ここ最近ローリング・ストーンズ古の名盤の復刻が続いていますが、今年だけでも「WELCOME TO NEW YORK」、さらに「PHILADELPHIA SPECIAL」と「ALL MEAT MUSIC」の再トライ。さらには定番音源の数々である1973年ウインター・ツアーの各種サウンドボードも決定版となる新たなリリースを敢行。このように72年アメリカ・ツアーに73年ウインター・ツアーと続いてきたのであれば、次なるリリースの標的が最強ストーンズによる73年ヨーロッパ・ツアーとなるのは当然のこと。中でも同ツアーにおける問答無用のタイトルが「NASTY MUSIC」。マニアでなくとも「ナスティ」と言えば通じてしまうカリスマLPであり、先のような並びのLP復刻が続いたとなれば、その大トリに「ナスティ」ほど相応しいものはありません。むしろ今か今かと待ち望んでいたマニアが多いのではないでしょうか。CDの時代を迎えてからもその威厳は衰えることなく、それどころか「ナスティ」の名の元、あるいはこの不思議な魅力を放つ唇スリックのデザインを継承したアイテムが生み出され続けたものです。元のLPをリリースしたSODD(Singer’s Original Double Disk)レーベルはTMOQ創設者のケンが新レーベルTAKRLに鞍替えした後に立ち上げた、文字通り二枚組アルバム専用のブランド。TAKRL同様に彼のパートナーが独自のデザインによるスリックを作っていたのですが、基本アーティスト写真を使っていたSODDのアイテムの中にあって「ナスティ」だけはまるで脈略のない女性の唇のアップ写真を使ったデザインまで魅力の一つに捉えられました。もっとも今から十年前にオフィシャルであの画期的な「BRUSSELS AFFAIR」がリリースされ、さらに73ヨーロッパのラジオ音源の集大成かつ決定版である「EUROPEAN TOUR 1973 - KBFH BROADCAST 1974 & 1988」がリリースされるに至って、古の「ナスティ」アイテムはすっかり鳴りを潜めてしまった感があります。ところが現在も「ナスティ」の人気は衰えず、青や薄紫、さらにうぐいす色といったオリジナルに無いスリックの色で作られた日本製レプリカLPですら高額で売りに出され、1990年代初頭に作られた黄色地に赤のスリックで作られたレプリカLPなどは今でも中古市場における不良在庫の代名詞。おかげでオリジナルSODD盤の名声は高まる一方でして、それを手に入れるのは至難の業。そこで今回は本家SODD盤LPから最新技術を駆使してCD化した決定版のリリースが実現。今回のリリースを監修してくれたのはGraf Zeppelin。よって彼はあくまでオリジナルLP(もちろんミント・コンディションを厳選)の音質や収録状態を忠実に、それでいてスクラッチ・ノイズなしのクリーンな状態で収録することに全力を注いでくれたのです。過去に数多くリリースされたSODD盤をベースとしたアイテムは大なり小なり音質にも手が加えられてしまっていたきらいがあったのですが、今回はそうした小細工なしにSODD盤のピュア・サウンドを再現。今となっては放送用原盤を元にした「KBFH BROADCAST 1974 & 1988」のクリアー・サウンドと比べて見劣りする感は否めませんが、いかにもリールを使って1974年当時にエアチェックしたであろうこと偲ばせる、リアタイならではのアナログチックなサウンドは実に魅力的。このウォーミーなサウンドを忠実に再現することこそ、今回の命題であったと言えるでしょう。むしろ手を加えたことと言えば、ヨーロッパ73パートと「WELCOME TO NEW YORK」を流用したLP後半のパートで生じたピッチの差異をアジャストし、通しで正確なピッチで聞けるようにしたのです。原盤をお持ちの方なら分かるかと思いますが、「WELCOME TO~」パートに来るとターンテーブルでピッチを変えなければいけなかったのは結構なストレスでした。さらに内容に関しても、特に21世紀にリリースされたアイテムは「ナスティ」を騙りつつも「Angie」のエンディングを始めとした曲間などに放送用原盤を補填するなどしてトータルで聞き通せるアイテムに編集していたアイテムが多かった。