急速に再評価が高まりつつある『EMOTION & COMMOTION』時代。公式作品と双璧を成すサウンドボード・アルバムが登場です。そんな本作に記録されているのは「2010年7月13日ルッカ公演」。イタリアの夏フェス“Lucca Summer Festival”に出演した際のFMサウンドボード録音です。2010年と言えば7年ぶりのスタジオ作品『EMOTION & COMMOTION』の年として記憶されるわけですが、実はその後のライヴこそが真骨頂。実に60年代以来となる大規模ツアーが実施され、まさに完全復活の1年でもあったのです。その生演奏は公式作品『LIVE AND EXCLUSIVE FROM THE GRAMMY MUSEUM』『ROCK & ROLL PARTY: HONORING LES PAUL』にも残されたわけですが、もちろん本作は別公演。その辺の状況を把握するためにも、ここで当時の活動概要から紐解いてみましょう。・2月13日ー22日:TOGETHER & APART(6公演)・3月20日ー4月13日:アジア/豪州(12公演)《4月10日『EMOTION & COMMOTION』発売》・4月16日ー5月1日:北米#1(12公演)←※公式LIVE AND EXCLUSIVE・6月3日ー26日:北米#2(17公演)←※公式ROCK'N'ROLL PARTY・7月7日ー27日:欧州#1(12公演)←★ココ★《10月『LIVE AND EXCLUSIVE』発売》・10月5日ー11月12日:欧州#2(27公演)・11月24日ー12月6日:中南米(7公演)これが2010年のジェフ・ベック。実は彼の復活劇は2009年から始まっており、ワールド・ツアーは2011年まで続行。この3年間で二度の来日を含む200公演以上をこなしており、まさに第一期JEFF BECK GROUP以来のライヴ三昧だったのです。2つの公式作『LIVE AND EXCLUSIVE』『ROCK & ROLL PARTY』は全米ツアー中に製作されたわけですが、本作はその直後のヨーロッパ篇。「欧州#1」の5公演目にあたるコンサートでした。“Lucca Summer Festival”は7月いっぱいをかけて様々なバンド/アーティストが出演する巨大フェス。この日はZZ TOPとジェフのカップリング・デイで、人気も高かったのか現地のラジオ局から放送も実現。本作は、そのFMエアチェック・マスターからCD化されているのです。そんな本作のサウンドは、極太な芯とシャープなエッジが鮮烈なFMサウンドボード。上記のオフィシャル作品群と比べると鳴りがややラフだったりもしますが、それが悪いわけでもない。磨き込まれていないからこそ強烈に生々しく、ちょっとした曲間の音合わせですら超鮮明。弦や皮の振動まで伝わり、アンプから生じる僅かなジリジリ・ノイズまでもがシャープに画かれている。大歓声もミックスされているのでミックス卓の直結系とは趣が違いますが、演奏音自体は明らかに無加工で脳内にバンドがいるような猛烈な没入感をたっぷりと味わえるのです。そんなド級のダイレクト・サウンドで画かれるのは、公式作品とも異なるフルショウ。『ROCK'N'ROLL PARTY』は異質なイベント・ライヴでしたので、ここでは『LIVE AND EXCLUSIVE』と比較しつつセットを整理してみましょう。公式『LIVE AND EXCLUSIVE』と被る曲・エモーション・アンド・コモーション:Hammerhead/Nessun Dorm・その他:People Get Ready/A Day In The Life 公式『LIVE AND EXCLUSIVE』では聴けない曲・70年代/80年代:Led Boots/Big Block・2000年代以降:Rollin' and Tumblin'/Eternity's Breath/Stratus/Mna Na Heireann/I Want To Take You Higher ……と、このようになっています。イタリア語の現地DJも挟みつつ、フェス用ショート・セット11曲が披露されていきます。公式ライヴアルバム『LIVE AND EXCLUSIVE』も8曲仕様で当時の単独フルセットより濃縮された内容でしたが、そのセレクトは本作と大幅に違う。ダブっているのは4曲だけで、本作と『LIVE AND EXCLUSIVE』で相互補完するようなライヴでもあるのです。そして、そんなセットをさらに濃厚にしているのがパフォーマンスそのもの。放送当時から「4月の日本公演よりスゴい!」「まったく別物の強靭なグルーブ感!!」と話題になったのですが、今聴いても納得。ジェフのツアーと言えば年間20ー30公演程度が相場なのですが、このショウは離日後も30公演以上もこなしている。その練度は伊達ではなく、膨大な場数で培われた経験値、それだけのツアーに挑む気概がそのまま演奏の熱気に宿っているのです。多彩なキャリアでも実はライヴの大充実期だった『EMOTION & COMMOTION』時代。その苛烈な生演奏を脳みそに直接流し込んでくれるサウンドボード・アルバムです。公式『LIVE AND EXCLUSIVE』とまるで違うセットで相互補完するヨーロッパ篇の裏名盤。「2010年7月13日ルッカ公演」のFMサウンドボード録音。極太な芯とシャープなエッジが鮮烈で、公式作よりはラフな鳴りも磨き込まれていないからこそ強烈に生々しい。ちょっとした曲間の音合わせですら超鮮明で弦や皮の振動まで伝わり、脳内にバンドがいるような猛烈な没入感をたっぷりと味わえる。セットも『LIVE AND EXCLUSIVE』とはまるで異なり、公式作と相互補完する裏世界の名盤です。Live at Piazza Napoleone, Lucca, Italy 13th July 2010 STEREO SBD (56:15) 1. Radio Intro. 2. Eternity's Breath 3. Stratus 4. Led Boots 5. Hammerhead 6. Mna Na Eireann 7. Bass Solo 8. Rollin' And Tumblin' 9. People Get Ready 10. Big Block 11. I Want To Take You Higher 12. A Day In The Life 13. Nessun Dorma 14. Radio Outro. Jeff Beck - Guitar Jason Rebello - Keyboards Rhonda Smith - Bass, Vocals Narada Michael Walden - Drums FM BROADCAST RECORDING / STEREO SOUNDBOARD RECORDING