ビートルズでも話題となっている「Prof. Stoned」のリミックス・シリーズ。そのPINK FLOYD篇が登場です。制作者自ら「ビートルズより大胆」と語る衝撃のサウンドCDで緊急リリース決定です。自然なステレオ感覚の『夜明けの口笛吹き』いきなりビートルズ連呼から入ってしまいましたが、本作の主役はPINK FLOYD。デビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き』のステレオ・リミックスです。そもそもモノ盤/ステレオ盤の双方で公式リリースされたわけですが、1967年当時はまだまだステレオ作品の定石も定まっていなかった。そのため、ステレオ盤のミックスは、70年代以降の感覚からするとやや奇異。曲によっても異なりますが、「左側のギターと右側のリズム隊に挟まれる」ですとか「片方からヴォーカルが聞こえない」のような異次元感覚でもありました。それもまた時代感であり、プロデュースを務めたノーマン・スミス氏の意匠でもあるわけですが、それゆえにモノ盤に人気が偏り、ステレオ盤にアンティーク的な味わいが定着してしまったのも否めない。しかも、オリジナルの4トラック・マスターは1967年に破棄されている(「Matilda Mother」のみ現存)ので、公式での再ミックスも望めません。そこで登場したのが本作。「通常ステレオ感覚の『夜明けの口笛吹き』」というファンの夢を実現した1枚なのです。ただし、この「通常ステレオ化」構想は今回初めての試みではありません。本稿に目を留められた方ならご存知と思いますが、3年前には『2019 STEREO REMIX』が大好評を博しました。もちろん、本作は『2019 STEREO REMIX』とは完全に別物。まったく無関係の「Prof. Stoned」がイチから制作し、ごく最近になって公開したもの。しかも、前回盤『2019 STEREO REMIX』よりも遙かに自然で、鮮やか。さらにはシングル曲までボーナス付属している最新バージョンなのです。あらゆる手段が駆使された最新のステレオ化今回盤の大元となっているのは以下3種の『夜明けの口笛吹き』。メインは「A」で「B・C」は補足用のサブ・ソース。特に「C」は「Astronomy Domine」の一部でのみ使用されています・A:1994年のリマスター盤(ステレオ)・B:2007年の40周年盤(モノ&シングル曲)・C:1987年盤(ステレオ)基本的に「A」がベースですが、パートによっては不自然なパンの動きがあると使えませんし、そもそも「A」には欠けている要素もある。そうしたパートを「B」から抽出しているわけです。作業的には「A」と「B」を同期させ、両方をDemix Proで各楽器に分解し、そこからパーツを組み直していく。例えば「Interstellar Overdrive」なら、ほとんどが「A」から採用され、オルガンとギターが「B」から抽出されているのです。もちろん、これはあくまで基本パターン。パートやエフェクトのかかり具合等によっては「A」をモノ化してからパーツを抽出したり、「B」の方をベースにしたり。あらゆる手段と組み合わせを試しては、最適解を探っていったようです。公式よりナチュラルで、前回盤より圧倒的に鮮やか実際、本作はその甲斐が十二分に感じられる素晴らしい出来映え。冒頭の「Astronomy Domine」からして大感動モノ。公式のステレオ盤(つまりA)では左=ドラム/右=ベースと完全に分けられ、ギターもヴォーカルも偏っていましたが、本作ではリズム隊がビシッとセンター。これによって重心が落ち着き、左右へ自在にパンするギターやヴォーカルの空間感覚にじっくりと浸れるのです。こうしたバランス感覚は前回盤『2019 STEREO REMIX』とも共通しているわけですが、本作は完成度が段違い。『2019 STEREO REMIX』も自然には思えたものですが、本作と比べると平板でステレオ空間が狭い。実際、ステレオのパン幅は「A」よりも狭く、イメージ的には「疑似ステレオの進化形」といった感じでした。それに対し、本作は圧倒的に自然なバランス感覚ながらパン幅も「A」と同等以上なのです。さらに加えるなら、音質自体も『2019 STEREO REMIX』よりクッキリ鮮やか(恐らく元となった公式盤のセレクトが違うのでしょう)。まさに現代にも通用するステレオ・ミックスなのです。こうした違いは全曲で炸裂。頭が右へ引っぱられるように偏っていた「Lucifer Sam」「Pow R. Toc H.」もセンターになり、かつ『2019 STEREO REMIX』よりも遙かに広々とした空間感覚が味わえる。「Interstellar Overdrive」も素晴らしい。オリジナルは「右=リズム隊/左=上物系」と妙なサンドイッチでしたし、終盤には曲テンポと合わないタイミングのパンで頭がかき回されていました。本作は、そうした楽器に挟まれる感覚や強引なサイケ風味から開放。楽曲と演奏そのものを立体的に味わえるのです。更に驚異的なのは、モノミックスしか存在しない「Arnold Layne」「See Emily Play」の2曲もステレオ・リミックスされてボーナスに収録されていることでしょう。ステレオの分離度も抜群によく、まるで新曲に触れるかのような驚きと感動を味わうことができるのです。これぞまさに波形分離技術の進化の賜物!このボーナストラックだけでもぜひ聴いていただきたい!確かに、制作者自らが語る通り「ビートルズより大胆」。よりディープに進化したリミックス技術が炸裂した最新リミックス・アルバムです。あれほど素晴らしく思えた『2019 STEREO REMIX』も、本作を体験した後ではモノに毛が生えたようにしか感じられない。「真なるステレオ版」と呼びたくなる堂々たる完成度の『夜明けの口笛吹き』。『夜明けの口笛吹き』のステレオ・リミックス盤。ビートルズでも話題となっている「Prof. Stoned」が製作した最新バージョンで、楽器毎に偏っていた公式ステレオとは違って自然なバランスが素晴らしい。同コンセプトの前回盤『2019 STEREO REMIX』とはソースのセレクトも手法も異なり、本作の方がステレオ幅も広く、立体感も上なら音質まで向上している。「真なるステレオ版」と呼びたくなる完成度を誇る『夜明けの口笛吹き』です。PINK FLOYD - THE PIPER AT THE GATES OF DAWN 2022 REMIXED(1CD) (57:30) 01. Astronomy Domine 02. Lucifer Sam 03. Matilda Mother 04. Flaming 05. Pow R. Toc H. 06. Take Up Thy Stethoscope and Walk 07. Interstellar Overdrive 08. The Gnome 09. Chapter 24 10. The Scarecrow 11. Bike Bonus: 12. Arnold Layne 13. Candy and a Currant Bun 14. See Emily Play 15. Apples and Oranges 16. Paintbox