ふた言告げただけでがらりと変えられるバンドの面々も凄まじい音楽センスです。さらに面白いのが、そんなショウの進行を開けっぴろげに話すスティングのMC。最初は「今日はどうもしゃがれ声だね。まぁ、そのうち戻るさ」と気楽に構えているのですが、「なかなか(調子が)戻らないね」「新型コロナは陰性だったよ」と苦笑い。そう言いつつ苛立ちはせず、悲哀も見せないからムードも良い。そして「高音が出ないから新しいアレンジでやってみようか」「If I Ever Lose My Faith In Youをやろうと思ったけど……高すぎるな。Fields Of Goldにしよう」「よし、じゃあアコースティックにしよう。ダニー、ギターを貸して」などなど、逆にアットホームな暖かみまで醸してくるのです。あらゆる手立てを尽くしつつ、やはり声が戻ることなくショウは終了。「今日はみんなの期待したショウはできなかったね。ボクにとってもそうだ。またここに必ず戻ってきて、フルヴォイスで臨むよ」と約束してスティングは去ります。確かに彼の言う通りではありますが、期待していなかったプロフェッショナリズムと高い音楽センスを見せつける一夜でもありました。そんなMCの数々や即興の機微も隅々までしっかりと味わえる希代の名録音。「2022年11月17日アムステルダム公演」の極上オーディエンス録音。スティングが悪性の風邪に罹り、約1時間で切り上げてしまった絶不調なショウでした。単に声が出ないだけでなく、出ないなら出ないなりに曲順を変え、アコースティックやキーの変更などその場でどんどんアレンジしていく柔軟さと実際にやれてしまう高い音楽性がスゴい。そんな演奏の機微はもちろん、不調を隠さず、逆にアットホームな雰囲気にしてしまうMCの一言一言までハッキリ/くっきり楽しめる極上サウンドも素晴らしい希代の大名盤です。AFAS Live, Amsterdam, Holland 17th November 2022 ULTIMATE SOUND (57:52) 1. Message in a Bottle 2. Englishman in New York 3. Every Little Thing She Does Is Magic 4. If It's Love 5. Loving You 6. Rushing Water 7. Fields of Gold 8. Shape of My Heart 9. What Could Have Been 11. Fragile 12. Every Breath You Take Sting - vocals, bass, acoustic guitar Dominic Miller - guitars Zach Jones - drums Kevon Webster - keyboards Shane Sager - harmonica Melissa Musique - backing vocals Gene Noble - backing vocals