チャーリー・ベナンテが離脱しつつも40周年ツアーに邁進している2023年のANTHRAX。その最新ライヴアルバムが到着です。そんな本作に記録されているのは「2023年1月20日バンクーバー公演」。その超極上IEMマトリクス・アルバムです。チャーリーと言えば、ANTHRAXもさることながら再結成PANTERAに参加した事でも話題。そんな中で飛び込んできた「チャーリー離脱」の報に驚かれている方もいらっしゃるでしょう。その辺の事情をご説明する為にも(少々長くなりますが)まずは彼らの近況から始めましょう。2022年・4月22日:ツーソン公演・5月27日:Bearded Theory出演・6月23日:Summerfest出演・7月26日ー9月8日:北米#1(24公演)・9月23日ー10月8日:英国(11公演)*12月2日ー18日:南米(7公演)・12月4日:Hell & Heaven Metal Fest出演 2023年・1月17日ー2月19日:北米#2(25公演)←★ココ★*3月25日+26日:日本(2公演)*5月20日:デイトナビーチ公演*5月26日ー7月2日:欧州#1(17公演)*7月13日ー11月10日:北米#3(34公演)・8月9日ー13日:欧州#2(2公演)2024年*8月2日ー30日:北米#4(5公演)チャーリーが離脱した現在進行形のANTHRAX 以上が現在までに公表されている2022ー2024年のスケジュール。「*」印がPANTERAの公演で、「・」がANTHRAXです。PANTERAは南米で復活を遂げましたが、現在は休止中。次なる日本の“LOUD PARK”を皮切りに本格的なツアーに突入する予定です。チャーリーはANTHRAXを抜けたわけではなく、PANTERAの合間を縫うようにしてツアーも実施。本作のバンクーバー公演は、そんな「北米#2」の3公演目にあたるコンサートでした。と、ここまでは事前の計画通りの話。ところが「北米#2」を2公演こなしたところでチャーリーの体調に異変が発生。詳細は発表されていませんが「ささやかな手術」を行うため、ツアーから離脱しているのです。現在のアナウンスですと「数日で復帰予定」とのことですが、それまでの間は元HATE ETERNALのデレク・ロッディーが代役。本作は、彼がスツールに座った第一夜でもあるのです。未知の超絶サウンドを実現した「IEMだけマトリクス」本作はそんな貴重ラインナップが聴けるだけでもスゴいのですが、それ以上なのがサウンド・クオリティ。タイトルをご覧になってIEMとオーディエンスのマトリクスをイメージされるかも知れませんが、そうではない。「IEM×4種」の掛け合わせマトリクスなのです! これがもう思いっきり極上。ぶっちゃけた話が「完全オフィシャル級」……いや、それ以上。演奏音もヴォーカルも極太&ド密着で轟き、豪快なステレオ感も絶大。IEMsにありがちな偏ったミックス・バランスになることもなく、流出サウンドボードと何ら変わりません。使用された個別のIEMが公開されているわけではないので推測になりますが、恐らくこの見事なバランスこそマトリクスの威力なのでしょう。通常、IEMはメンバーやスタッフが作業用に聴くもので、音楽的には奇妙なミックスな事が多い。例えば、テンポの把握や演奏に入るタイミング、エフェクトの調整具合など、個々の作業に必要な「音」が強調されているのです。そのため、普通はバランスの良いオーディエンス録音に埋め込み、演奏音の輪郭を際立たせるマトリクスを施すわけです。ところが、本作は「IEMのみのマトリクス」。それぞれに偏ったミックスのIEMで補完させ合い、全体バランスの整った「超絶IEM」を実現しているのでしょう。激レア曲と激レア・メンツのフルショウともあれ、そんな超ド級サウンドで画かれるのは、「40周年の特濃セット+貴重ラインナップ」のフルショウ。40周年と言えば、公式作品『ANTHRAX XL』も記憶に新しいところ。早速、比較しつつセットを整理してみましょう。黄金時代(10曲)・アマング・ザ・リヴィング:Among The Living/Caught In A Mosh/I Am The Law/Indians・パーシスタンス・オブ・タイム:Keep It In The Family/Got The Time・その他:Metal Thrashing Mad/Madhouse/Antisocial/Bring The Noise それ以降(3曲)・Only(★)/In The End/Goodnight(★)※注:「★」印は公式作『ANTHRAX XL』で聴けなかった曲。……と、このようになっています。基本的には『ANTHRAX XL』をシェイプアップさせていますが、そこに加えられたのが2つのレア曲。ジョン・ブッシュ時代の代表曲「Only」とCHEAP TRICKのカバー「Goodnight」です。「Only」は昨年からレギュラーセット入りしていますが、それ自体が11年ぶりの復活でもありました。そして「Goodnight」。今年初めて演奏されたのですが、実はそれも2公演だけでセット落ち。現在は演奏していない激レア曲なのです。そして、そんなセットを紡ぐパフォーマンスも激レア。注目のデレク・ロッディーですが、これがまた見事。何しろデレクはHATE ETERNALだけでなくMALEVOLENT CREATIONやNILEでの活動でも知られ、DREAM THEATERからマイク・ポートノイが脱退した際には後任候補でもあったドラマー。パワーもテクニックも超一流で、初日だというのにまったく遜色がない。綺麗に揃ったツーバス連打も、チャーリー本人じゃないかと思うほどに美しいのです。チャーリーは一体何の手術を受けたのか、いつ戻るのか。そしてPANTERAはどうなるのか。彼も還暦を迎えているだけに不安は尽きません。ただ、1つだけハッキリしているのはチャーリーがどうあれ、現在のANTHRAXは強力で、40周年ツアーは絶好調だという事です。本作は、その音の証拠品。苛烈なスラッシュ・パラダイスを脳みそに流し込んでくれるド級のマトリクス・アルバム。「2023年1月20日バンクーバー公演」の超極上マトリクス・アルバム。4種のIEM音源のマトリクスで、そのサウンドは完全オフィシャル級……以上。IEMは奇妙なミックスになりがちですが、本作は4種が互いに補完し合って完璧なバランスを実現。演奏音もヴォーカルも極太&ド密着で轟き、豪快なステレオ感も絶大。手術のために離脱したチャーリーに代わってデレク・ロッディーが叩くフルショウを脳みそに流し込んでくれるド級の新名盤です。PNE Forum, Vancouver, BC, Canada 20th January 2023 IEM(4 SOURCE MATRIX) (75:31) 1. Intro 2. Among The Living 3. Caught In A Mosh 4. Madhouse 5. Metal Thrashing Mad 6. Keep It In The Family 7. Antisocial 8. I Am The Law 9. In The End 10 Only 11 Got The Time 12 Bring The Noise 13 Indians 14 Goodnight Joey Belladonna - Vocals Scott Ian - Guitar, Backing Vocals Jon Donais - Guitar Frank Bello - Bass, Backing Vocals Derek Roddy - Drums