2009年2月の日本公演の後、ジェフ・ベックが向かった先はアメリカ。そのうち、本作が録音されたのは「2009年4月15日クリーヴランド公演」です。当時からほぼ全公演の録音が登場していましたが、このクリーヴランド公演はズバ抜けたクリア・サウンドで、“アーバイン2公演と並ぶ、北米日程のベスト3”とも言われた極上録音なのです。原音自体も驚異的でしたが、わずかに強すぎた低音を調整し、中・高音とのバランスを整えてリマスターものです。当時、「A DAY IN THE LIVE」としてリリースされ、“日本公演を超える最高音質”との絶賛と共に完売した人気録音です。総ての楽音が理想的に捉えられたバランス、クリアさ、ダイレクト感、どれを取っても非の打ち所がない。当時は、日本公演録音で市場が飽和状態だったにも関わらず、完売になったのも頷けるスーパー録音です。それだけのサウンドで録られた“2009年型ジェフ・ベック・グループ”は、基本的に日本公演に近い。日本公演では、本来のレギュラー・キーボーディスト、ジェイソン・リベロがスケジュールの都合で不参加でした(そのおかげで名手中の名手デイヴィッド・サンシャスが観られたのですが)が、アメリカでは復帰。それ以外のリズム隊ヴィニー・カリウタ&タル・ウィルケンフェルドは同じ布陣です。セットリストも「Eternity's Breath」が削られた程度で、ほとんど同じです。ところが、実際に聴いてみると日本公演とは全然違う。日によって変わるギターのニュアンスやメンバーのコンビネーションはもちろんですが、それ以上なのが観客。日本では1曲ごとに大歓声が巻き起こるも、演奏が始まるや静まり返る。いえ、“次曲が始まりそうだ”と察知した時点で最初の一音さえも聞き逃すまいと、完全な静寂に包まれる。ところが、アメリカの観客にそれはない。大いに盛り上がるのは同じですが、気に入れば演奏中だろうとお構いなしに声援が飛び交い、拍手も口笛も沸き上がる。このことはジェフ自身も気づいていること。インタビューでも「日本人の拍手のタイミングにびっくりする時があるんだ。パチパチって拍手をしてくれたかと思ったら、パッと止むんだ! あまりに突然に拍手が止むから『俺、何かいけないことやったかな??』って不安になるんだよ。『俺のズボン脱げてる??』ってね(笑)。教えてもらったんだけど、どうやら早く続きが聴きたいってことらしいね」と答えています。歴代でも最高レベルのアンサンブルを聴かせてくれた“2009年型ジェフ・ベック・グループ”。その実力は、本作でも遺憾なく発揮されています。しかし、バンドのポテンシャルは同じでも、観る側の雰囲気、気分でここまで演奏が変わる。だからこそ、ライヴは面白いのです。国の違い、受け止め方の違い、それに感化される演奏の違い。そして、違ってはいても、どちらも芳醇で素晴らしい音楽世界。このライヴ録音の醍醐味を超・極上の録音同士で感じていただきたい。耳の肥えたジェフのファンの方々に、今一度この楽しさを思い起こしていただきたい。そんな想いを込めた1本。Live at House Of Blues, Cleveland, OH. USA 15th April 2009 TRULY PERFECT SOUND Disc 1 1. Beck's Bolero 2. The Pump 3. You Never Know 4. Cause We've Ended As Lovers 5. Behind The Veil 6. Blast From The East 7. Stratus 8. Angel 9. Drum Solo 10. Led Boots Disc 2 1. Nadia 2. Space Boogie 3. Goodbye Pork Pie Hat/Brush With The Blues 4. Blue Wind 5. Bass Solo 6. A Day In The Life 7. Big Block 8. Where Were You 9. Scottish One 10. Peter Gunn Theme Jeff Beck - Guitar Vinnie Colaiuta - Drums Tal Wilkenfeld - Bass Jason Rebello - Keyboards