その処理自体は間違っていなかったのですが、LP本来の状態からかけ離れてしまったのも事実でして、おまけに「KBFH BROADCAST 1974 & 1988」のような新世代アイテムが存在する今となっては、むしろLPの状態を忠実に再現することに意義があるというもの。こうしてかつてないほど忠実にSODD盤LPのサウンドをCDに刻み込んでみせたのはもちろんのこと、例えば盤の変わり目でダブっていた「Doo Doo Doo Doo Doo」の序盤なども繋いだりすることなく、敢えてそのままの状態にて収録。なるほど、過去のアイテムはこれらをまとめて切れ目なく聞けるように編集していた訳です。それだけでなく、LPの面の終わりで消えゆく音まで寸分漏らさず収録。このストーンズ稀代の名盤を文字通り小細工なしで収録しつつ、CDで古の名盤が手軽に楽しめる文字通りの「お手軽ナスティ」が爆誕!リマスター・メモ ★ピッチ適宜修正 ★位相修正 ★大きなスクラッチノイズをピンポイントで除去 ★アナログ盤に忠実に一切の漏れなく(但しピッチやノイズ処理など必要最小限の処置は施し)収録。 補填等の添加物は一切なし。 本盤にてレアなアナログ盤の雰囲気をCDにて気軽に体感できるのがポイント。A面とB面の切り替わりの重複してる箇所(Mickの叫び)などはダブリを削除してノーカット処理するのも一つの手段ではありますが、今回は敢えてそのような処理はしてません。各LP盤の両端は、トレースノイズをそのまま収録(フェード処理はしてます)。よって過去盤でトレースノイズ部をオミットするあまり、アナログ盤から欠落してしまった微かな末端部MCなども聴ける。★過去盤をチェックする限り、ここまで忠実(かつ緻密)にアナログ復刻したCDアイテムはない。過去の盤のいずれもが、左右のchが逆だったり、ピッチズレ、過剰なノイズリダクションや派手目なEQ、面代わりの編集およびテープ素材の添加などが施されたものだった。サウンドは最新デジタルトランスファーで、当然ながら非常に濃密なマッタリサウンド(特に73年パート)。レンジの広い、耳に優しいウォーミーなサウンドです。是非ボリュームを上げて、このビンテージ・サウンドを堪能下さい!Taken from the original 2LP“NASTY MUSIC”(SODD 012) STEREO SBD Disc 1 (42:55) Side 1 1. Brown Sugar (17th Oct 1973 1st) 2. Happy (9th Sep 1973) 3. Gimme Shelter (9th Sep 1973) 4. Tumbling Dice (17th Oct 1973 1st) Side 2 5. Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker) (9th Sep 1973) 6. You Can't Always Get What You Want (17th Oct 1973 1st) 7. Dancing With Mr. D, (17th Oct 1973 1st) 8. Angie (17th Oct 1973 1st) Disc 2 (45:16) Side 3 1. Honky Tonk Women (17th Oct 1973 1st) 2. Midnight Rambler (17th Oct 1973 1st) 3. All Down The Line (26th July 1972) 4. Bye Bye Johnny (26th July 1972) Side 4 5. Love In Vain (26th July 1972) 6. Sweet Virginia (26th July 1972) 7. Rip This Joint (17th Oct 1973 1st) 8. Jumpin' Jack Flash (17th Oct 1973 1st) 9. Street Fighting Man (9th Sep 1973) 1973-10-17: Forest Nationale (1st show), Brussels, Belgium 1973-09-09: Empire Pool Wembley, London, UK 1972-07-26: Madison Square Garden, New York City, NY